第199話 12日目 夕食後の報告会。(今後の予定。)
「さて・・・タケオを貴族にするかどうかは王都次第という事じゃの。」
エルヴィス爺さんは、ため息をつきながら言う。
アズパール王達3人はニコニコしているが、エルヴィス家の面々はため息を付いていた。
「まぁ、さっきのレイラさんの条件でなかったら辞退しますから。」
武雄は苦笑しながら言う。
「あら?断るの?」
「ええ。王都勤めは大変そうですし、私は田舎暮らしが好きなので。」
「そう。じゃあ少し本気になって頑張って通してみようかしら。」
「研究所も貴族の件もどうせ王都の結果待ちですからお任せしますよ・・・」
武雄は「どんだけ自分を貴族にしたいのだろう?」と思うのだった。
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「私は近々、カトランダ帝国に行ってみようかと思います。」
武雄は唐突にそんなことを言う。
「例の開発者だな?」
「はい。どんな人物なのか・・・どの程度、危険なのか・・・見ておきたいですね。
エルヴィスさん、国境を越えるのに必要なのは何でしょうか?」
「・・・わしの発行する通行許可書が必要じゃな。
用意しようかの。」
「はい、ありがとうございます。」
武雄は軽く礼をする。
「タケオさん、実際には、どうやって見つけるのです?
カトランダ帝国はアズパール王国より小さいとは言え、人探しは難しいのでは?」
ウィリアムが聞いてくる。
「少し待っていてください、持ってきます。」
と、武雄が席を立ち、退出していった。
「陛下・・・」
アリスはアズパール王にジト目で抗議している。
「・・・なぜ睨む?」
「引き抜きはしないはずだったのでは?」
「王都に引き抜く気はないが、国に留まらせたかったのだ。
方法としては、貴族にするのが一番簡単だろう?
タケオの国外流出を許せば国を揺るがす惨事に発展するかも知れないからな。」
「それは・・・そうですが・・・」
「我的には、アリス、お主も貴族にしたいのだがな。」
「は?私は女子ですけど?」
「イヤ、女子でも貴族に成れるのがあるだろ?」
「・・・爵位は男子のみ・・・ほか?」
アリスは「わからないです」と言う顔をする。
「ふふ、実はですね。
男爵以上は男子のみとなっていますが、騎士については、性別の規定がないんですよ。
ただ、女性は体力面でも厳しいと言われていて、実際に上級職の騎士に成れる方は、ほぼ居ないんですよね。
さらに家庭を持つと離職する方が多くて・・・」
ウィリアムが苦笑しながら説明をする。
「うむ。タケオを男爵にして、アリスを騎士にするか。」
「はぁ・・・良いのでしょうか?別に私も国外に行く気はありませんが・・・」
「いや、ちゃんとした方が良いと思ったのだ。
本当は2年前に騎士にしたつもりだったのだが?」
「受勲はいたしましたが、騎士に付いては何も・・・」
「ふむ、今回が良い機会になるな。忘れていたことを帳消しにできそうだ。」
「いや、お義父さま、口にしてしまっては隠せませんよ?」
アズパール王の開き直りにレイラが苦笑で答える。
「アリスについても王都次第の様ですね。」
エルヴィス爺さんがため息交じりに言う。
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広間の扉を武雄はノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け入室する。
「お待たせしました。」
武雄は小銃と木の小箱を机に置く。
「これは?」
ウィリアムが聞いてくる。
「小銃と弾丸が入っていた小箱です。
どちらも銘が打ってあります。」
銘が打たれている場所を指す。
「・・・ステノ・・・?」
「はい、そう書いてあると私も思います。
氏名なのか工房の名前なのかはわかりませんが・・・
これを追ってみようかと。
あとは、テイラー店長が注文している問屋さんが王都にあるそうなので そちらにも聞きに行きたいですね。」
「・・・それだけで見つかりますか?」
ウィリアムが難しい顔をしながら聞いてくる。
「難しいでしょうね。あとは向こうの大きい街で工房組合を探して聞いてみる・・・とか?」
「どれも時間がかかりそうだな・・・」
アズパール王が聞いてくる。
「ええ。」
「では、我も参加するかな。」
「ん?どうやってですか?」
「王都守備隊に情報を扱っている部隊がいるから、そこを動かそうと思うが?」
「・・・国の機関が動いてくれるなら探しやすいですが・・・
大丈夫ですか?」
「タケオは何を心配しているのだ?」
「1.発見しても私に嘘を教えて、密かに国に招待する。
2.アズパール王国に不利益となると思ったら私に内緒で処分する。
3.私を処分する。」
「タケオさん、3つ目は流石にないのでは?」
ウィリアムが聞いてくる。
「・・・本当に?
アランさんやウィリアムさんは、私の考えをわかってくれていますから平気でしょうが・・・
王都の武官、文官が何をしかけるか・・・わかったものではないでしょう。
異質な考えを持っている者を排斥しようと動いても不思議はありません。
まぁ3つ目は用心して出来れば返り討ちする様に動こうと思いますけど。」
武雄はため息をつきながら言う。
「・・・王都守備隊を脅威とは思わないのか?」
「昨日の近衛の隊長さんや武力自慢の近衛兵が組織で来られたら勝てないでしょうが・・・
情報を扱っている者でしょう?身構えていれば、とりあえず逃げれるでしょうから・・・
仕切り直して、個人対個人に持ち込めれば私は負ける気はないですよ?」
武雄は感情に起伏もさせず、淡々と言う。
「アランさん、王都守備隊の人を動かして情報を入手してくれるとありがたいですが。
万が一、私に敵対するような真似をしたら容赦するつもりはありませんからね。」
「そうか・・・まぁ、そこは平気だろう。
タケオに判断を委ねる様に言っておこう。」
「・・・本当に動かせるのですか?」
武雄は目を細めてながら言う。
「ふふ、タケオ、我は凄いのだぞ?」
「近衛を動かせると豪語するのですから・・・相当上の幹部さんなんでしょうけど。
まぁ、良いです。
カトランダ帝国に行く時は王都にも寄りますからその時に聞きに行きます。」
「ふふ、楽しみに待っておれよ。」
アズパール王は楽しそうに言う。
ウィリアムとレイラは「そこは待っているからな・・・でしょ?」と心のなかでツッコミを入れるのだった。
「レイラお姉様達は明日は、いつ頃出立を?」
アリスが聞いてくる。
「そうねぇ、お昼ぐらいかしら?」
「そうだね。」
「うむ。」
「この二日間、慌ただしかったですね。」
スミスが苦笑しながら言う。
「いや、美味しい物は食べれるし、新しい発見はあるし、リフレッシュになったな。」
アズパール王は満足そうに頷く。
「それはよろしゅうございました。」
エルヴィス爺さんも頷くのだった。
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