第142話 新たなお菓子を創作しよう。エルヴィス家の午後。
出汁を取る作業も終わり、たらこスパゲッティの下地処理・・・ほぐすだけだが・・・とサラダの確認も終わり皆が先ほどの位置に戻って来る。
「さて、今日の夕飯の仕込みは終わりましたね。
ん?何を持ってきたのですか?」
武雄はスイーツ担当が持ってきた物が気になる。
「はい。キタミザト様から明日は昨日のバター味のホイップクリームがもっとあっさりすると伺ったので、シフォンケーキに合わせられるか確認しようと思いましたので。」
「なるほど、良いですね~。
少し頂いても?」
「どうぞ。」
と武雄は一かけら食べる。
「なるほど・・・結構しっかりとした食感なのですね。
味は少し控えめでしょうか・・・ん?」
「タケオ、どうした?」
「いや・・・このあっさり感は・・・
料理長、スイーツ担当・・・昨日のバターホイップはまだありますか?」
「はい、今持ってきます。」
とスイーツ担当が昨日の残りを持ってくる。
「これをどうするのだ??」
武雄はシフォンケーキを薄く2枚切り出しバターホイップを挟み食べてみる。
「・・・確かにバターの味がでますが・・・あれ?」
料理長始め皆も同じ様に食べてみる。
「相変わらず、バターの風味が強いですね。」
スイーツ担当が言うと皆が頷く。
「・・・でも、不味くはないですよね。」
「そうだな。バターの風味が強いだけで不味いとは感じないな。」
「・・・干しブドウ・・・レーズンはありますか?」
と今度はバターホイップにレーズンを挟んで食べてみる。
「お、これはいけるかな?」
武雄が頷くのを見て、皆もしてみる。
と、何やら感心した様に頷く。
「これはありか?」
料理長の言葉に皆も頷く。
と、そこにお茶の用意をしにフレデリックがやってきた。
「皆さん、どうしました?」
「フレデリックさん、これを食べてみてください。」
と武雄はシフォンケーキにバターホイップを挟み、レーズンを入れて渡す。
フレデリックは一口食べて「ほぉ」と感想を口にする。
「どうですか?」
「ありですね。」
「濃い目のお茶を添えればお茶菓子としても十分出せますか?」
「ええ、問題ないと思います。」
「緊急時の来客には、これもありとしますか。」
「バターを3日に1度は購入しておくとするか。」
「わかりました。
フレデリックさん、客間の人達用です。」
武雄は数個作り、フレデリックに渡す。
「わかりました、持っていきましょう。
感想も聞いておきます。」
「ありがとうございます。」
フレデリックが退出して行くのを皆が見送る。
「さて。今度こそ、明日の夕飯の献立を考えますか。」
と会議を再開するのだった。
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昼食も食べ終わり、エルヴィス爺さんは客間でのんびり中。
スミスは午前の勉強は終わり、ハロルドとの稽古まで時間がある様でこちらも一緒にのんびり中。
アリスは武雄のノートを見ながらマッタリしていた。
武雄の予備のメガネをかけながら読んでいる。
「アリスは何を読んでおるのじゃ?」
エルヴィス爺さんが聞いてくる。
「タケオ様の落書きです。」
「ん?・・・タケオは絵を書いておるのか?」
「いいえ。何でも忘れないうちに知識を書き出すと言って、乱雑に書いていますね。」
「なぬ!?それは重大情報だな。」
エルヴィス爺さんとスミスは驚いたような顔をする。
「ええ、私もタケオ様に家宝ですよと言ったのですが。
こんな物が?と逆に聞かれてしまいました。」
アリスは苦笑する。
「・・・まったく・・・タケオは自分の知識の重要性をわかっておらぬな。」
「同じことをタケオ様に言いました。」
「うむ。で、なんと言っておった?」
「気にもかけておりませんでしたね。」
「・・・何というか、欲がないの。」
「ええ。この本を各所に発表したら大変なことになりそうですが。」
「タケオは、そんなことは全く考えていないだろうの。」
「全く考えていませんね。『エルヴィス家の為に使いますよ~』と軽く言っていましたね。」
「ははは、タケオ様らしいですね。」
スミスが苦笑する。
「で、何が書いてあるのじゃ?」
「んー・・・何やら9.8m/s2とかsinとかcosとか数字と記号がありますね。
何でしょうコレ??」
「・・・わからんの。」
「わかりませんね。」
「難解な問題です・・・」
3人は難しい顔をする。
「他には何が書いてあるのじゃ?」
「料理のレシピや服ですね。あとは・・・」
アリスはページを捲りながら答えるが、あるページで止まり、何も言わないで凝視している。
「ん?どうしたのじゃ??」
「あ!・・・いえ!?・・・特には・・・
コホンッ。あとは政治体制とか武器の考察とかですね。」
「なんだか腑に落ちぬが・・・まぁ良いかの。
その内、武雄自身で内容を精査するじゃろ。」
「ええ。タケオ様は種類ごとにまとめると言っていました。」
「うむ、それを待っておこうかの。」
と、フレデリックがお茶とお菓子を持って客間に入ってくる。
「皆さん、こちらでしたか。」
「うむ。フレデリック、すまんの。」
「いえいえ。タケオ様から昨日のバター味クリームのお菓子が出来たとのことで預かってきました。」
フレデリックは3人の前にお茶と茶菓子を置いていく。
「うむ。では、食べるかの。」
3人は一斉に食べ始めるのだった。
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