第167話 11日目 夕食後の報告会。(小銃について国の対応方法。)
「うむ。タケオは、どうすべきだと思う?」
アズパール王が聞いてくる。
「そうですね・・・国としてですか?私個人としてですか?」
「まずは、国として出来る事は何だと考える?」
「国としてなら、とりあえず、カトランダ帝国に面している人達に防御を優先させる方針を打ち出しておけば当面は平気だと思いますが・・・
問題は開発者ですね。
私の最初に考えた通りなら開発者はのんびりと開発をしているので、放置で良いでしょうが・・・
先ほど閃いた通りなら今、迫害されているかもしれませんね。」
「うむ、そうだな。」
「・・・出来れば、その開発者をこちらに引き込みたいですね・・・」
「そうだな、それが一番の脅威の排除方法だな。
そして実戦配備させるか?」
「いえ、それではアランさんが先ほど言った通りに王国の魔法師達に潰されます。
場所が変わるだけで事態は変わらないでしょう。」
「・・・そうだな。」
「私は基本的にこの剣と魔法の世界は好きですので、いきなり小銃が蔓延る世界へすることは避けたいです。」
「そうなのですか?
でも小銃があると簡単に戦力が高まるのでしょう?」
レイラが聞いてくる。
「ええ、考えてくださいね。
今の主流は剣と魔法です。それは特殊技能・・・武力の達人を頂点とする構造が出来ていますが、そんな中に個人の武力は関係なく、誰でも魔法師と同等の武力を簡単に発揮できる武器が登場する・・・
統治する側としては脅威以外の何物でもありません。」
「確かにな。」
武雄以外の皆が頷く。
「ですので、ゆっくりと魔法の進化を見ながら小銃を進化させる必要があると思います。
もちろん、他の国でいきなり小銃以上の破壊力を持った兵器が開発されるかもしれませんから研究はするべきなのですが・・・」
「なるほどな、それを王都で管理すれば良いと。」
「はい。ただし、研究の場は王都には置けないでしょう。
先ほども言った通り魔法師の圧力がある為、出来ればエルヴィス家の管理下に置きたいのですが・・・
難しいでしょうね・・・」
武雄はため息をつく。
「そうか?タケオが管理すれば良い方向にいくと思うが?」
「そうですね、研究という面では上手くいくでしょうが・・・
アリスお嬢様もいて最新兵器も研究している・・・
・・・なんだか戦力がエルヴィス家に偏り過ぎていませんか?」
「ん?・・・確かに・・・
確かに戦力分布が偏っているな・・・他の貴族が何をし始めるかわからん。」
「そうです。
貴族と文官が『エルヴィス家は謀反の意思あり』なんて言い出したら手が付けられません・・・」
「・・・言い出しそうだな。」
アズパール王は、ため息を漏らしながら言う。
「ええ、人の社会は嫉妬の上に成り立っています。
いくら我々が王政に反することはないと言ったところで、自分の都合のいい様に解釈するでしょう。
そんな面倒は背負い込めません。」
皆が一様に良い方法はないか考える。
・・
・
「タケオ様。
例えば、小銃を潰されない様に配慮して貰って、タケオ様が王都に行くというのはどうですか?」
スミスが聞いてくる。
「そうですね・・・
それは王都の文官や武官と戦うことを意味するのですが・・・面倒ですね。」
「面倒ですか?」
「ええ。
王都とは国の中枢機関が集まった場所と思えます。」
「はい。」
「ならば、そこに集まってくる文官、武官は地方のエリート達がほとんどだと思うのです。」
「確かに、地方の貴族からの推薦で入ってくる者も多いな。」
アズパール王が頷く。
「エリートってどんな人達だかわかります?」
「え?勉学や剣術が秀でている人です。」
スミスが言う。
「つまりは、自分の剣術の腕や知識量に自信がある人達なのです。」
「はい。」
「私は、その自信に満ちた人達に真逆の意見をぶつけないといけないのですよ?
嫉妬、嫌味、妬み、命の危機・・・面倒ですね。
そこまでして王都に行きたいとは思わないですね。」
「・・・あながち間違っていないので否定できないな。」
アズパール王が苦笑する。
再び皆が一様に考える。
・・
・
「・・・確か今戦争をしているのは、3か国でしたよね?」
武雄が唐突に聞いてくる。
「ええ。魔王国、ウィリプ連合国、カトランダ帝国ですね。」
ウィリアムが言う。
「例えば・・・王立戦術研究所とか銘打って、武具、戦術を研究する機関を設けて、実質研究するのは3か国に面した一貴族とすればどうでしょう?」
「ん?どういうことだ?」
「えーっと・・・
各地方によって相手が違うので、それに合わせた武具の開発と戦術の確立をすることを目的として敵国に面した貴族領の内一つを選び、そこに国からの依頼として資金を提供します。
で、年に1度か2度、研究所に報告書を提出させる様にします。
各地方の実情を王都で集約、国の戦略を練る。
そうすれば文官達も3方を見比べるので、最先端の武具を研究して戦力が多少は歪になっていても、王都への脅威にならなければ放置してくれるかもしれません。
それに、もしかしたら他の地域から画期的な武具が出てくるかもしれません。」
「それは・・・良いかもしれないな。」
「確かに他の貴族を巻き込むのはありですね。」
アズパール王とウィリアムは頷く。
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