第140話 干物屋に寄ってみよう。
武雄とアリスはエルヴィス邸への帰路の途中にある干物屋にいた。
「いろいろありますね。」
小魚、大き目の魚の半身、貝、ジャーキー、キノコ類・・・
武雄は1個ずつ見ていく。
・・・昆布はやっぱりなかった。
昆布があれば出汁が取れて料理の幅も広がるのだろうが・・・
んー・・・煮干しからの出汁か・・・
武雄は昔、母親がしていた出汁の取り方を思い出そうとする。
・・・頭とはらわたを取って・・・水に浸しておいてから・・・5~10分煮るのだったか?
そう言えば、干しシイタケからも出汁が取れるようなことも言っていたなぁ・・・
確か水に長時間浸して出汁を取る・・・だったか・・・
今日の打ち合わせの時に作ってみようと思い少し多めに購入を決定。
と、アリスが近寄ってくる。
「タケオ様、買う物を決められたのですか?」
「ええ、出汁が取れそうな物を選んでいました。」
「・・・ダシ・・・とは?」
「簡単に言うとスープの素ですね。」
「スープの素・・・肉とか野菜で作るのですよね?」
「確かに、そういう作り方もありますね。
私は干物から作る地方でしたからできるかなぁ?と思って。」
「どんな味なのですか?」
「んー・・・肉を使わないのでアッサリしていますよ。
とりあえず、小魚とキノコで2種類作ってみようかと。
あと玉ねぎと卵を使って味の違いがあるのか試してみるのも面白いと思いました。
アリスお嬢様。食べてくれますよね?」
「はい!当然です。」
アリスは顔をキラキラさせながら頷くのだった。
「アリスお嬢様が食べてみたい物はありましたか?」
「そうですね・・・ジャーキーは頻繁に料理にでますよね。」
「干し肉は、保存に最適ですしね。
ハムやソーセージも燻製ですから保存食の1つですね。
ただ・・・塩を割と大量に使っているのでしたか?」
「ええ、少し辛いのですよね。」
「ジャーキーはスープの具材に丁度良さそうですが、他の用途は酒のツマミでしょうか。」
「・・・タケオ様、これはなんでしょうか?」
二人で棚を幾つか見ているとアリスが聞いてくる。
「海老ですね。」
桜海老を2回り大きくした干物があった。
というか・・・水に浸けて戻るのか?これ?
と武雄が悩んでいる横で。
「エビ・・・これがエビ・・・
食べたことないのですが・・・どういう物なのでしょう?」
アリスも違う意味で悩んでいる。
「え?食べたことがないのですか?」
「はい。食事にも出ませんから。」
「んー・・・正直、海老の干物の調理方法が思い付かないのですよね。
これは水で戻る物なのか・・・自信がないですね。」
「タケオ様は小魚の干物を買われる予定なのですよね?
小魚はどうですか?柔らかくならないのでしょうか?」
「多少は柔らかくなるとは思いますが・・・どうでしょう?
それに小魚は出汁を取った後は・・・レモン汁に付けて大根サラダと和えようかと思っていました。」
「海老も柔らかくなるのでは?」
「んー・・・甲殻類ですし・・・難しいかと。」
「甲殻類?」
「カニと同じ仲間です。」
「なるほど。」
「これも挑戦してみましょうか。
上手く戻せたら料理に使えそうですし、料理長に知恵を貸して貰いましょう。」
「わかりました。」
会計をしようとした時に武雄は、ふと奥の棚に置かれている物に気が付く。
気が付いたら聞かないわけにはいかない。
「あの。」
「なんでしょう?」
「あの棚の物は・・・タラの卵巣ですか?」
「ええ。塩漬けにされた物を焼いて日持ちさせた物です。」
「獲れてから何日経っていますか?」
「3日ですね。」
「売っていただけますか?」
「構いませんよ。」
と追加で焼きたらこを購入。
「アリスお嬢様。帰りましょうか。
今日の夕飯はパスタとスープですね。」
「どんな料理が出るのでしょう???」
アリスはワクワク感を抑えきれない様で期待の眼差しを向けてくる。
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武雄とアリスがエルヴィス邸の玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ。アリスお嬢様。タケオ様。」
「ただいま。フレデリック。」
「フレデリックさん。お疲れ様です。戻りました。」
「食材を大量に買ってこられたのですね。」
フレデリックは興味深そうに聞いてくる。
「スープの素用とパスタ用と海老です。」
「海老ですか?」
フレデリックが不思議そうに聞いてくる。
「食べると体調を悪くする人がいますか?」
「いえ、それは平気ですが・・・
ただ、海老は高価な割にレパートリーがないので、エルヴィス家では出していないのです。」
「ええ。先ほど、アリスお嬢様が食べたことないと言っていましたので、何か作れるかな?と。」
「・・・食べたことがない?」
フレデリックは驚いた顔をする。
「え?ええ。」
「フレデリック、私の記憶では食べたことがないのですが。違うのですか?」
「いえ、アリスお嬢様は小さい時に食べられたことがあります・・・」
「覚えていませんね。」
「・・・そうですか。覚えておりませんか。」
「とりあえず、どうやったら美味しく出来るのか挑戦してみますね。」
「はい。私も楽しみにしております。
もうすぐ昼ですので、少々客間にてお待ちください。」
「わかりました。」
「はい。」
と二人は客間に向かうのだった。
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