第153話 夕飯までの雑談。(指輪の件。)
皆が食べ終わり、武雄は食器を厨房に戻しに行っている。
フレデリックがお茶を皆に出していた。
「幸せじゃったの。」
エルヴィス爺さんは、幸せそうな顔をしながら感想を言う。
すると残りの人達が頷く。
「両方とも初めて食べたな・・・面白い。
この歳で初めての物が味わえるとは・・・」
アズパール王は嬉しそうに笑顔でうんうん頷く。
「アリス、タケオさんは料理人なので?」
「んー・・・そうとも考えられますし、そうじゃないと言えますが・・・
お爺さま、タケオ様は何個料理を作ってくれましたっけ?」
「うむ、フレンチトーストにマヨネーズにカルボナーラにバターサンドにプリンに・・・
今の所、出たのは6種類かの??」
「全部が新しかったですね。まだまだ発想はお持ちの様ですが。」
エルヴィス爺さんとスミスが答える。
「凄いわね・・・この時点でタケオさんが欲しくなります。」
「そうだね、レイラ。
この料理を毎日出してくれとお願いしたいね。」
「ああ、エルヴィス伯爵に事前に言われていなかったら引き抜きをしそうだった。」
3人は笑顔で言っているがエルヴィス家の面々は冷や汗をかいている。
王家3人がタケオを欲しがっている・・・話が進むと何を言われるのか・・・
「タケオ様・・・何とか乗り切って・・・」アリスは心の中で願うのだった。
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武雄が客間に戻って、席に着いていた。
フレデリックがお茶を入れ、皆の前お茶を変えると、皆から少し後ろに下がる。
「まずは、タケオさん。
美味しかったです。」
「ご満足されましたか?」
「はい、とても!
王都には、こんな料理を出す人はいませんから。」
レイラ達3人は満面の笑みで頷く。
「それは良かったです。」
「さて、来た理由・・・本題なのですが。
指輪の件です・・・その前にタケオさん。」
「はい。」
指輪と言う単語が出て武雄は「あぁ・・・」と思う。
悲観的なイメージが湧いてしまい気落ちする。
「私の事は、何と聞かされていますか?」
「アリスお嬢様からは『王都に嫁いだ姉が居る』としか言われていません。
アランさんとウィリアムさんには、大変申し訳ありませんが、お二人がどのような立場にいらっしゃるのか認識しておりません。
また、アズパール王国の貴族階級がどういう物かを良く知らないので、私自身でも気が付かない内に失礼をしているかもしれません。
その際に直せるものは直しますので言ってください。」
「そうですか。
・・・私達の立場は・・・難しく言ってもあれですので簡単に言いますね。
アズパール王に近い所の身分です。
お爺さま・・・エルヴィス伯爵の上役に当たります。
それと今回の旅の全権は私にありますから、お義父さまやウィリアムの事は気にしなくても構いません。
私的には、今の言葉使いで問題ないと思いますし、もう少し話し方を砕いても構いませんよ?」
「レイラさん、ありがとうござます。
あまり畏まった言い回しが出来ない為、言って頂きありがたいです。」
「お義父さまもウィリアムもそれで良いでしょう?」
「うむ、我もそれで構わぬぞ。」
「僕も大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
武雄は軽く会釈をする
「さて、指輪ですね。
アリス、タケオさん。」
「「はい。」」
武雄とアリスは真剣な面持ちで聞く。
「今回の指輪の件は、陛下のお耳にも届いています。
正直に言えば、私達が聞いてきました。」
「はい。」
武雄は頷く。
「指輪については、王家の紋章付ではありますが・・・ただの指輪なので、アリスの2年前の功績の副賞として下賜した物とすることが決められました。」
「はい、ありがとうございます。」
武雄は軽く会釈をする。
アリスは何も言わずに目をウルウルさせていた。
「そして残り1個の指輪については、スミス。」
「は・・・はい!」
「私達夫婦から来年の寄宿舎への入学祝いとして渡します。
陛下から私達に下賜された物を貴方に寄贈するという体で収まりました。」
「「「「え!?」」」」
エルヴィス家の面々が驚く。
「・・なんと・・・ありがたき幸せです。」
エルヴィス爺さんはそう言う
「あの・・・僕が王家の紋章を?」
「ええ、陛下からは、王家のあずかり知らぬ指輪を発見してくれてありがとうとのことよ。
なので、発見したエルヴィス家の次期当主がするのが良いだろう?と仰っていました。
ただし、来年の寄宿舎では厳しく育てるからな。とも笑顔で仰せでしたね。」
「はい・・・ありがとうございます。
この指輪を所持するに値する者に、僕は成ってみせます。」
スミスはレイラ達3人に礼を言う。
「うむ、我らも楽しみにしておるからな。」
「そうだね。でもあまり指輪に拘っちゃだめだからね。
人として治政者として良い人間になれば良いからね。」
「そうね。スミス、頑張りなさい。」
「はい。」
と、レイラからスミスに指輪が渡される。
「どの指に着けるべきでしょうか?」
スミスは迷う。
「どこでも構いませんよ。
あ、でも、アリスやタケオさんの様な薬指は止めておきなさい?」
レイラの言葉を聞きアリスと武雄以外がクスクス笑う。
「う・・・レイラお姉様・・・」
「レイラさん・・・」
武雄とアリスは顔を赤くして苦笑するしかなかった。
スミスは少し考えてから左の人差し指に指輪をする。
「うむ、おめでとうスミス。」
アズパール王の一言に皆が頷く。
「ありがとうございます。」
スミスは皆に礼を言うのだった。
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