第175話 観覧席はどこだ?
「・・・我らはどうするかな?」
アズパール王がそう言いだす。
「そうですね。うちの護衛も参戦させますか?」
ウィリアムが考える。
「・・・マイヤー。」
「は!現在、護衛は街中に2小隊分います。
招集はすぐにでもできます。」
アズパール王の問いかけに第一近衛分隊長は答える。
「そうか・・・エルヴィス伯爵。」
「はい。お借りできれば嬉しいのですが、今回は遠慮いたします。」
「ほぉ。」
「この戦いは我らエルヴィス家の戦いです。
王都の支援は必要ありません。
街一つの防衛に王都の近衛を出しては、初代様に申し訳ないです。
近衛小隊には護衛に専念頂きます様、お願いいたします。」
「・・・そうか。」
「それと・・・ウィリアムさん、レイラ。」
「はい、お爺さま。
・・・わかっています、お任せを。」
ウィリアムは頷き、レイラが答える。
「すまんな。」
「と、我らはどこで見学しようかな?
見晴らしが良い所はあるか?」
「城門の上でしょうね。」
武雄がアズパール王に伝える。
「ほぉ、見やすいのか?」
「割とですね。あと・・・」
「ん?問題が?」
「いえ、たぶん飲んだくれの住民4名がいますので、それを相手にしてくれるならですね。」
「ほぉ、酒があるのか。良いなぁ。
誰が居るのだ?」
「アランさんも会っていますよ。
仕立て屋の店長、魔法具商店のテイラー店長、青果屋のおじさん、酒屋のおじさんの4名です。」
「うむ、そこに行こう。
良いな?ウィリアム、レイラ。」
「私達も頂けるなら。」
「私は勝手に飲みますよ。」
アズパール王の問いかけにウィリアムもレイラも乗り気だ。
「うむ。エルヴィス伯爵、我らの行動は決まったぞ。」
「わかりました。」
エルヴィス伯爵は頷くのだった。
「では、アリスお嬢様。」
「はい。」
「エルヴィスさん、私達は退席してアリスお嬢様の準備をします。
私は、そのあと兵士詰め所に行きますので、これで失礼します。」
「うむ。タケオ・・・武運を祈る。」
「はい。では、行ってきます。」
武雄とアリスは広間を退出していった。
「・・・エルヴィス伯爵。」
「何でしょうか、陛下。」
「さっきの話で疑問に思っていたのだがな?」
「はい。」
「ここの兵士長がタケオとアリスの二人組を兵士100名と見積もっていただろう?」
「ええ。」
「どうしてだ?」
アズパール王の疑問にウィリアムもレイラも第一近衛分隊長も頷く。
スミスとフレデリックは苦笑している。
「・・・タケオがアリスと模擬戦をしたのは聞いておりましたね?」
「ああ、聞いておるぞ。引き分けだったそうだな。」
「ええ。その模擬戦の後にうちの兵士達対2人で大規模演習を実施したのです。」
「・・・ん?・・・大規模??・・・数は?」
「いくつだったかの?」
「180対2ですね。」
フレデリックが言う。
「「「「え?」」」」
アズパール王達4名は驚く。
「えーっと・・・兵士の内訳は?」
ウィリアムが聞いてくる。
「確か・・・魔法師小隊2つと兵士小隊4つと新兵小隊2つでしたか?」
「そうだったの。」
スミスが答えエルヴィス爺さんが頷く。
「それは・・・また・・・」
「タケオが守って、アリスが攻撃の組み合わせですね。」
「・・・」
4名は絶句する。
・・
・
「はぁ・・・何だか緊張感が薄らいでしまいましたね。」
レイラがそう言いだす。
「そうだね。楽勝感すらあるのだけど。」
「ふむ・・・エルヴィス伯爵、想定死傷者数はどのくらいだ?」
「そうですね・・・当初の突撃戦では3割と見ますが・・・
タケオの作戦は上手くいけば相当低くなるかと。」
「うむ・・・あの作戦は簡潔で見事だな。
本当に実戦経験はないのか?」
「ええ、ない・・・と言っていましたね。
言われてみれば、そういう作戦もあるのかと思わされましたが、発想が柔軟なのか、知っていたのか・・・」
「この作戦が上手く運ぶなら・・・第一近衛分隊長。」
「はい、王都守備隊でも研究します。」
と、広間の扉が開き深紅のフルプレートを着たアリスが入ってくる。
皆が「ほぉ」とため息を漏らす。
アリスの顔が凄みを持った顔つきになっていた。
「ふむ。アリス、兜はいらないのかの?」
「はい、お爺さま。タケオ様が傍に居るのですからすぐに治して貰えます。
それに視界は狭いし暑いし・・・あれは大変です。」
「・・・アリス、似合っているな。」
「陛下、下賜頂いたフルプレートにて行ってまいります。」
「うむ・・・そうか・・・王都守備隊初代総長もこうだったのかな?」
「え?初代様がですか?」
「それは私が説明します。
初代総長は兜を一回も被らなかったのです。」
「なんででしょう?」
第一近衛分隊長の説明にレイラが聞いてくる。
「表向き、戦場を良く見渡す為、機運を肌で感じる為と伝わっていますが・・・
本音は暑かったからと。」
「・・・アリスと一緒じゃの。」
「はい。初代総長の直系の系譜・・・立ち居振る舞いも似ているのでしょうか?」
皆が笑う。
「では、陛下、お爺さま、行ってきます。」
「うむ、武運を祈っているぞ。」
「武運を祈っておるからの。」
アリスが広間を退出していった。
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