第189話 夕飯までの客間。
客間には、エルヴィス爺さんにアズパール王とウィリアム、レイラとアリスとスミスがいる。
「アリス、体調は平気?」
「はい、レイラお姉様、快調です。
ダルくもないし、熱もありません。」
「そう、タケオさんが凄く心配していたわ。
無理をしているんじゃないか?って。」
「・・・タケオ様は私に対して過保護な時があります。」
「一番に考えられているなんて良いじゃない。愛されているわね。
タケオさんの事だからアリスが何か食べたいと言えば、それこそ何でも作ってくれそうね。」
「・・・否定ができませんね。」
アリスはレイラの言葉に少し考えるが否定ができず苦笑する。
「それにしても起きたらレイラお姉様とタケオ様が出かけていて驚きました。
私も行きたかったのですよ?」
「だって、気持ち良さそうに寝ていたのですもの。
起こしたら悪いと思って。」
「うぅ・・・お風呂に入ったら急に眠気が・・・少しならと思ったのですが・・・」
「うむ、疲れておったのじゃろう?」
姉妹の会話にエルヴィス爺さんが答える。
「そうでしょうね、戦闘したんですもの。
タケオさんも『精神的に疲れているでしょうから寝かせておきましょう』と言ってたのよ。」
「う・・・それを言うならタケオ様もなんですけど・・・」
「たぶん、気分が高揚しているのだろうな。」
アズパール王がアリスの言葉に回答を言う。
「でしょうね。あれだけの戦いを初陣でしたのですから。
疲れはしているのでしょうが、気分が高まっていて起きていられるのでしょうね。
まぁタケオさんはわかっているでしょうが。」
ウィリアムも感想を言う。
「そう言えばレイラもリンゴの皮むきを教えてもらったのかい?」
「はい、可愛くでき・・・たはずです。」
ウィリアムの質問にレイラは答え、苦笑する。
「そう言えば、タケオが女の子を連れ込んだそうだな。」
「・・・連れ込む・・・タケオさんが聞いたら反論しそうですね。」
アズパール王の謂れなき中傷をウィリアムが呆れながら聞く。
「確か・・・ヒルダお嬢さんでしたか?
料理長の娘さんだとか。
その子が今回、皮むきをしたいと言った子ですか?」
アリスがレイラに質問をする。
「違うわね。最初はクラレスちゃんと言って兵士長の娘さんに教えていたのよ。
で、ヒルダちゃんは通りかかって途中から一緒にしていたの。」
「何と言うか・・・身元も確かめずに教えるタケオもアレだの・・・」
「そして教えた子が知り合いの娘さんというのもアレですね・・・」
エルヴィス爺さんとウィリアムが苦笑する。
「で、なんでヒルダお嬢さんをタケオ様が気に入ったのですか?
大まかには聞きましたが。」
「さぁ?わからないわね。
さっきも言ったけど、料理長が今日の夕飯のソースを決めかねていて、話がトマトソースになり、どんなトマト料理があるのかタケオさんが聞いてきたので教えて、ヒルダちゃんが創作して失敗した料理の話をしたらタケオさんがヒルダちゃんの発想を形にしてあげると言い出して、作ることにしたのよ。」
「・・・相変わらずタケオ様は唐突に決めますね。」
アリスはため息をつく。
「凄かったわよ。
タケオさんが、いきなりヒルダちゃんを抱き上げてクルクル回りながら『君は天才なのかな?』って言い出して。」
レイラは苦笑する。
「「「え!?」」」
レイラ以外が驚く。
「そんなタケオ様は見たことがないのですけど?」
「もうヒルダちゃんは驚いて固まっているし、タケオさんは我がことの様に嬉しそうにしているし。
なんて言うの・・・そうそう、スミスが初めて立った時のお父さまぐらい嬉しそうでした。」
「あのぐらいか。」
「なるほど、あの時は凄まじかったですね。」
レイラの説明にエルヴィス爺さんとアリスが頷く。
「えーっと・・・どんな感じだったのですか?」
スミスは恐る恐る聞く。
「あの時はの、
会う人会う人・・・皆にスミスを見せびらかしたのじゃ。
街の皆が呆れるぐらいにの。」
「子供ながらに『うわぁ』と思いましたね。
まさか店先で『ほら!見てください!』と立たせている光景はショッキングな記憶で・・・
・・・ん?・・・もしかして私の時もしたとか?・・・」
アリスはエルヴィス爺さんに質問をする。
「安心するのじゃ。
もちろんジェシーもレイラもアリスの時もちゃんと実施しておる。」
エルヴィス爺さんは少し遠い目をしながら優しい声色で言う。
「「「・・・・」」」
3姉弟はガックリとしていた。
・・
・
「それにしてもタケオがそこまで嬉しそうにするとは、本当に天才なのかもしれないな?」
「タケオ様が認める子・・・どんな子なんでしょう?」
「まだまだ原石でしょうね。
ちょっとお父さんに反抗期中の可愛らしいお嬢さんでしたね。」
レイラは陛下とアリスの疑問に答える。
「将来が楽しみじゃの。」
「ええ。」
と、フレデリックが客間に入室する。
「主、タケオ様がお戻りに、ヒルダお嬢様が参りました。
指示通りに客間には寄らず、厨房へ向かっていただきました。」
「うむ、フレデリック、ご苦労。」
「はい。
また、タケオ様からのご伝言で後ほど兵士長が残務処理の途中報告に来るとのことでした。」
「うむ。
フレデリック、ヒルダお嬢さんはどんな感じであった?」
「とても緊張されておりましたね。
父親の職場ですからしょうがないかもしれません。」
「ふむ、料理長に似ておったかの?」
「ふふ、全く似ておりませんね。
とても可愛らしいお嬢様です。将来が楽しみですね。」
ここまで読んで下さりありがとうございます。