第161話 夕飯までの外出。(襟章が出来るまでの待ち時間。)
テイラー店長は3人の襟章をカウンターで作っている。
武雄達は机の傍でお茶を飲みながら待っていた。
「そうだ、テイラー店長。」
「なんですか?キタミザト様。」
「この3人のトレンチコートを例の強化仕様にできますか?」
「できますよ。今着ているのにすればいいのですよね?」
「ええ。それとオーダー中の3着もしてください。」
「わかりました。
キタミザト様のおかげで宝石店が喜んでいましたよ。
最近、購入が多いですね?と言われました。」
「はは、まぁしょうがないでしょう。
これから兵士用のトレンチコートも増産されるでしょうから。
強化を思いついた人達がくると思いますよ?」
「適性があれば良いですけどね。」
「ん?エルヴィス家の面々とこの3人にはあるのですか?」
「ええ、ありますね。発動できるか・・・ではなく適性があるかですから。
適性が無い人は半々でしょうね。
キタミザト様の時も適性を見てから魔力量を計ったではないですか。」
「そうですね。」
武雄は確かにと思いながら頷く。
「タケオ、お主は魔法が使えるのか?」
「はい、初歩のみできますね。
魔力量が少ないので魔法師にはなれませんとテイラー店長のお墨付きをもらいました。」
武雄は苦笑しながら言う。
「・・・キタミザト様、そういう言い方は卑怯ですよ?」
テイラーがジト目で抗議してくる。
「おや?今でもテイラー店長が言ったことは正しいと思いますよ?
私は兵士には向いていませんからね。」
「・・・はぁ・・・よくもまぁそんなことを言いますね。」
「ん?テイラー店長は違うと思うのですか?」
レイラが聞いてくる。
「ええ、確かにキタミザト様は魔力量が少ないです。
ですけど、魔力量が減らないという特性の持ち主なのです。」
「んー・・・それだけならタケオさんの言う通り兵士には向かないでしょう?」
「普通の方であの魔力量なら魔法師を諦めますね。
ですが、キタミザト様は発想が奇抜でして、回数を重ねる方法を考え付きました。
この街で本気のアリスお嬢様と引き分けられるのはキタミザト様だけです。
防御だけで見れば、この国のトップクラスでしょうね。」
「「「え!?」」」
レイラ達3人は驚いて武雄とアリスを見る。
「・・・2人は戦ったのか?」
アズパール王が聞いてくる。
「模擬戦でアリスお嬢様は木剣ですけどね。
いや~魔眼と言うのですか?あれは強力ですね。」
武雄はクスクス笑う。
「むぅ・・・いつか負かしますからね。」
アリスは勝てなかったことが今になって少し悔しいのか拗ねてみせる。
「え?タケオさん、アリスに勝ったのですか?」
レイラが聞いてくる。
「いえ?勝てませんでしたよ。引き分けにしてもらいました。」
「もうタケオ様の攻撃は私には当たりませんからね。」
「ええ、承知していますよ。
だからもうアリスお嬢様と模擬戦はしません。」
「勝ち逃げですか!?」
「いやいや、引き分けでしょう?」
「むぅ・・・いつかしますからね?」
「負ける戦はしたくありませんが?」
「します。」
「はいはい。」
突っかかるアリスを武雄は宥めながら笑顔で対応する。
レイラ達3人は顔を近づけ。
「お爺さまが護衛を付けなかったのは、もしかしてこの2人が居たからでは?」
「レイラもそう思うか?」
「僕だって思いますよ。この国で1番の攻撃力と防御力に守られるなんて護衛なんていらないでしょう?」
3人でアリスと武雄の評価を上げるのだった。
「どうしました?」
武雄はレイラ達3人に質問する。
「ん?どうもしないぞ?
と、さっきから思っていたのだがアレは何だ?」
アズパール王は隣の机にある小銃改1を指す。
「アレですか?私の武器ですね。
小銃と言います。」
「ほぉ、どんななのだ?」
「氷を飛ばす武器ですね。射程は1000mですが・・・まぁ私の腕では、精々100mが限界です。」
「ショウジュウ・・・初めて聞くな。」
アズパール王の言葉にレイラもウィリアムも頷く。
「そうなのですね。
詳しくは夕食後に話しましょうか。」
「わかった。」
と、作業を終えたテイラー店長がやってくる。
「出来上がりました。」
トレンチコートとメガネと襟章を渡す。
レイラ達3人はすぐにトレンチコートに着ける。
「なるほど、金の下地に黒線を入れて金の星にしましたか。」
武雄は感心した様に言う。
「ええ、僕の案が採用されました。」
ウィリアムが言う。
「シンプルだがアリだと思ってな。」
「カッコいいですよね。」
アズパール王とレイラが感想を言う。
「紋章は後日、送付してもらうことにした。
意外と時間がかかるらしいからな。」
「まぁそうでしょうね。」
「と、代金だったな。」
アズパール王は革袋から金貨30枚を出す。
「え・・・こんなにかかりませんが・・・」
テイラー店長は困惑しながら言う。
「退職金込みだ。我から陛下には請求しておくからな。」
「テイラー店長、良かったですね。
と、帰りますか。」
「うむ。」
「では、テイラー店長、また来ます。」
と武雄は席を立ち、皆と共に店を出るのだった。
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