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第196話 12日目 夕食後の報告会。(スミスの決意。)

武雄は裏庭で一服をしていた。

「はぁ、自分の考えを無遠慮に押し付けただけになっていなかっただろうか・・・

 言葉だけが先行し・・・お前だって出来ていないと言われていないだろうか・・・

 とりあえずヒートアップする前に頭を冷やさないといけないと思い退出したのだが・・・

 余計な事だったのだろうか・・・言い方がきつくなりすぎてしまったのではないだろうか・・・

 果たして、私みたいな奴が言っても良かったのだろうか・・・」

武雄はそんな考えがグルグル、グルグル頭の中を回っては、ため息をついていた。


と、武雄の背後から足音が聞こえてきた。

「誰だろう?」と思い振り返ると、スミスがいた。

「あの・・・」

微妙な沈黙・・・武雄は先に一歩踏み出すことにした。

「・・・スミス坊ちゃん、先ほどは、きつすぎたかもしれませんね。

 無礼な事を言って申し訳なかったです。」

「・・・いいえ、謝るのは僕の方です。

 あの言葉が無ければ、勘違いを続けていたと思います。

 お爺さまにも言われました。僕がエルヴィス家の名を誇らしく言えるのは、先人が民の幸せを考え、実行し、結果を残したからだと。

 エルヴィス家の名は民達に兵士達に、文官達に支えられているんだと・・・

 責任を全うするからこそ、皆が付いてきてくれる。

 そんな当たり前のことを忘れてしまっていました。

 ・・・なので、タケオ様、すみませんでした。」

「スミス坊ちゃん・・・」

「僕は次期当主として頑張っていたつもりでした。

 でも、結局は・・・つもりでしかなかったと・・・タケオ様の言葉を聞いて思い知りました。

 僕は・・・僕はエルヴィス家の次期当主として相応しい心を持ちたい。

 民を守り、民を幸せにする・・・ひいてはエルヴィス家に関わる全ての人達を幸せにしたいです。

 もちろん敵対する人達とは戦わなければなりませんが・・・それでも敵だった人達さえも幸せに出来る、そんな当主に僕は成りたいんです!

 なので、タケオ様、力を貸してくれませんか?」

「私がですか?」

武雄は少し考える。

「私もアリスお嬢様もスミス坊ちゃんが頑張っているのを応援しています。

 もし、スミス坊ちゃんが間違っていたなら私達は私達なりの言葉で叱ります。

 もちろん私達が間違っていたなら叱って欲しいですね。

 私達は家族なのでしょう?」

「・・・はい!これからよろしくお願いします!

 僕は先に戻ります。」

スミスは礼をして客間に戻って行く。

その後ろ姿を武雄は嬉しそうに見るのだった。


と、そんな良いシーンなのだが・・・

武雄は顔を動かさない様に目線だけを茂みに動かす。

茂みの植え込み部分から腕が見えてますね。それも3人分・・・

武雄は心の中でため息をつく。前にもあったなぁ・・・

全くお人よしが多いですね。

「さて・・・そこの3名。」

ビクッ・・・茂みから緊張感が漂ってくる。

「に・・にゃぉ・・・」

・・・ベタな反応に武雄は苦笑する。

「私が笑っている内に出てきた方が良いのでは?」

・・・

・・

3人がスゴスゴ茂みから出てくる。

「なんだ、わかっておったのか。」

「やっぱり違う所が良かったのでは?」

「でも、ここ以外では聞き逃す可能性もありましたし。」

3名は全然反省していない・・・てか、王都の貴族が覗き見ですか?

武雄はタオルをアクアで濡らし陛下達に渡す。

アズパール王、ウィリアム、レイラは手を拭く。

「まったく・・・で、どうでしょうか?」

「ん?まぁ良いのではないか?

 スミスの決心も付いた様だし、将来が楽しみだな。

 スミスの言う『当主として相応しい心』も良いし、タケオの『私達は家族なのでしょう?』も我の名言集に記録済みだ。」

「なんです?その名言集とは?」

「こっそりと付けているのだ。で、我もいつか使おうと思ってな。」

「使ったことはあるのですか?」

「・・・ない。」

アズパール王は苦笑する。武雄は呆れる。

「ただの趣味ですね。」


「タケオ、お主は貴族になりたいと思うか?」

「・・・唐突ですね。どうしましたか?」

アズパール王の問いかけに武雄は目を細めながら聞き返す。

「別に普通の者はどう思うか聞きたいだけだ。」

「私は普通ではないと思いますが?」

「・・・あ・・・」

アズパール王は「しまった」と言う顔をする。

「はぁ、私の意見ですか?

 個人として、貴族という物のメリットとデメリット双方がわかりません。

 貴族の爵位は持っていても片方は領地があり、もう片方は王都にいて・・・

 貴族はどこから報酬を貰い、領地からの収入はどうなっているのか・・・

 全くわかりませんね。

 なので、それがわかるまで軽々しく貴族になりたいなどとは言えません。」

「うむ、そうか・・・

 まぁ、客間でその辺は話してやろう。

 少しここは寒いからな移動したい。」

「わかりました。」

武雄と王家の3人は客間に戻るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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