第201話 12日目 就寝。
今日も「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が客間を出ていった。
武雄とアリスとレイラは一端、寝室に戻って来ていたが、
武雄はお風呂の用意をしてさっさとキャラメルを作る為に厨房に向かった。
レイラとアリスは寝室でお風呂上がりのお茶を楽しんでいる。
武雄は厨房から戻ってきていない。
「はぁ、休暇も今日で最後ね。」
「あっと言う間でしたね。
それにいろいろありました。」
「服に戦闘観戦に・・・美味しかったわ。」
「レイラお姉様・・・」
「ホント、あの料理だけでも貴族にしたいわ。
もしウィリアムよりも先に出会っていたら・・・」
「・・・お姉様・・・
いくらお姉様でもあげませんよ?」
アリスはジト目で抗議する。
「今さら、そんなこと言わないわよ。
タケオさんが、アリスを愛しているのはわかっていますよ。
アリスが羨ましいわ、あんな方に愛されて。」
「いや、レイラお姉様こそ殿下に優しくされているじゃないですか。」
「ええ、ウィリアムは優しいわよ。昼も夜も。」
「・・・は?」
「でもねぇ・・・ちょっと物足らないというか・・・
・・・うん!あの保健のノートが役にたちそうだわ!
でも・・・どうやってウィリアムに教えるか・・・」
レイラは悩む。アリスは呆れるしかなかった。
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武雄は寝室のドアをノックすると、中からアリスが「どうぞ」と返事が返ってきたので、寝室に入った。
「レイラさん、アリスお嬢様、戻りました。」
「「おかえりなさい。」」
レイラとアリスは朗らかに返事をしてくる。
「じゃあ、髪を乾かしましょうか。」
「「は~い。」」
武雄は二人の髪を昨日の様に乾かしていく。
・・
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「はい、終わりですね。」
「「ご苦労様です。」」
レイラもアリスも武雄を労う。
「私はお風呂に行って寝ますね。
それでは、二人ともおやすみなさい。」
「「はい、おやすみなさい~。」」
武雄は退出していった。
・・
・
武雄を見送ったレイラが気づく。
「ん?机にノートが・・・」
レイラがメガネをかけて何気に広げ中を見ると。
「・・・流石!タケオさん、わかってるわ。」
レイラは満面の笑みで頷く。
「どうしました?お姉様。」
アリスは二人のお茶を変えて持ってくる。
「はい。」
レイラはアリスにノートを渡す。
「・・・タケオ様・・・」
中を見たアリスがガックリとする。
昨日より1枚追記されていた。
題名は「女性からの求め方。男性はこうやって落とせ。(独断と偏見あり)」
「はぁ・・・これはどう解釈すれば良いのでしょうか・・・」
アリスは本気で悩む。武雄の意図がわからない。
「素直にタケオさんからのリクエストと取れば?」
「言われた通りするのは、恥ずかしいのですけど!」
「ふふ、まぁアリスは迷っていなさい。
私はこれを熟読しなくては!」
その言葉を言い残し、ノートを熱心に読み始める。
アリスは、そんな姉を見ながらため息と共にベッドに向かうのだった。
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アリスとレイラの部屋を後にした武雄は例のワインを持ってアズパール王とウィリアムの部屋に行き、
アズパール王が訝しむ中で武雄からウィリアムに『例の物です』と言って4本置いて行った。
置いてすぐ出てきてしまったので、どうやってウィリアムがアズパール王からの問い詰めを避けれたのか武雄は知らない。
レイラ曰く「就寝前に面倒を起こされたよ。」とウィリアムが苦笑しながら言っていたと言う。
そんな武雄は、お風呂に入っていた。
「はぁ・・・疲れた・・・」
戦闘をして料理をして・・・風呂に浸かって今緊張が解けたところだ。
気を抜いたら寝てしまいそうだ・・・
「・・・体に異常は・・・なさそうか・・・はぁ・・・
ため息が出るのは精神的に疲れている証拠・・・か。」
武雄は「よし!」と立ち上がると浴槽を出てパパッと拭いて出ていく。
(ちゃんとお湯は抜きました。)
髪を簡単に乾かし、厨房に行き、青果屋から届いたリンゴを物色する。
「えーっと・・・部屋で剥きましょうかね?
果物ナイフは、どこでしょうか・・・」
厨房内の棚をいろいろ探し始める。
と、ナイフを見つけた時に厨房に人が顔を出す。
「タケオ様?」
スミスが厨房にやってきた。
「おや?スミス坊ちゃんも小腹を満たしに?」
武雄は朗らかに言う。
「あはは、僕は水を飲みに。
・・・リンゴですか?」
「はい。お風呂上りにリンゴを食べようかと・・・いっぱい買ってしまって。」
「あぁ、ヒルダお嬢さんとクラレスお嬢さんの時のですね?」
「ええ。」
武雄は答えながら、リンゴを8等分にして、種とかヘタとかを切り落とし、皮をむく。
その内1つをウサギカットにしてスミスに渡す。
「夜食をしたことの口止め料です。」
「ふふ、では、貰います。」
スミスは、その場で食べる。
武雄は残りの皮を剥き、皿に盛る。
ナイフを軽く洗い、元の位置に戻し、武雄とスミスは厨房を後にする。
・・
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スミスと別れ、武雄は自分の書斎の扉を解錠し中に入る。
「・・・良い子にしていましたか?」
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