第146話 10日目 夕食後の報告会。
「さて、皆は今日は何をしておったのじゃ?」
「私とタケオ様は午前中は小銃の練習ですね。
50mと100mで撃ってみましたが・・・100mは当たりませんね。」
「ほぉ、そんなに違うのかの?」
「ええ。私もアリスお嬢様も50m程度なら9割以上の確率で当てられます。
ですが、100mとなると5割前後の命中率でした。」
「・・・著しく悪いの。」
「ええ、ここまで悪いとは思いませんでした。
木を目標にしているのですが、50mと100mでは、同じ木を狙っても1/4程度の大きさになってしまいますから難しいですね。
魔法師の射程が200mと聞きましたので、最低でも100mで対抗できればと思ったのですが、少し考えを変えます。」
「うむ、どうするのじゃ?」
「練習では今後も100m程度での命中率を上げることを目標にしますが。
威力よりも連射性を高めた小銃も作ってみようかと。」
「うむ・・・どうしてじゃ?」
「旅を想定していた時にふと射程が1000mも要らないのでは?と思ったのです。
むしろ200m程度を連発で威嚇しているスキに逃げるのが得策なのでは?と。」
「うむ、そういう考え方もあるの。」
「実際に出来るかわかりませんけどね。」
タケオは苦笑する。
「タケオ様は今改造しているのは使われないのですか?」
アリスが聞いてくる。
「使いますよ。長距離が必要な時は・・・たぶんこの街の防衛とかでしょうから。
城門の上から皆の援護射撃くらいは出来そうですね。」
「平原の戦争では使えないのかの?」
「命中精度が低いですからね・・・動いている物を撃って正確に当たるのか・・・
味方に当てる訳にもいきませんから。
ならば大群で寄せているときに大まかな目標に撃つしかないでしょう。」
「なるほどの。」
「もしくは・・・」
「ん?どうしたのじゃ?」
「アリスお嬢様と前線に立って、お嬢様に周辺で戦ってもらっている間に私が大物を射撃するか・・・
50m程度まで近づければ確実に当てられますね。」
「ふむ・・・邪魔じゃの。」
「ええ。戦の邪魔になりそうです。
魔法師達の攻撃は、この間の演習で体験しましたが、兵たちが敵と当たる前に相手の数を減らすのが目的でしょうか?」
「うむ、一番損害が低いのでな。」
「連発が出来るなら、アリスお嬢様の援護で傍にいられるのでしょうが・・・
単発の高威力では一緒に戦線には立てなさそうです。」
「なるほどの。しかし、基本的に二人を戦線に立たせる気はないからの?」
「ありがとうございます。」
武雄は軽く礼をする。
「で、小銃の練習の後は干物屋に行ってきたのじゃったな?」
「はい。いろいろありましたね。」
アリスが答える。
「基本的には、キノコ類と肉類と魚介類でしたね。
どれも戻せば美味しそうです。」
「うむ。タケオの手にかかれば増々食卓が豊かになりそうじゃの。」
「期待していただきありがたいですが、料理長達にも考えて貰わないといけませんね。」
「そうですね。
シイタケの出汁のおかげでスープ類も低コストで出来ることになりましたので、干物類も多くが使えそうです。」
「うむ、楽しみが増えたの。」
エルヴィス爺さんの言葉にアリスもスミスも頷くのだった。
「明日の夕飯の献立は決まったのかの?」
「はい。何かは明日の夕飯までのお楽しみです。」
「うむ。今から聞くと寝れなさそうだしの。」
あとの二人も頷く。
「そんなに期待しますか?」
「うむ。」
「まぁ、楽しみにしていてください。
と、あのバターホイップのお菓子も好評みたいだった様で。」
「うむ。昨日は匂いが気になったが、あれは逆にバターの風味とレーズンの相性が良かったの。」
「ですね。あのクリームがレーズンと相性が良いとは思いませんでしたよ。」
「稽古前に幸せ感を満喫しました。」
3人はそれぞれ感想を言う。
「フレデリックさんからも『あり』との評価を貰えましたので、あれは急な来客時とかにさっと作るお菓子としておこうかと。バターは定期的に買っておくと料理長が言っていましたので。」
「うむ。あれなら来客も驚いてくれるだろうの。」
「明日も食べたいと要望したようですが?」
「・・・美味しかったのじゃ。」
エルヴィス爺さんは目線を反らしながら言う。
「それは良いのですが、毎日食べてしまうと飽きられるのではないかと思ってヒヤヒヤします。」
「ふふ。ではタケオ、毎日違うお菓子を作るのじゃ!」
「いやいや、そんなに私の中でレパートリーは無いですね。
・・・今の所。」
「なんじゃ、もったいぶって。」
「いや、食材が見当たらない物があるので、私の知っている料理の半分くらいしかできないなぁと。」
「「「は!?」」」
3人が驚く。
「なんです?」
「・・・半分なのですか?」
アリスは聞いてくる。
「私の知っている知識は少ないと思ってしまいますね。」
武雄は苦笑する。
「・・・逆ですよ?」
アリスは呆れながら言う。
「・・・15、6の料理数では、多いとは言えないでしょう?」
「全部新しい料理なのですよね?」
スミスも聞いてくる。
「とりあえず食卓には上がっていませんね。」
「タケオ、毎日できそうかの?」
「どうでしょう。ここの食事も十分美味しいですし。
何より食材を見て思い出す事が多いので、『作れます!』とは言えませんね。
それに15くらいと言っても基礎が同じですからね。」
「どういうことじゃ?」
「つまりですね。
今日のシイタケの出汁を例に出すと、出汁のスープで『卵と玉ねぎのスープ』、『魚の干物をほぐして入れたスープ』、『野菜と肉の細切れのスープ』の3種類。
出汁を使った茶碗蒸しで『今日の海老とシイタケと鶏肉』、『シイタケと豆と貝』の2種類。
出汁を使った煮込み物で『野菜の煮物』『お肉の煮物』『魚の煮物』3種類・・・
これだけで8種類は考えられますね。
ですので、半分といっても基礎を何個か知った上での調理方法を工夫して料理数を増やしているので。
実際にはそんなに多くは考え付いてはいませんね。」
「うむ、聞いただけでも十分な量なのじゃが。」
「ええ。」
エルヴィス爺さんとアリスは呆れるしかなかった。
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