第162話 帰宅。(今日の夕飯。)
武雄達一行はエルヴィス邸に到着した。
玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、皆さま。」
「ただいま、フレデリック。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」
「出迎えご苦労。」
「戻りました。」
「ただいま、フレデリック。」
「もうすぐ晩課の鐘ですので、今は夕飯の支度をしています。
もうしばらくお待ちください。」
とフレデリックが言う。
「わかりました。タケオ様、どうしますか?」
「私は厨房に行ってから食堂に向かいます。」
「わかりました、期待しています。
私たちは客間に行きましょう。」
「そうね。ウィリアムもお義父さまも良いですか?」
「構わぬ。」
「僕も平気ですよ。」
「では、また食堂で。」
と武雄は皆から離れ厨房に向かう。
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「陛下、お疲れ様でした。」
フレデリックは畏まりながら言う。
「うむ、楽しかったぞ。」
「何よりでございます。
主が客間で帰りをお待ちしております。」
「そうか。」
「では、行きましょう。」
とレイラが先導しながら客間に向かう。
客間の扉をフレデリックがノックする。
中から「どうぞ。」と許可が下りるのを確認し扉を開け、皆が入室する。
中にはエルヴィス爺さんとスミスがいた。
「エルヴィス伯爵、戻ったぞ。」
「無事のお戻り、安堵いたしました。」
「戻りました。」
「お爺さま、戻りました。」
「殿下、レイラ、おかえりなさい。」
「お爺さま、疲れました。」
「アリス、ご苦労だったの。」
と4人は席に着く。
フレデリックがお茶を入れ、皆の前のお茶を替えると、皆から少し後ろに下がる。
「陛下、いかがでしたか。」
「うむ、楽しかったな。
何年ぶりかに街の住民と話をした気がしたな。」
「さようですか。
ちなみにどこに行かれましたか?」
「お爺さま、青果屋と酒屋それに仕立て屋と魔法具商店ですね。」
レイラが言う。
「どの住民もすぐに我をわかったな。」
「タケオにはバレなかったかの?」
「たぶん・・・バレていません。
何を緊張しているの?という感じでしたね。
まぁ貴族だから緊張していると思っているのでしょうね。」
アリスが自身の感想を言う。
「そうか・・・バレてないか・・・心配だ・・・」
エルヴィス爺さんがガックリとする。
「で、タケオはどこに行ったのかの?」
「タケオ様なら厨房に行きました。」
「そうか、夕飯の支度をしに行ったのじゃな。」
「ん?エルヴィス伯爵、タケオは夕飯も作るのか?」
「はい。今日の夕飯はタケオが考案した物になる手はずです。
あと夕飯後のティータイムのお菓子もタケオが考えました。」
「ほぉ、それは楽しみだな。」
「そうですね。次はどんな美味しい物がでるのかしら?」
「レイラは期待し過ぎだよ。」
ウィリアムは苦笑しながらレイラを諭す。
と客間に他の執事がきて、夕飯の支度が整ったと知らせてきた。
「皆さま、夕飯の用意ができました。」
皆は席を立って食堂に向かったのだった。
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食堂には、皆が席についた。
と、夕飯が運ばれてくる。
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「と、配膳が終わりましたね。
では、軽く説明します。」
「うむ。」
「今日の夕飯は『生クリーム』を使った料理というテーマでメインとスープが生クリームを使った料理になります。
カルボナーラと牛乳の野菜スープとキュウリのサラダと簡単ですが、味が違う事がわかりやすいと思います。
長々という事もアレですから、温かい内に頂きましょう。」
「うむ、では、いただくかの。」
皆が一斉に食べ始める。
・・・
・・
・
夕飯後、客間に皆が移動する。
フレデリックが食後のお茶を入れ、皆の前に置き、皆から少し後ろに下がる。
「今日の夕飯も絶品だったのぉ。」
とエルヴィス爺さんは言い、武雄を除く皆が頷く。
「あのスパゲッティは初めて食べたな。
濃厚で旨かった。」
「ええ、それにスープもいつも食べる物より味が濃かったですね。」
アズパール王とウィリアムがニコニコしながら言う。
「今はあの2つの料理の余韻で幸せだわ。」
「そうですね、レイラお姉さま。」
「です、です。」
レイラとアリスとスミスは幸せそうな顔をしながらボーッとする。
「皆、幸せそうで何よりです。」
と武雄もニコニコしながら見つめている。
「アリス達は、いつもこんな料理を食べているの?」
「いつもではないですよ。
タケオ様が気が向いた時に何か1品作りますね。」
「あら、毎日は作らないのね?」
「そうですね。
何かしらの切っ掛けで調理法を思い出せて、食材があれば・・・ですね。」
「そう・・・レシピは難しいの?」
「いえ?私のいた所の一般家庭で作っていた物ですからそこまで難しくはないですよ。」
「なに!?タケオの所では毎日こんな絶品料理が出るのか!」
「母が作っていましたよ。」
「タケオの親御さんは料理人か?」
「いえ、主婦ですが?」
「・・・なんということだ・・・」
アズパール王は驚きを隠さない。
「タケオさんのお母さまは料理が上手なのですね。」
「普通に何でも作ってくれましたね。
あとは食材が何があるか見て適当にパパッと。」
「凄い腕だな・・・」
アズパール王は関心しながら頷く。
「凄腕ではないでしょうね。
ここのお母さん方もパパッと料理をされると思いますが?」
「ですが、ここまでの味は出していないと思いますね。」
ウィリアムは言う。
「それは知らないだけなのではないでしょうか。
それに調味料が高いからとか・・・ん?・・・」
武雄は何やら考え込む。
「タケオ、どうしたのじゃ?」
「いえ、私は最初からエルヴィス家にて、お世話になっているので厨房がありましたが・・・
もしかしたら一般の家庭には厨房がないのでしょうか?」
「ほぉ。」
フレデリックは感心した様に頷く。
「フレデリックさんが、反応するという事は。」
「ええ、タケオ様の考察の通りです。
この街の家庭で厨房が備え付けられているのは約半分と考えられています。」
フレデリックの言葉にエルヴィス爺さんも頷く。
「王都でも半数だと思うな。タケオは、どうしてそう思ったのだ?」
アズパール王は聞いてくる。
「いえ、料理は火を起こすので・・・独身男性が料理をするのか?と思っただけです。
それに薪代も意外と高いでしょうし、それなら普段から買って食べれば厨房は要らないかな・・・と。」
「そうですね。独身男性の住まいには基本的に厨房はありません。
なので、一人向けの部屋が多い所には食堂が近くにあります。」
「なるほど。
そうやって自然と独身者が多い地区と、家族が多い地区と別れていくのですね。
そして商店とかも必要な地区に分かれていく・・・街が育っていく過程がわかりました。」
と客間に他の執事がお菓子とお茶を持ってやってくる。
「来ましたね、今日の本題です。」
武雄はクスクス笑う。
「え?タケオさん、本題とは?」
レイラが聞き返してくる。
「今日の生クリームは、このお菓子を作る為に購入してもらったのです。
なので、私的には、このお菓子が皆さんの口に合うか・・・が興味をそそりますね。」
「なに!?夕飯の味は前菜程度だったのか・・・」
「そうなりますね。」
アズパール王の質問に武雄は頷く。
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