第174話 現状説明と戦術考察。
「では、現状を説明します。」
兵士長が説明を始める。
「現在、この街から約8kmの所をゴブリン等の魔物400がこの街に向け移動中です。
推定ですが、城門到達は3時課の鐘辺りと見ています。
また、この街の現在の兵力は兵士360名、騎士200名の合計560名になります。
現在、緊急時対応マニュアルに従い、裏城門は3小隊60名にて閉鎖しております。
よって開戦は500名となる見込みです。」
「うむ、敵の内訳はどうなっておる?」
「はい。ゴブリン350、オーガ50です。」
「・・・厄介じゃの。」
「はい。
待ち受ける我らは5列で横に並び中央に騎士団を配置し、開戦と同時に魔法師の面制圧のあと突撃をする予定です。」
「ふむ・・・タケオ、お主はどう思う?」
エルヴィス爺さんは黙って聞いていた武雄に話を振る。
「・・・前提がわからないのですが・・・質問を良いですか?」
「うむ。」
「まず、この戦いのこちら側の勝利条件と敗北条件をお教えください。」
「勝利は殲滅、敗北は壊滅・・・じゃの。」
エルヴィス爺さんが難しい顔で言う。
「わかりました、相手の殲滅ですね。
・・・ゴブリンとオーガの詳細をお願いします。」
「はい。
ゴブリンの大きさは約1m程度・・・人間の子供の様な大きさです。
体も筋肉質ではありません・・・どちらかと言えば痩せています。
武器はこん棒がほとんどです。ある程度、ちょこまか動き攻撃してきます。
知能は割と低いです。突撃をしてくるだけで、戦術は何もないと言えます。
ゴブリン1に兵士1人で対処可能です。
オーガの大きさは約3~4mです。
体は筋肉質で怪力です。
こちらも武器はこん棒がほとんどです。
動きはそこまで早くはありませんが、走り込んできての一撃は相当の威力があります。
こちらも知能は割と低く、突撃をしてくるだけです。戦術は何もないと言えます。
また、ゴブリンよりも体力があり、倒すのに時間がかかります。
オーガ1に兵士3、4人で対応するのが基本です。」
兵士長が説明する。
「わかりました。
ちなみに両者は魔法は?」
「使ったという事例は聞いておりませんので、使用しない物としています。」
「そうですか。簡単比較でこちらは500名、あちらは550名・・・
開戦前から戦力が少し不利ですか?」
「はい。ですが、先ほども言いましたが突撃前の魔法師の攻撃により数を減らせると考えます。」
「魔法師小隊40名ですか?
兵士長、最低の戦果を想定して、突撃する際の相手の想定戦力はどのくらいですか?」
「・・・ゴブリン250、オーガ50です。」
「・・・そうですか・・・わかりました。
次にこの街の周辺地図を見させてください。」
と、フレデリックが皆の前に街の周辺図を開き置く。
「さて・・・兵士長、城門はここですが・・・
敵は正面から向かってきていますか?」
「はい。報告によると正面から横100mほどに広がって歩いてきています。」
「城門前約600mの所に森が両脇から迫り出てきていましたが、ここの開けている幅は?」
「200~250mです。」
「・・・そうですか・・・んー・・・」
武雄は悩む。
「タケオでは難しいか?」
「ん?あぁ。実戦経験が無いので・・・遊びでの想定戦はありますが・・・良し悪しが。」
戦略シミュレーションは戦国時代物も現代物もやっていたけどなぁっと武雄は思う。
「構わぬ。思う所を言ってみるのじゃ。」
「そうですか?
では、城門前にこの皿の様に半楕円形でこちらは待ち受けます。
左翼にハロルドを指揮官に騎士100名と魔法師小隊を含む第6~10小隊100名、
右翼に副騎士団長を指揮官に騎士100名と魔法師小隊を含む第11~15小隊100名、
中央に兵士長を指揮官に第1、第5、第16、第17小隊100名を配置します。」
「その意図は何じゃ?」
「左翼。右翼はベテランで揃えます。
魔法の有効射程になった際は両脇から撃ち込み、数を減らしてください。
中央に到達するのは、その攻撃を抜けた手負いですので新兵達に処理をさせます。
魔法師が撃ち終わると同時に両脇から徒歩にて幅を狭めます。
・・・挟撃を狙います。
慌てずに、突撃ではなく、処理して行ってください。
こうやって。」
武雄は自身の右手と左手の付け根を合わせ90度くらいに開いてから合掌する。
「うむ、なるほどの。
・・・しかし、時間がかかるの・・・中央が手薄過ぎて崩れないかの?」
「そこは私が入ります。」
「・・・」
皆が押し黙る。
「私でも崩されない様に維持は出来るでしょう。
欲を言えば両翼は少しこちらの負担を補って欲しいですけどね。」
「・・・タケオ、すまんな。」
「いえ。
私を戦争には駆り出さないとエルヴィスさんは仰ってくださいましたが、今回は街の防衛戦です。
私でもやれることはあるでしょう。
数千の兵士同士の戦争では私は何もできない役立たずなので参加は出来ませんけどね。」
「ふふ、お爺さま、私も出ますよ。」
アリスが参戦を表明する。
「アリスもか?」
「はい。私も数千の兵士同士の戦争では役に立ちませんけど。
街の防衛戦では役に立ちます。
2年前と同じです。
それにタケオ様を守らなくては。」
「アリスお嬢様、良いのですか?」
「あら?貴方の隣が私の居場所です。
タケオ様一人で戦地に立たせませんよ?」
「・・・まさか、プロポーズの返事をここでまた言われるとは。」
武雄とアリスは笑い合うのだった。
「うむ、二人とも無理は禁物じゃぞ?」
「はい、人身御供になるつもりはありません。
必ず生還します。」
「うむ。ハロルド、どう思う。」
「当初の突撃戦より死傷者は少ないと考えます。
タケオの作戦を支持します。」
「デビット。」
「騎士団長の言う通りです。
また、キタミザト様、アリスお嬢様のお二人でしたら兵士100名分と換算します。
中央も両翼と同じ厚みになると考えます。」
「・・・では、タケオの作戦を基軸とする。
ハロルド、デビット、詳細を詰めよ。」
「「は!」」
ハロルドと副団長と兵士長は広間を退出していった。
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