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第208話 夕飯を取りながらエルヴィス伯爵領の農産物の話。

客間にはエルヴィス爺さんとアリス、スミス、武雄、フレデリックがいた。

アリスの手紙は明日朝に送ることになった。

皆、夕飯のサンドイッチを食べながらマッタリしてる。

・・・アリスはミアを弄く・・・可愛がっている。

ミアが時たまに「ふぁぁぁ・・・やめてぇ~・・・」と叫びを上げているが。

エルヴィス爺さんと武雄、スミスは楽しそうにその光景を見ている。

「そういえば、タケオ様。

 地域振興の件は覚えていますか?」

フレデリックがお茶を皆に出しながら武雄に聞いてくる。

「卵と各村の料理祭りの事ですか?」

「はい。

 企画自体は文官若手にしてもらっています。

 経験値を伸ばすには絶好の機会ですので。

 で、各町と村のデータが上がって来たので、見て意見を言って欲しいのですが。」

「わかりました。」

武雄はフレデリックから資料を受け取る。

・・・結構多い・・・武雄は「あれ?」と思う。

とりあえず資料を見始める・・・


≪資料抜粋≫

エルヴィス領の領政は下記の組織になっている。

・エルヴィス邸がある街が人口5万人程度。

 その下に王都、ドワーフ王国、魔王国、ゴドウィン伯爵領への街道沿いに町があり、人口2000人ずつ。

 町の下に各5村、計20村、人口は300名ずつ。

 エルヴィス領の総人口は6万4000人前後。

・農作物について、エルヴィス邸がある街を中心に考えると

 北のドワーフ王国の方は、ライ麦、家畜と果実、野菜が充実。

 西の王都、東の魔王国の方は、小麦と野菜。

 南のゴドウィン伯爵の方は、小麦のみ。

 小麦、ライ麦の栽培は秋に蒔いて、夏に収穫。

・・

武雄は資料を見ながら考える。

「基本・・・小麦と野菜が主要農産物ですか?」

「はい。

 野菜は、いろんな種類を育ててはいますが、そこに記載の物が主要農産物ですね。

 収穫高は・・・まぁトントンですね。

 昨日のアランさんの話でもありましたが、

 小麦のパン自体も国の方策から低コストで多くを作れる様にしています。」

「領内の食料自給率は?」

「自給率?」

フレデリックが聞いてくる。

「領内の小麦・ライ麦の生産量でどのくらいの領民が生活できるかです。」

「・・・最大85%ですね。」

「・・・ちなみに・・・確かテンプル伯爵の所は豊かなのですよね?

 テンプル伯爵領の自給率は?」

「180%程度かと。」

「耕作面積の拡大奨励は?」

「してはいますが・・・なかなか上がりませんね。」

「税制は?」

「収穫高の半分を税として徴収しています。

 他の領地より低く設定していますので、農民からの不満は出ていませんね。

 税については、他家に言ってはいけないルールですので、ご内密に。」

「確かに農民の奪い合いは国内ではしたくないですものね。」

武雄は苦笑する。

「タケオ様の所では、どうやって農家から税を取っていましたか?」

「・・・確か基本的に主食の穀物は生産された物全部を国が買い上げていましたね。

「「え?」」

エルヴィス爺さんとフレデリックが驚く。

「それでは農民が生きていけんじゃろ?」

「あぁ、あくまで徴収ではなく買うのですよ。

 で、金銭収入から税を割り出して、金銭で税を納めて貰っていました。」

「・・・それはどうなのじゃ?」

「施政者側は、農家、商売人皆から一律税で徴収できるというメリットがあります。

 税の均等化ですね。公平負担という名目です。

 また、買い付けた穀物を大量に市場に流せるので、価格の交渉権を有して組合や他の地方との話し合いに臨めます。

 農家とは買い取り価格を毎年決めて全部買っていた様です。

 農家側は、現物納税だと、自分の所に残った穀物を自分で売らなくてはならないので、手間がかからないというメリットがあります。

 ですが、価格が変動制なので、収入額が毎年変わってしまうというデメリットがあります。」

「ふむ・・・そういう税の取り方もあるのじゃな。」

「そうですね。」

エルヴィス爺さんとフレデリックは頷く。

「これはまだまだ先の考え方ですし、一伯爵領でするべきではないと思います。

 国全土で一斉にやらないといけません。

 それに下手したら農民が蜂起しかねないやり方ですので、慎重にするべきでしょう。」

「そうじゃの。」


「さて、話を戻しますが、食料自給率残り15~20%の穴埋めは通行税の補てんで、テンプル領から買っているのですね?」

「はい。

 ですので、エルヴィス領は儲かっていません。」

フレデリックの説明を聞きながらエルヴィス爺さんはガックリとする。

「なるほど・・・ライ麦が北部では主要農産物とありましたが?」

「北では小麦の発育が悪いのです。

 なので、寒さに強いライ麦を生産しているのですが・・・」

「ライ麦パンは味と食感が独特ですからね。」

「ええ。なので、人気がなく流通価格が低いのです。

 飼料用として栽培されているのが現状です。

 一応、小麦が不作時の非常時用のパンとしても転用させるために品質は保っていますが・・・」

「タケオ、ライ麦の良い加工品はないかの?」

「・・・なるほど、お二人はライ麦の美味しい食べ方を知りたいと・・・

 で、上手くいけば、作付け面積を拡大させられると?」

「うむ。北部が一番、農地の拡大をしやすいのでな。

 他の村は生産者人口的に上限っぽいのだ。」

「そうですね。

 パンとしてなら、クルミやレーズンを入れて味を変えてみるのも手ですよね。

 ・・・あとは、フレンチトーストにしてみますか?」

「タケオでもわからんか。」

「私のいた所はライ麦パン自体があまりありませんでしたから・・・

 私も数回しか食べた事がありません。

 パンと言えば小麦でしたし。」

「そうか・・・」

エルヴィス爺さんがガッカリする。

「とりあえず、今度料理長に言ってライ麦パンのフレンチトーストを食べてみるかの・・・」

エルヴィス爺さんの言葉に武雄、フレデリックが苦笑するのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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