第168話 11日目 夕食後の報告会。(試験小隊案と何が開発できそうか。)
「ちなみにタケオ、資金はどのくらいかかると試算する?」
「んー・・・上限なく・・・なんて言ったら王都の文官に殺されそうですが・・・
3領地に試験小隊の設立を促して・・・フレデリックさん、この街の兵士小隊は大体20名ずつでしたか?」
「はい、1小隊20名ですね。」
「では、10名の半個小隊としますか。
大した戦力にならないので最新装備で固めていても王都の武官、文官は脅威とは思わないでしょう。
10名を雇うとして・・・守秘義務があるので金3枚として人件費が年金貨360枚。
武具や馬、演習の費用として年金貨50枚。
武具の開発および戦術の勘案・・・3名として年金貨110枚。
武具の開発費用として年金貨80枚・・・一貴族領につき年金貨600枚でしょうか?」
「ふむ・・・そのぐらいか・・・」
「国からの支援を期待しちゃいますね・・・一貴族領負担だと厳しい物があると思いますから。」
「そうですね。2小隊分を捻出するのは少し厳しいですね。
試験小隊を作るくらいなら現状の兵士を増やしたい所ですね。」
フレデリックが意見を言う。
「なるほど、地方の意見としては試験小隊よりも実戦部隊の充実に当てたいのか・・・」
アズパール王は頷きながら言う。
「研究所や試験小隊の件は・・・まぁ、アランさん達に任せます。」
「ん?我に任せるのか?」
アズパール王が聞いてくる。
「ええ。
何だかんだ言って年金貨2000枚は必要になる企画ですよ?
一個人では発案は出来ても実施の費用を捻出する事はできませんし、コネもないですしね。
研究所の設立も試験小隊創設もカトランダ帝国に対する方針も国が考えることです。
アランさんは陛下に近いのですから国の幹部なのでしょう?
幹部貴族達と武官、文官の幹部とで今後の国の方針を考えるのが良いでしょうね。
もしかしたら真逆の方針になるかもしれませんし、賛同されてもっと良い方針が出来るかもしれません。」
「開発は王都でするとなっても良いのか?」
「ええ。
国全体の武具の性能が上がることは良い事でしょう?
ただ、私の欲しい武器は作らなそうなので個人的に研究していけば良いだけですし、問題ないでしょう。」
「個人的にか?」
「ええ。
今の所、エルヴィス伯爵家は危機に瀕しているわけではありません。
武器の開発を急ぐ事もないかと。
小銃の開発者を私の下に付けたいと思うのも個人的にはもっと面白い物が作れそうだからですから。」
「面白い物とはどんなことだ?」
「そうですね・・・私がいた所と同じ出身だとしたら・・・
もう少し食事のレパートリーが増えるかも。」
「え?そっちなのですか?」
レイラが聞いてくる。
「え?武器の事ですか?」
武雄が逆に聞いてくる。
「はい、話の流れ的に。」
「そうですか・・・
今考え付くのは、見えない剣とか軽くて丈夫な盾とか相手との正確な距離を測る機械とか?」
「変なのがあったな。
見えない剣・・・とは実用性があるのか?」
「え?大ありでしょう。
剣の長さがわからなければ、間合いも取り辛いですし、そもそも右なのか左なのか・・・相手の体さばきだけで判断するなんて普通はできないでしょう?
1対1で効果抜群です。
それに護衛者が武器を持っていない様に見せれるので、相手は不用心になりそうです。
潜入工作もしやすくなりますし・・・あれ?暗器として使えますね?」
「・・・タケオ、今凄い発案をしたのだが・・・それは具体的にはどうやってするのか?」
「風と水の魔法が出来れば可能ではないですか?
水を細分化して風の魔法で圧縮、剣の周りを高速で回転させてプリズム効果を維持出来る様にして・・・」
「タケオ・・・わからん。」
アズパール王が難しい顔をする。
「あぁ・・・そうですね・・・
んー・・・雨上がりの虹は知っていますか?」
「うむ。」
「あれの原理は太陽からの光が雨上がりの水滴に反射して見える現象です。」
「そうなのか?」
「ええ、虹は簡単に作れますよ。
水を細かくしてそこら辺に撒けばね。」
「無理だ・・・」
アズパール王はガッカリする。
「まぁ・・・機会があったらしてみてください。
で、光は直進する物との前提で話をしますね。」
「・・・タケオさんの言い方だと光は曲がると言っているのですが。」
ウィリアムが聞いてくる。
「ええ、光も物質なので、常に真っ直ぐは進みませんね。
と、これは教育されていなければ知らない事ですから気にしないでください。
今は光は直進するで良いです。」
「はぁ。」
「で、疑似的に剣の周りに反射する物を配置して光が剣の周りを回り込む様にします。
すると向こうの景色が映り込む様に見えるはずです。」
「・・・わからん。」
「ええ、でしょうね。
つまり、自然現象を科学的に考える教育を私はされていますし、もしかしたらその開発者もされているのです。
私は詳しい数式は覚えていませんが、概念は知っています。
となると後は腕の良い魔法師が傍に居れば、さっき言った物の簡単な物は作れそうです。
・・・発案は私がして、テイラー店長に作らせますかね。」
「・・・タケオは王都には来させられないな・・・発想が奇抜過ぎて他の者が嫉妬しそうだ。」
「だから言っているでしょう?
私はその辺が面倒なので、ここで楽しく開発したいと。」
「ああ、わかった。
しかし、さっきの開発者は増々こちらに引き入れたいな。
タケオと同じ発想が出来る人間を敵国に置いておくのは危険だ。」
「ええ、カトランダ帝国でその開発者の価値がわかっていない今が良い機会ですね。
私と一緒に作れば、面白武器が何個かできそうですね。」
武雄は楽しそうに話すのだった。
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