第163話 11日目 夕食後の報告会。(ショートケーキの実力。)
客間に居る全員にお菓子とお茶が行きわたる。
「さて、今日の本題ですが・・・皆さんお腹いっぱいですか?」
武雄は一応聞いてみる。
「問題ないの。」
「これを見て、さっきの幸せ感が吹っ飛んでいるぞ。」
「これは楽しみですね。」
エルヴィス爺さんとアズパール王とウィリアムが答える。
「・・・」
エルヴィス家3姉弟はじーっと見ていて声を出そうともしない。
「えーっと・・・レイラさん?アリスお嬢様?スミス坊ちゃん?
・・・どうしました?」
「タケオ様・・・早く説明を!」
アリスは睨むように言ってくる。
武雄は苦笑しながら「焦らしましょうか??」と心の中で呟く。
「はいはい。では、説明ですね。
夕飯前にも説明しましたが、生クリームから作った正真正銘のホイップクリームです。
生クリームを泡立ててクリーム状にし、砂糖を入れて甘くしています。
今日はショートケーキもどきを作りました。」
「もどき・・・なのですか?」
レイラが聞いてくる。
「はい。個人的には新鮮なイチゴを使いたかったのですが、今回は干しイチゴを使ってみました。
なので、もどきです。
ちなみにですね。」
「なにかあったのか?」
アズパール王が聞いてくる。
「さきほど夕飯前に厨房の皆さんと執事やメイドさん達にも食べて貰っています。
いつもの通り満面の笑みでしたね。
ね、フレデリックさん。」
「ええ。ただし、スイーツ担当は泣いていましたね。」
「うむ、いつもの光景じゃな。」
エルヴィス爺さん、アリス、スミスはほくそ笑む。
「では、説明も終わりましたので、どうぞ。」
今回も「ど」の辺りで食べ始める。
皆の不意を突いたつもりだったのに・・・武雄はそんな皆の様子を目を細くしながら見ている。
エルヴィス爺さんとスミス、アズパール王にウィリアムは満面の笑顔で一心不乱に食べている。
レイラとアリスは一口食べると武雄を見て、目をこれでもかと見開き驚いている。
「お気に召しましたか?」
「「「「・・・」」」」
皆、無言でコクコクと頷くだけだった。
「皆さん・・・毎回良い顔をされますね。」
と武雄は微笑む。
・・
・
あっと言う間に完食。
「幸せだ・・・」
アズパール王は、うっとりしながら言う。
皆も感想は言わないまでも余韻を楽しんでいる。
武雄は、そんな光景をニコニコしながら見ていたが。
「もう、なんて顔をしているのです?
蕩けそうな顔をして。」
そんなことを言う。
「しかたありませんよ。タケオさんのスイーツはこの世のものとは思えない味でした。」
ウィリアムが言う。
「ええ、今まで食べたことありませんでした・・・
あのクリームは口に入れたら蕩けてさらに甘さが口に広がって・・・良いですね~。」
レイラがそう言い、
「それにシフォンケーキにも合っていましたね。
クリームもフワフワと聞いていましたが、確かに口に入れた時の感触はフワフワという表現ですね。」
アリスも感想を述べ。
「濃いお茶も合っていましたね。
甘味の後にあのお茶は口の中をサッパリとしてくれて、甘さが口に残らないのが良いです。」
スミスも好評の様だ。
「うむ、皆からも好評だったの。
タケオ、ご苦労じゃったの。」
「いえいえ。私は、ただの発起人です。実際に作ったのは私の調理方法を忠実に再現した調理人達です。彼らを労ってください。」
「うむ、あとで伝えよう。
それにしてもまた、屋敷の皆に食べさせたのかの?」
「ええ、毎度の事でしょう?」
「ん?タケオは屋敷の使用人にも食べさせたとさっき言っていたが、毎回なのか?」
「はい、アランさん。
私が作る時は皆への感謝の気持ちから皆で美味しい物を食べましょうと全員分作っています。
まぁ、エルヴィスさんやアリスお嬢様、スミス坊ちゃんと比べると量の面では少なくなってしまいますが。」
武雄は苦笑しながら言う。
「ここ最近のタケオ様の料理のおかげでうちの使用人達の仕事の満足度が上がっていますよ。」
フレデリックが言い放つ。
「うむ、良い事じゃな。
不満はないのかの?」
「聞きませんね。
タケオ様とアリスお嬢様の掃除担当が一番人気になりつつあります。
・・・ベテラン達が成りたがっています。」
「・・・なぜです?」
アリスが「わからないですけど?」と聞いてくる。
「いえ、『美味しい物を食べさせてくれるタケオ様に感謝を』と言っていますね。
二番人気はスミス様、三番人気に主と続きます。」
「うむ・・・納得いかないのじゃが。」
「ちなみにタケオ様が来る前は一番人気にスミス様、二番人気にアリスお嬢様、三番人気に主でした。」
「面白いな。」
アズパール王はクスクス笑う。
「ますます納得がいかないのじゃが。」
エルヴィス爺さんは少し困惑しながら言う。
「確かにこれだけの美味しい物が出てくるならタケオさんの評判は上がりますね。」
ウィリアムは頷きながら言う。
「そうですか・・・では、執事やメイドさん用に携帯できるお菓子を作りましょうかね。」
「「「「「「え!?」」」」」」
「え?なんでしょう?」
武雄は皆が驚くことに驚く。
「・・・エルヴィス伯爵・・・タケオは毎回こうなのか?」
「はい、唐突に言います。」
「タケオさん、皆は満足なのですよ?さらにですか?」
レイラが聞いてくる。
「いえ、毎回唐突に作ってしまうので、何だか申し訳ないので。
だったら携帯出来る小さなお菓子でも持ち歩いて貰って、小休止の時に頂いて貰えれば楽しんで仕事をしてもらえるかなぁと。」
「・・・」
アリスとスミスはため息交じりに聞いている。
「ちなみに何を作るのですか?」
ウィリアムが聞いてくる。
「えーっと・・・飴は存在しているのですよね?」
「はい、ありますよ。一般に出回っています。」
アリスが言ってくる。
「キャラメルというのは知っていますか?」
「キャラ・・メル?・・・んー・・・知りませんね。
レイラお姉様、聞いたことありますか?」
「いえ、王都でも聞いたことないですね。
どんな物ですか?」
「砂糖と牛乳とハチミツを煮詰める、柔らかい飴ですね。」
「我もそれは知らないな。」
「飴よりも早く口に溶けますから疲れた際の糖分補給に最適です。
ただ・・・ねぇ・・・」
武雄が少し苦笑する。
「ん?どうしたのだ?」
エルヴィス爺さんが聞いてくる。
「調理が大変と言うか・・・体力勝負でして。」
「ほぉ、そんなに大変なのか?」
アズパール王が聞いてくる。
「・・・1時間・・・鐘が鳴ってから次の鐘が鳴る1/3くらいまで焦げない様に火にかけながら混ぜ続ける必要が・・・
そこだけが大変なのですよね~・・・今日の寝る前に作ってみますかね。
そうすれば厨房も忙しくなる前に捌けるか・・・物自体も朝には口にできますかね。」
「「「「「「え?」」」」」」
武雄が「んー」っと悩む。
「いや、タケオ様、今日します?」
アリスが聞いてくる。
「・・・食べてみたいでしょう?」
「それは・・・そうですが・・・」
アリスは食べたい感情も見せつつ困った顔をする。
「まぁ、後で料理長と相談してみます。」
「うむ、そうじゃの。」
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