第149-2話 仕立て屋さんに行こう。
仕立て屋に武雄とアリスは入っていった。
「アリスお嬢様、キタミザト様、いらっしゃいませ。」
店長は挨拶をしてくる。
「ええ。」
「お邪魔します。」
とアリスと武雄は返事をする。
「本日はどういった御用で?」
店長は今日の用向きを聞いてくる。
「そうですね。
とりあえずトレンチコートはどうなっていますか?」
「はい。まずは市販用のS・M・L・LLが2着ずつできました。
明日、城門横の兵士詰め所にて兵士の方たちにお披露目と自身のサイズの確認をしてもらいます。」
「なるほど、着々と動いていますね。
こちらとしては新兵から注文すると思いますのでよろしくお願いします。」
「ん?どういうことでしょう?」
「いえ、再来月に3伯爵領の新兵合同訓練がゴドウィン伯爵領であるので良い宣伝になるかと思ったので。
新兵小隊から発注をかける様に命令が出されるはずです。」
「ほぉ、なるほど。」
「上手く宣伝出来れば良いのですが、こればっかりは運ですかね?」
「はい。我々も良い方向に出る様に願いますね。」
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「と、本題なのですが、また新たな服を考えました。」
「え!?もうですか!?」
「はい、問題が?」
「・・・あ・・・ありません。」
店長と聞き耳を立てていた店員が顔を引きつらせる。
「今回は『ダウンジャケットのベスト』を作ろうと思います。」
「どんな服でしょうか?」
「えーっと、店長が着ているベストありますよね。」
「はい、こちらですね。」
店長は、上着を脱いで見せる。
「はい。これを2着重ねて端を縫い合わせます。
で、中に羽毛を詰めるのです。」
「ほぉ、なるほど。」
「縫い目を細かくして中の空気を出さない様にすれば、かなり保温効果があって温かいですよ。」
「なるほど。」
「これを高価格ではなく一般向けに作ってみてはどうかと思いましてね。」
「一般向けですか?」
「ええ。ベストにしたのは生地面積を減らす為と既存の物を使えそうだからですが・・・」
「・・・すぐに試作させましょう。時間は平気でしょうか?」
「私は平気ですが・・・アリスお嬢様はどうですか?」
「私も平気ですよ。あ、昼食はどうしましょう?
何か買ってきましょうか?」
「そうですね・・・店長、机を貸していただけますか?」
「構いません。」
「店長、私たちは少し出て昼食を買ってきます。」
「はい、わかりました。」
武雄とアリスは一旦、店を出て昼食を買いに行くのだった。
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武雄とアリスは前に行ったカフェでサンドイッチをお持ち帰りで購入して仕立て屋に向かっていた。
「タケオ様、わざわざ席を外す必要はなかったのでは?
私が買いにいきましたのに。」
「いえいえ。あの場合は、一旦、退出した方が良いでしょう。」
「そうなのですか?」
「たぶん私達が出て行ってから店内は、またバタバタしていると思いますよ?
とりあえず安い生地でベストを2着仮縫いして、綿か羽毛もどこからか持ってくるでしょうからね。」
「また?・・・あぁトレンチコートの時に見たのですね?」
「ええ、迅速にあそこの店員は動きますよ。面白いくらいに・・・また店じまいしてそうですね。」
武雄はクスクス笑う。
と、仕立て屋に到着。店の扉には「CLOSE」と掲げられている。
「あぁ・・・タケオ様の想像通りに進んでいる・・・」
アリスは半ば呆れながら武雄と共に店内に入るのだった。
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「戻りました。」
武雄が店内に入り、挨拶をする。
「いらっしゃいませ、アリスお嬢様、キタミザト様。」
店長が出迎えてくれる。
「仮縫いは終わりました。」
「相変わらず早いですね。」
武雄は呆れながら言う。
「さて、今回は『ダウンジャケットのベスト』と言いましたが。
ダウンジャケットという羽毛が入った上着のベスト型・・・袖なしを考えました。
『ダウンベスト』としましょうか。」
「はい。」
「これは価格を抑えたいので生地面積・・・裁縫面積を少なくできると思ったからです。」
「なるほど。ちなみに販売想定対象はどこでしょうか?」
「農業から林業、店頭に立っている人達向けですね。
袖を無くしたので作業の邪魔にならずに体を温める服ですね。」
「想定価格はどのくらいを見込んでいるのでしょうか。」
「・・・店長的には、いくつになりそうですか?」
「そうですね・・・例のS・M・L・LL方式で量産して・・・銀1枚と銅10枚でしょうか。」
「なるほど。私は銀1枚を想定しました。」
「う・・・さすがキタミザト様です。」
「いえ、私なんかまだまだですね。」
武雄は苦笑する。
「これには少し街全体に広告を貼ってみてはどうかと思います。」
「と、言いますと?」
「買って欲しいのは農業や林業の男衆です。
では、そんな人達に買わせるにはどうすべきか・・・考えました。」
「はい。」
「『父の日』を作ってみてはどうでしょう?」
「父の日・・・ですか?特別な日に制定するのですか?」
「いえ、国や領主が認める日ではなく、
例えば・・・来月か再来月の半ばの1日をこの店で決めてその日の為に広告を打ちます。
『大切な人に感謝の気持ちを込めて』、『大好きなお父さんに日頃の感謝を』とかまぁ名文句を考えて貰って街中に貼ります。
認知度を上げる為に出来れば飲食店とかにも協力して貰って父の日の為に特別商品を出すとか相乗効果を狙えるかと思うのですよね。」
「確かに街ぐるみで、良い案ですね。」
「街ぐるみで市場を作る必要はありますが、
意外と当たりそうだと思いませんか?」
武雄は苦笑しながら言い、店長は頷くのだった。
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