第137話 2日後の夕飯を作ろう。夕食後の報告会。
武雄は客間にパンと小さな容器を持って帰ってきた。
「さて、試食とプリンは堪能しましたか?」
武雄は席に着くなり聞いてくる。
フレデリックがお茶を入れ、武雄の前に置き、皆から少し後ろに下がる。
「うむ、満足じゃ。」
「はい。タケオ様、ありがとうございました。」
スミスが感謝を述べる。
「幸せでした。」
アリスは顔を蕩けさせながら言う。
皆の様子を見ながら武雄も満足げに頷く。
「さて、今日の新しい食材はバターと生クリームとホイップクリームです。」
「いきなり3つも来たの。」
「3つなのですが・・・実際は1つなのです。」
「どういう事かの?」
「これらは牛乳の搾りたての状態からの派生食材なのです。」
「ほぉ・・・わからん。」
「順に言っていきますね。
まず、牛乳を搾った物を放置しておくと上に油分が溜まりだします。
これを生クリームと言い、先ほどのカルボナーラに使います。」
「うむ。」
「この生クリームに4%くらいの塩を混ぜて良く振り、固まった物がバターになります。
とコレです。」
皆の前にバターとパンを置く。
「食べて貰って構いませんよ。」
皆は手に取り食べてみる。
一様に驚いた顔をする。
「で、この生クリームに砂糖と塩を加えてふわふわにしたのが先ほどのホイップクリームになります。」
「うむ、なるほどの。」
「・・・なのですが。」
武雄は難し顔をする。
「ん?どうしたのじゃ?タケオ?」
「今回は時間もなく生クリームが入手できなかった為、バターから生クリームもどきを作りました。」
「なるほど・・・順番が逆なのじゃな。」
「はい。バターと牛乳を合わせて、生クリーム状態にしたのですが、どうしてもバターになった際の臭みが取れなかったのです。」
「そうだったのですか。」
スミスは答える。
「生クリーム状態から作ったらここまで匂いが出ないのですけどね・・・
純粋に牛乳と砂糖でスッキリとした甘さが出てフワッフワッの口に入れたら蕩ける感じを楽しんでほしかったのですが・・・」
武雄は少し難しい顔をする。
「・・・タケオ様、食べたいです。」
アリスは涙目で聞いてくる。
「アリスお嬢様、そんなに切なそうな顔をしないでください。
私も作ってあげたいのですが・・・この生クリームを取ると言う作業は時間が勝負なのです。
簡単に言うと搾りたての牛乳を放置しておくといつの間にか油分が上に溜まってバター状態になりますが、
生クリームは、この前段階、固まり始める前のを使うのです・・・
フレデリックさん。この近辺で搾りたて牛乳を大量に売ってくれそうな知り合いはいますか?」
「そうですね・・・
2日頂ければ用意できるとは思いますが。」
「エルヴィスさん、どうしましょう?」
「うむ、そうじゃの。
タケオ、ついでじゃから、生クリームを使った夕飯を考えてもらえるかの?」
「ん?どういうことでしょう?」
「うむ。2日後の夕飯とその後のティータイム用の菓子は生クリームを使った物にしてほしい。
そうすれば、大量の牛乳を購入できるじゃろう。」
「わかりました。料理長と一緒に夕飯とデザートを考えます。」
「うむ、タケオに任せるのじゃ。」
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「さて。午前中の事は聞いたが、午後の報告を聞こうかの。」
「わかりました。
小銃の最初の改造が終わりました。
小銃改1と通称しますね。
この小銃改1は前に話した際の『対物ライフル』の方向にいっています。」
「うむ、凄いのが出来たのじゃな?」
「割とですけどもね。
仕様的には1200mくらいの射程があります。
1200m付近になると弾丸が爆発してしまったので、それ以上の距離は狙えません。」
「うむ。」
「威力は・・・アリスお嬢様、強かったですよね?」
「ええ。50m先の木が深く抉られていましたからね。
テイラー店長曰く、『ファイア』に魔力を70くらいかけた物と同等かもと。
あと魔力使用量が150なので、普通の魔法師からすれば無駄遣いとの評価を貰っていましたね。」
「うむ、それは消費量に見合わないの。」
「ええ。威力もそれなりにあるので、とりあえず、私専用にして市販用には改造しないように頼みました。」
「うむ、それがよかろう。
必要魔法量も高いしの。タケオ以外には使えなさそうだがの。」
「テイラー店長にも言われましたよ。」
武雄は苦笑する。
「あとは、タケオ様が指輪を新調して連続回数を増やしたのと、私も指輪を買いました。」
アリスは、そう言いながらニヤケる。
「タケオが発動できる回数はどのくらいになったのかの?」
「35回くらいになりましたね。
これでアリスお嬢様の攻撃は対処できそうです。」
「うむ、頼もしいの。」
「お爺さま、どういう意味でしょう?」
「・・・別に・・・なにも・・・」
エルヴィス爺さんは目線を逸らせながら言う。
アリスはじーっとエルヴィス爺さんを見ていたが、ため息をつく。
エルヴィス爺さんは素知らぬ顔を決め込む。
「お姉様の指輪には何か効果が入っているのですか?」
「ええ。タケオ様の発案で回復を任意でするようにしました。」
「・・・お姉様がどんどん無敵になっていきます。」
スミスがうな垂れる。
「私は好戦的ではないですし、最強の兵士になるつもりもありませんよ。」
アリスはぷくーっと頬を膨らませて抗議する。
「はは、客観的に見るとそうなのでしょうが・・・。
まぁ、アリスお嬢様の弱点の一つを解消しただけです。
これで、私もアリスお嬢様も重傷以上の怪我を負わなければ回復出来る様になりました。」
「うむ。という事は・・・普通に旅をするぐらいなら問題ないの。」
「ええ、旅の為に考えましたからね。」
「これでどこへでも行けますね。」
アリスは顔をキラキラさせながら言うのだった。
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