第203話 ベッドの話再び。レイラ達出立。
朝食を終え、客間で皆でティータイム。
フレデリックが食後のお茶を入れ、皆の前に置き、皆から少し後ろに下がる。
「さて、お昼にはレイラ達は出立じゃの。」
「はい。お爺さま、お世話になりました。」
「うむ、楽しかったぞ。」
「良い旅行でした。」
王家の3人は満足そうに頷く。
客間の外では、馬車に荷物が積み込み始められていた。
「あ、そうだ、アリス。」
「レイラお姉様、何でしょうか?」
「昨日、タケオさんに聞いたのだけど、ベッドの講習をしてもらったんですって?」
「ん?タケオ様、なぜお姉様が?」
アリスは武雄に聞いてくる。
「昨日の朝にベッドの寝心地を聞いたらいつもと違っていたが、スッキリ目覚められたと言っていましたので、アリスお嬢様に説明を求めては?と言いましたね。」
「ん?レイラ、どういう事だ?」
アズパール王が聞いてくる。
「ほら私達は、日常ふかふかのを使っているではないですか?
でも、アリスとタケオさんのベッドは固かったんです。
なのに目覚めはスッキリだったので、どうしてかな?と。」
「へぇ、タケオさんどうしてですか?」
ウィリアムが武雄に聞く。
「あら・・・アリスお嬢様に説明させようかと思っていたらこっちに振られてしまいました。」
「・・・タケオ様、私では説明は難しいですよ。」
アリスは苦笑しながら言う。
「そうですか?・・・じゃあ、今回もスミス坊ちゃんで説明しましょう。」
「あぁ・・・やっぱりですか・・・」
スミスは苦笑する。
「往々にしてこういう時は、一番の若者に回ってくるのですよ。」
武雄も苦笑を返す。
「では、そうですね・・・
今回、私とアリスお嬢様がベッドを見に行った際に3種類置かれていました。
まずは・・・」
武雄がベッドの説明を始める。
・・・
・・
・
「と、まぁ、こんな理由で固めにしたのです。
はい、スミス坊ちゃん、ご苦労様でした。」
「はぁ・・・苦しかったです。」
「なるほどなぁ。基本的にわが国では柔らかいのが高級という考えだったのだが、違っていたのだな。」
アズパール王が頷く。
「一概にそうとは言えませんね。」
「そうなのか?」
「腰に重度の病もしくは怪我を負っていた場合、逆に固いスプリングを使うと悪化する可能性もあります。
ですので、使う本人が寝てみて確認するのが一番です。
あとはどうしても柔らかい方が寝やすいと言われるのであれば、無理強いしてはいけません。
寝心地は個人の感覚です。
体に無理をさせないからと言って寝心地の悪い物を使っても意味がありません。」
「なるほど。これは僕達も王都に帰ってから試しても良いかもしれませんね。」
「そうね、ウィリアム。でも私は固めにしますから。」
「おや?レイラは決めてしまったね。
気に入ったかい?」
「ええ、スッキリ寝れるのですもの。良かったわ。」
「・・・アランさんもウィリアムさんも試してみます?」
「うむ。」
「ぜひ。」
アズパール王とウィリアムも仰向けに寝る。
武雄は薄めのタオル2個を使い、腰と首の所にタオルを差し込む。
「ほぉ、違うな。」
「え?こんなに違うのですか?」
二人とも驚く。
「ベッドを決める際は、この状態で寝てみてください。
最初とかは、起きたら若干の違和感があるかもしれませんが・・・
数回試して感触を確かめてから決めた方が良いですね。」
「うむ。」
「わかりました。」
と、執事が出立の用意が出来たと伝えに来る。
「あら?もうそんな時間?
まったく、タケオさんの知識は聞いていると時間が経つのが早いわ。」
「まったくだな。」
レイラの呟きに陛下とウィリアムが頷く。
皆が玄関に移動を開始する。
「次はアリスとタケオさんの結婚式に帰ってきますからね。」
「レイラお姉様。」
アリスは照れながら答える。
「そうですか・・・じゃあ私は美味しいスイーツを用意しておきますね。」
「あら?主賓が料理を??」
「折角来てくれるのですから・・・新作食べたいでしょう?」
「ぜひ!早く結婚式を挙げてね!」
「はは、それよりも私が王都に行く方が順番的には早いですよ。」
「あ・・・そうでした。
その時は、王都に着く前日に連絡を寄こしてくださいね。準備がありますから。」
「はいはい、わかっています。」
アリスが返事をする。
馬車に付くと第一近衛分隊長が立っていた。
アズパール王とウィリアム、レイラが乗り込む。
「昼食は馬車の中にありますから適当に取ってください。」
武雄がそう伝える。
「そうなの?ありがたいわ。
・・・あ!婚約のお祝いは空いている部屋に詰め込んでおいたから後で見てくださいね。」
「・・・帰り際に言う事かの?」
エルヴィス爺さんがため息交じりに言う。
「ふふ、レイラらしいな。」
「ええ、まったくですね。」
アズパール王とウィリアムは苦笑する。
「では、出立します。」
第一近衛分隊長がそう伝え馬車が走り始める。
「タケオさん、また王都で。」
レイラが手を振りながら言う。
馬車は颯爽と城門に向かっていった。
・・
・
「暴風雨の様な2日間だったの・・・」
エルヴィス爺さんが呟くと皆が思いっきり頷くのだった。
「さてと・・・私は夕方まで仮眠をします。
そのあと、皆さんに相談事があります。」
「うむ、今はゆっくり寝てくるのじゃ。」
「はい、では。」
武雄は先に屋敷内に戻り寝室へ向かう。
「では、私もタケオ様と昼寝をしてきます。」
「僕は・・・勉強ですかね。」
「昼寝をしても構わぬがの?」
「・・・昼寝します。疲れました。」
「うむ、わしも昼寝じゃ。」
「畏まりました。」
「フレデリックや使用人達も今日はのんびりして構わぬ。
慌ただしかったからの。夕飯も簡単で良い。」
「はい、畏まりました。」
皆が屋敷内に戻って行くのだった。
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アズパール王達一行はエルヴィス邸がある街の城門を抜け、街道を王都に向け走っていた。
「はぁ・・・少し寂しいですね。」
レイラがそんなことを口にする。
「そうだね。」
「楽しい後はこんなものだな。」
ウィリアムとアズパール王も同意する様だった。
「ところでだ。」
「「はい?」」
アズパール王の疑問に二人は「なに?」と回答する。
「なんで昼食用のバスケットがこんなに大きいのだ?」
3人の目の前には、とても3人分とは思えない量が入るバスケットが・・・
「・・・タケオさんでしょうね。」
ウィリアムが言うと二人も頷く。
「とりあえず、開けましょう。」
レイラがバスケットを開ける。
「「「おおおぉぉぉ。」」」
3人は感嘆をもらす。
中はタマゴサンドやチーズとベーコンのサンドイッチ等パン各種。
水筒には何やら良い匂いのスープが。
さらにプリンにバターサンドにキャラメルが入っている。
「めちゃくちゃ豪華だな。」
「美味しそうですね。」
「さすがタケオさん、私達を飽きさせないですね。」
3人は満面の笑みで王都までの旅を始めるのだった。
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