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第202話 13日目 起床。

書斎の窓からは、遠くの空が少し明るくなっているのがわかる。

部屋の主が一服も終え、お茶を口にしながらボーっとしていると、寝室側の扉がノックされる。

武雄が「どうぞ」と言うとレイラが入ってきた。

「・・・タケオさん、おはようございます・・・」

「レイラさん、おはようございます。」

武雄は何も聞かずに席を立ち、レイラに近づくと。

「失礼しますね。」

と、レイラのお腹に手を当て「ケア」をかける。

「朝からすみませんね。」

レイラは苦笑しながら言う。

「お茶でも飲みますか?」

「はい、いただきます。」

と、レイラはソファに座る。

「はぁ~、和みますね~。」

レイラはお茶を受けとり口を付けてマッタリする。

武雄は、にこやかにレイラを眺めながら自分もお茶を飲む。

と、引き出しから封筒を3つ出す。

「レイラさん、どうぞ。」

「はい?これはなんでしょう?」

封筒を受け取り、しげしげと見つめる。

「アランさん、ウィリアムさん、レイラさん、それぞれに宛てた手紙です。」

「ふーん・・・内容は?」

「他愛もない私の知識です。

 旅の道中、暇でしょうから見てみては?程度です。」

「ありがたいですね。

 4日間走り通しで暇なのですよね。

 持ってきた本は全部こっちに来る際に読んじゃいました。」

「そうですか。

 帰りはどうしますか?」

「帰りは今回の件を童話にするので、その執筆に費やす予定です。」

「大作ですか?」

「割と。」

「あまり過度の脚色はダメですよ?」

「わかっています・・・が、普通に書いても十分、突拍子もないと思いますよ?」

「そうですか?・・・まぁ、良いです。

 出来事を書いて『それは嘘だ、ありえない』と言ってくれるのであれば、私を過小評価してくれるのでしょう?

 それはそれで侮ってくれるので対処が楽ですよね。

 本が出るのを楽しみに待っています。」

「ふふ。普通、この手の本を出す時は少し誇張してくださいと言うと思うのですけどね。

 タケオさんらしいわ。」

「誇張したがる気持ちもわからなくはないですが。

 故人であれば、何を書いても聞かれませんが、私もアリスお嬢様も生きていますからね~・・・

 『え?本の方が良かった!』と印象を与えると大変です・・・誇張は少な目にお願いします。」

武雄とレイラは笑い合うのだった。


「と、そろそろ、アリスお嬢様を起こしてきますね。」

「・・・今日も刺激的に?」

「いえ、優しく起こそうかと。」

「じゃあ、私も行こうかしら。」

「はい、二人で起こしましょうか。」

二人は寝室に向かう。

武雄とレイラは寝室のベッドに寝ているアリスを発見する。

今日は万歳しながら仰向けなのですね。

レイラはベッドに近づかずに壁際に立って様子を見る様だ。

武雄はベッドに近寄りアリスの手を下に下げさせ、アリスの横に腰を掛けると肩をポンポン叩いて起こす。

「アリスお嬢様、そろそろ起きましょうね。」

アリスが身じろぎを始め、目を少し開ける。

「・・・おはよ・・うございま・・・す。」

「はい。アリスお嬢様、おはようございます。」

武雄は、アリスのおでこに手を当てる。

「ん・・んにゅ・・・」

アリスが変な声を出すが武雄は気にしない。

「熱はないようですね。」

「はい。平気・・ですよ~・・・」

と、アリスは武雄の腰に抱き着いてくる。

「おや?」

「えへへ♪タケオ様の匂いです。」

アリスは武雄の腹に顔を埋めてクンクンしてくる。

「へぇ。アリスは、そうやって甘えるのですね。」

壁際に立っていたレイラがニヤニヤしながら感想を言う。

言われたアリスが・・・ブリキのおもちゃの様に擬音的には「ギギッギギギッ」と壁の方を向く。

「アリス、おはよう。」

レイラが手を振りながら挨拶する。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

絶叫がこだまする。


------------------------

武雄の書斎には、武雄とレイラ、アリスがお茶を飲んでいる。

「「「・・・」」」

武雄は、ノートに何か書いている。

レイラとアリスはその光景をボーっと見ていた。

「・・・ねぇ、アリス。」

「はい?」

「機嫌直った?」

「別に・・・怒っていませんが?」

「・・・あんなに取り乱したのに・・・」

「恥ずかしかっただけです・・・ってか、なんでレイラお姉様も起こしに来たのですか?」

アリスはぷくーっと頬を膨らませて抗議してくる。

「いや・・・タケオさんが今日は優しく起こすって言うから。

 ほら!昨日は刺激的に起こすって言っていたから遠慮したのよ。

 今日は平穏無事に起こすのだろうと思って見ていたら・・・思いがけずアリスの甘え方を見れてしまったわ。」

レイラは苦笑する。

「う・・・」

アリスは真っ赤になる。

「ちなみに王都では誰が起こすのですか?」

武雄がレイラに聞く。

「メイドさんね~。」

「・・・面白くないですね。」

武雄は、ため息をつく。

「ほら、私は側室だから、いつもウィリアムと一緒とは限らないのよ。」

「へぇ。ウィリアムさんは、数人のお嫁さんが?」

武雄は「貴族だから当たり前か。」と素直に思った。

「あれ?言っていなかったかしら?

 ウィリアムの妻は正室と私の2人が居るのよ。」

「初耳ですね。」

「貴族は大体、正室、側室を持つわよ。

 お爺さまもお父さまも正室のみでしたが。」

「へぇ。お世継ぎ問題?」

「そうね、そしてコネね。」

「わかりやすいですね。」

「往々にしてそんなものよ。」

「タケオさんも貴族になれば、もう一人くらいは貰えるのでは?」

レイラの言葉にアリスがビクッとする。

「そうですね。まぁ今の所、アリスお嬢様で楽し・・・満足していますからいりませんね。」

「そう?あ、この屋敷に空き部屋がないか・・・」

レイラがそんな独り言を言う。

「ん?もう一人奥さんをもらっても部屋はいりませんよ?」

「なんで?」

「3人で寝れば良いでしょう?」

「アリスは平気?」

「え・・・あの・・・」

アリスは困った顔をする。

「と、言うより、アリスお嬢様が認めない者を側室にはしませんよ。

 それよりもまずは、アリスお嬢様を満足させないといけませんからね。」

「あら?タケオさん、アリスを愛しちゃっているわね。」

「ええ、アリスお嬢様にメロメロですよ。

 こうやって側室の話をしていても何も言わずに堪えるなんて・・・可愛いじゃないですか。」

武雄の言葉にレイラがニヤニヤしながらアリスを見る。

「うぅ・・・二人してからかっています?」

アリスは涙目で聞いてくる。

「からかってはいないわね。事実としてタケオさんに教えているけど。

 まぁアリスの反応も見たかったのはあるわね。」

「うぅ・・・朝から弄られっぱなしです。」

「まぁ私的にはアリスお嬢様が『この子なら』と言うなら考えますが・・・」

「ふふ、アリス、同性を見る目を養わないとね。」

「・・・考えておきます。」

アリスは難しい顔をしながら答える。


と、書斎の扉がノックされ、執事が朝食の用意が出来た事を伝える。

「はい。では、食堂に移動しましょうか。」

3人は食堂に向かうのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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