第191話 ラザニア完成。と夕飯だ。
フレデリックは、厨房にもう少しの所に来ていた。
「「おおおおお。」」
どよめきが厨房から聞こえてきた。
「間に合った様ですね。」
フレデリックは厨房に入って行く。
「あ、フレデリックさん。お疲れ様です。」
武雄がフレデリックを見つけ声をかける。
「はい、皆さん、お疲れ様です。」
「試作が丁度、出来ましたよ。」
と、厨房の調理台の上にグツグツとしているラザニアが。
「ほぉ、この匂いはチーズを?」
「はい。チーズを乗せて熱さを逃がさない様にしています。
今食べると火傷しますよ。」
「・・・少し待ちましょう。」
「では、待っている間に取分けてしまいましょう。
スイーツ担当、すみませんが、各担当とフレデリックさんと私、料理長とヒルダに取り分けてください。」
「はい。」
と、器用に取分けていく。
「では、試食です。
・・・ヒルダ、食べて良いですよ?」
「え?私からですか?」
「ええ、この料理はヒルダの発想への回答です。
遠慮なさらずにどうぞ。」
武雄は苦笑する。
ヒルダは皆に注目されながら一口食べる。
・・・ヒルダが目をこれでもかと見開き驚いている。
「美味しいです!!」
「ふふ、私からの回答としては十分な様ですね。
では、皆さんも食べましょう。」
各担当と料理長とフレデリックが食べる。
各担当は「おおぉぉ」と驚き。
料理長は「うむうむ、流石だ」と感心し、フレデリックは「ほぉ」と頷きながら食べる。
その様子を見て武雄も食べる。
「美味しくできましたね。
では、他の皆さん用に作りますか。」
「「はい!」」
各担当が動き始める。
武雄は手を出さない。
メイン担当がスイーツ担当や手の空いた者を使い、どんどん作っていく。
ヒルダも参加して次々にラザニアを作っていく。
武雄はその様子を楽しそうに見ている。
「ヒルダは凄いですね。
手際が良いです。」
「自慢の娘だ。」
隣にいた料理長が自慢げに言ってくる。
「それにしてもパン粉か・・・あれが乗るだけでカリカリ感がでるんだな。
勉強になる。
焼きたてのパンでも出来るのか?」
「どうでしょう?
私が知っているのは乾燥させたパンを削って作る事ぐらいですね。
焼きたてのパンならバターを付けて食べた方が良いのでは?
それだけでも美味しいですし。」
「そうだな・・・うん、焼きたてならその場で食べるのが一番だな。」
厨房は慌ただしくなっていく。
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武雄が食堂に着くと皆がワクワクしながら待っていた。
「タケオ、夕飯の準備、ご苦労だったの。」
「タケオ、ご苦労。」
エルヴィス爺さんとアズパール王から労いをかけられる。
他の面々は、にこやかに頷いていた。
「はい、戻りました。
料理人達が私の提案や調理法を聞いてさっさと動くので、私は見守っていただけでしたね。」
武雄は苦笑しながら席に着く。
「で、タケオさん、出来映えは?」
レイラが興味津々で聞いてくる。
「私も料理長もフレデリックさんも美味しいと評価しましたね。
屋敷の皆さんにも好評でした。
まぁ、私はヒルダお嬢さんが『美味しい』と言ってくれただけで満足ですね。」
「どんな感じで美味しいと言ったのかしら?」
「・・・昨日の夕飯時のレイラさんみたいにですね。」
「最大級ですね!」
・・
・
しばらくして、料理が運ばれ配膳される。
「豪勢だな。」
アズパール王が独り言を呟く。
「ですねぇ。
王都でも毎日これぐらいの料理が食べたいわ。」
「はは、そうだね。お腹いっぱいに食べたいよね。」
ウィリアムはレイラの呟きに笑いながら言う。
「ん?レイラお姉様。
王都では質素なのですか??
毎日、豪華な食事が出て良そうですけど?」
アリスはレイラに聞いてみる。
「そうねぇ、メイン料理は凝っているのだけど・・・
メイン料理、サラダ、パン、スープね。
豪華な食事なんて夜会やお客様が来た時の歓迎時にしか食べないわね。」
「民たちは、我ら貴族は毎日豪勢な食事をしていると思っているのだろうな・・・
まぁメイン料理は豪勢なのだが・・・そこまで金はかけていないな。」
アズパール王が頷きながら言う。
武雄は二人の言葉を聞き思案している。
「・・・タケオさん、何を考えているのですか?」
ウィリアムがそんな武雄を見て声をかける。
「いえ・・・パンの種類ってどんなのがあるのかなぁっと。」
「え?普通に焼いただけの丸いか四角いパンですが?」
「そうですか。」
武雄はその回答を聞き生返事をしてしまう。
来てからのパンを思い出す。「あれが普通なのか・・・」ちょっと驚く。
スコーンの様な物と食感がボソッとした食パンがメインの様だ。
「どうしたのだ?」
アズパール王が聞いてくる。
「いえ、ただ単純にパンの種類が少ないと思っただけです。」
「?多くする理由はなんだ?主食にそこまで種類を求めていないのだが。
国の方策としては低コストで多くを作れる様にしているが。」
「なるほど。」
武雄はアズパール王の疑問に納得する。
「ん?どうしたのだ?」
「いえ、私のいた所は主食が米と言いましたよね?」
「はい。」
レイラが答える。
「なので、普及の為にいろんなパンを作ったのだなぁっと思ったのです。
ここで基本が2種類なのは当然なのかな?と。」
「ちなみにどんなのがあったのじゃ?」
「表面をカリカリにして中がふっくらしたパン、蒸して作るパン、生地を膨らませないで直接焼いたり、生地を薄くのばしてトマトソースやチーズを乗せて焼いたり、焼いたパンにクリームを入れたり、パンを揚げたり・・・
数十はありましたよね。」
「凄い種類があったのじゃな。」
「そんなに知りませんね。
タケオさんは作れますか?」
レイラは顔を輝かせて聞いてくる。
「パンは作ったことがないですね。
あとで料理長にいろいろ案を渡してみましょうかね。」
「・・・アリス達が羨ましいですね。
美味しい物が目白押しです。」
レイラがジト目で抗議する。
「えへへ。」
アリスもレイラに「良いでしょう?」と笑みを返す。
「むぅ・・・王都の料理人に考えさせます。」
レイラが拗ねながら言う。
その様子をウィリアムが優しい目で見ていた。
と、配膳が終わる。
「では、皆に行きわたりましたね。
鶏肉はバターでソテーにしています。
ソースは2種類、トマトソースとレモンです。お好みに合わせて食べてください。
今、取分けて貰った物がラザニアです。
これはミートソースとホワイトソースとパスタを重ねてチーズを乗せて焼き上げました。
シイタケと卵のスープとサラダです。」
「うむ、では、いただくかの。」
皆が一斉に食べ始める。
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