第171話 12日目 起床
「はぁはぁ・・・くっ・・・もうすぐ詰め所だ・・・」
一人の兵士が馬を走らせながら街に向け帰還してくる。
兵士は昨夜、街から半径10kmの見回りの為、2人組で出て行った。
そして1時間前、見回りをしている際にゴブリン達の集団を発見。
15分程度、観察をしていたが一路、エルヴィス邸がある街に向かっていると推察すると、
緊急事態を知らせる為、まずは一報を持ち帰ってきた。
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と、城門横の兵士詰め所に到着するなり、馬から飛び降り所内に転がり込む。
「き・・・緊急報告!!!」
その言葉を聞き、詰め所内に居た当直達は一斉に各所に走り出すのだった。
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「うわぁ!・・・」
武雄は不意の浮遊感で目を覚まし、声を出しながら床に落ちる。
いつもはベッドだが、今日はソファなので、少しの寝返りで落ちた様だ。
ふと窓を見ると、遠くの空が少し明るくなっていた。
・・・あぁ・・・少し早いか・・・トイレに行って、一服してからアリスお嬢様を起こすかぁと思う。
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一服も終わり、お茶を口にしながらボーっとしていると、寝室側の扉がノックされる。
武雄が「どうぞ」と言うとレイラが入ってくる。
「タケオさん、おはようございます。」
「レイラさん、おはようございます。
・・・お腹を押さえていますが・・・
・・・あぁ・・・アリスお嬢様ですか。」
「ええ、アリスの寝相の悪さを忘れていました。」
レイラは苦笑する。
武雄はレイラに近づくと。
「失礼しますね。」
と、レイラのお腹に手を当て「ケア」をかける。
レイラは少し驚くが痛みが引いていくので武雄の好きな様にさせる。
すぐに武雄は離れる。
「普通のですが、お茶でも飲みますか?」
「はい、いただきます。」
と、レイラはソファに座る。
毛布は起きた際に畳んでおいた。
「はぁ~、和みますね~。」
レイラはお茶を受けとり口を付けてマッタリする。
「そうだ。タケオさん、いきなり女性のお腹を触っちゃダメですよ?
私だから何も言いませんが。」
「ん?・・・言われてみれば、失礼になってしまいますね。
つい・・・痛そうでしたから。」
武雄は苦笑する。
「ふふ、痛かったですから助かりました。
タケオさん、アリスは毎朝こんなですか?」
「ええ。この間は起きたら私の上で寝ていましたよ?」
「・・・どうやって登ったのでしょう?」
「さぁ?気持ち良さそうでしたから起きるまで放置しました。」
「苦労をかけてしまっていますね。」
「いえいえ、可愛い物です・・・膝蹴りがなければ・・・」
「ふふ、確かにそうですね。」
「寝相は怒れませんからね~。」
「意識しても直せないなら言わない方が良いですよね。」
「ええ。
そうだ、ベッドの寝心地はどうでしたか?
私とアリスお嬢様の好みで固めにしていますが?」
「あ、だからなのですね。
王都では柔らかい物を使っているので・・・でも寝起きはスッキリしていますね。」
「そうですか。今夜にでもアリスお嬢様に説明を求てみては?」
「アリスにですか?」
「はい、一通りは説明していますから。
覚えているならしてくれますよ。」
「あら、アリスは覚えていますかね?」
「覚えていないなら私がしますよ。
被験者はウィリアムさんですかね?」
武雄は苦笑する。
「前回は誰が?」
「スミス坊ちゃんですね。」
「あら、損な役回りですね。」
「悲しいかな、そういう時は一番の若者が犠牲になるのが世の常です。」
レイラと武雄は笑い合うのだった。
「と、そろそろ、アリスお嬢様を起こしてきますね。」
「あら?私も行こうかしら?」
レイラも立とうとするが・・・
「んー・・・刺激的に起こしたいので、少し待っていてください。」
「刺激的・・・ですか?」
レイラの質問に武雄はニヤリと笑う。
「う・・・アリスの為にも見ない方が良さそうですね。」
レイラは怖気づいて席に座りなおす。
「はい。では、少し行ってきます。」
「行ってらっしゃいませ。」
レイラの見送られながら武雄が寝室に向かった。
武雄は寝室のベッドに寝ているアリスを発見する。
・・・万歳しながら何でうつ伏せで寝ているのでしょう?
武雄は、ある意味感心していた。毎日飽きさせないですね。
武雄はクスクス笑う。
・・・が、レイラに言った通り、刺激的に起こす為、アリスに近寄る。
・・
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「ふわぁぁぁぁぁぁ・・・」
「ゴホッ・・・」
武雄の書斎に居るレイラがお茶を噴き出す。
「ケホッ・・・何て声を・・・」
・・
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しばらくすると寝室側の扉が開き、武雄とアリスが入ってくる。
「レイラさん、戻りました。」
武雄の顔は達成感に満ちていた。
「タケオさん、おかえりなさい。
アリス、おはよう。」
「う・・・レイラお姉様、おはようございます。」
一方のアリスは顔を真っ赤にさせている。
アリスがレイラの横に座ると武雄がお茶を出す。
「どうぞ、お茶です。」
「うぅ、ありがとうございます。」
とアリスがお茶に口を付ける。
・・
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「ねぇ、タケオさん。」
「はい?」
「なにをしたの?」
レイラの言葉にアリスはビクッとする。
「別に・・・何も?」
武雄は顔色を変えずに答える。
「ねぇ、アリス。」
「タケオ様が変態なのでは?と思いました。」
武雄に対してアリスはジト目で抗議してくる。
「変態とは失礼な・・・私がそんな悪事に染まったのは、お嬢様のお尻が可愛らしいからですよ。
それにお尻をも」
「わぁぁぁぁ!!!」
アリスがいきなり大声を出して遮る。
「アリス、うるさい!!!」
「タ・・タケオ様!それ以上言うと怒りますよ?」
「はいはい、怒られるのは嫌なので黙ります。」
アリスは真っ赤になって言い、武雄はクスクス笑う。
「あら・・・聞きそびれてしまいましたね。
・・・ん?・・・アリス?」
「はぁ・・・なんでしょう?」
「言うなとは言っていますが、やるなと言わないのは、なぜ?」
「う・・・その・・・それは・・・」
アリスはレイラの指摘に増々真っ赤にさせる。
「知りません、何も言いませんから!!」
アリスはそっぽを向いてしまう。
「あら?怒らせてしまったわ。」
レイラはニヤニヤする。
・・
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「さて、朝食の前にキャラメルの様子でも見てきますかね。」
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