第188話 ミートソースレシピと帰宅の挨拶。
ヒルダの説明を3人は聞き終える。
「・・・んー・・・それは美味しそうではないな。」
「そうですね、ミートソースは絡めて食べるから美味しいと思うのですけど。
パスタを敷いてミートソースをかけてパスタを敷いてミートソースをかける。
段々にしてしまうと煮込みと変わらない感じですね。」
料理長もレイラも料理を想像して感想を言う。
「うぅ・・・」
ヒルダは「言わなきゃよかった」と少し涙目になりながら聞いている。
「・・・ヒルダお嬢ちゃん、それを作ろうとしたのはなぜです?」
武雄は優しく問いかける。
「・・・パスタの食感が・・・段々になったら面白そう・・・と思って・・・」
ヒルダは消え入りそうな声で答える。
「「「・・・」」」
料理長とレイラは聞き流していたが、武雄は何も言わず面白そうに聞いているのに気が付き、そんな武雄を不思議そうに見ていた。
唐突に武雄はヒルダを抱っこしてグルグル回る。
「きゃぁ!」
「ヒルダ!君は天才なのかな?天才なのかな??
ふふふ、ヒルダ、偉いですよ。
じゃあ、私がヒルダが考え出した料理の完成形を見せてあげましょう。」
「「「え?」」」
3人とも驚く。
「タケオさん?ヒルダちゃんの発想が料理になるのですか?
だって・・・段々にするだけでしょう?」
「ふふ、レイラさんの考えているのは、ただミートソースに和えただけです。
でも、ヒルダは食感を楽しみたいと言って作ったのです。
ならば調理法が間違っているのですよ。
それを私が叶えてあげます。」
と武雄はヒルダを地面に降ろし、ヒルダの目線まで腰を下ろし言う。
「ヒルダ。
料理としては失敗してしまいましたが、その発想は正しいのです。
私が食べさせてあげますからね?
料理長!」
「おう。」
「鶏肉に付いては調理人達で考えてください。
私は、このお嬢さんに自分の発想の凄さを教えます。」
「まったく・・・タケオの病気が始まったか・・・」
料理長は呆れながら苦笑する。
「・・・病気・・・わかる気がしますね。」
レイラも呆れながら苦笑する。
「病気とは失礼な・・・食べさせませんよ?」
「「なにも言っていません!!」」
料理長とレイラは食欲に負け、すぐに前言撤回する。
「で、タケオ、その料理は何と言うのだ?」
「『ラザニア』と言います。
もしトマトソースを作るのでしたら後で分けてください。
ミートソースを作ります。
あとホワイトソースも作りたいのですが・・・バターは余っていますか?」
「ミートソースは作っておいてやる。
バターか・・・んー・・・ギリギリだな。
鶏肉に使うと足らないだろうな。
・・・バターは俺がこれから調達しよう。」
「頼みます。
あとパスタ屋さんはあります?
そこでパスタを買ってきたいのですが?」
「あぁ、近くにあるぞ。
ヒルダが知っている。」
「わかった、私が案内する。」
「おう頼むな。・・・あ、俺の妻の分はどうしよう・・・」
「お母さんには、私が言ってくる。」
「じゃあ、夕飯が遅くなってしまいますが、ラザニアを土産にして持って帰ってください。
料理長とヒルダは少しでしょうが、厨房で食べましょう。」
「タケオ、良いのか?」
「は?私が料理を秘密にしないのは知っているでしょう?
今回はヒルダへ発想の回答を教えるのです。
ヒルダが満足すれば私は問題ないですね。」
「いや・・・しかしな・・・まぁ・・・タケオが良いと言うなら・・・」
料理長が困惑する。
「へぇ、これが今のエルヴィス家の日常なのですね。」
レイラが楽しそうに見ていた。
「では、私とヒルダは買出しをしてから帰ります。」
「そう、私は先に料理長と帰りますね。」
「大丈夫ですか?」
「ふふ、実家の街ですよ?
平気です。」
「わかりました。
料理長お願いします。」
「あぁ、わかった。
寄り道せずに帰るさ。」
「あとは・・・奥さん!」
「はいはい、どうしたんだい?キタミザト様。」
「我々は、そろそろお暇します。
買っておいてなんですが、残りのリンゴは時間が空いたら料理長に届けてください。」
「はい、わかりました。
代金は銀貨1枚で良いですよ。」
「奥さん太っ腹ですね。」
武雄は代金を支払う。
「初勝利祝いとして割引にしてあげるわ。」
「ありがとうございます。また来ます。」
「今後ともよろしくね。」
武雄とレイラ、料理長親子は店を出るのだった。
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玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「タケオ様、お帰りなさい。
ヒルダお嬢様、いらっしゃいませ。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」
「お・・・お邪魔します・・・」
フレデリックに武雄はいつも通りの挨拶をし、ヒルダは緊張しながら挨拶をする。
「話は聞いております。
主はレイラお嬢様から説明を受けて、『こっちへの挨拶は良いから夕飯を頼む』と言っておりました。」
「はい、わかりました。
それと、あとで兵士長が残務処理の途中報告に来るそうです。」
「はい、畏まりました。」
「では、私達二人は厨房に向かいます。」
「今回も新しい料理が出るとの事でしたが?」
「はい、オーブンで焼きますので少し熱いかもしれませんが、今の時期に合っているかと。
冷めない内に食べて欲しいので、夕飯の最後の工程で作ろうかと思います。
たぶん、夕飯の少し前くらいに屋敷の皆さん用のが出来ると思います。」
「畏まりました。頃合いを見て私も顔を出します。」
「毎回、フレデリックさんと料理長が食べる時が緊張しますね。」
「おや?そうなのですか?自信満々そうでしたが。」
フレデリックは朗らかに答える。
「『不味い』と言われたらどうしようと心の中でヒヤヒヤしていますよ。」
「ふふ。今の所、大丈夫です。
タケオ様の料理は信用がおけますから安心して食べていますよ。
評価は正当にしていますけどね。」
「それはありがたいですね。
・・・今回も美味しいと思わせたいですね。」
「期待しています。」
「答えられるように努力します。
では、作ってきます。」
「はい。」
武雄とヒルダは厨房に向かうのだった。
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