第12話 質問に対しての回答。誠実にしなくては。
現在進行形で北見里 武雄は困っていた。
フレッド・ジェリー・ゴドウィンという男から『お前は何者だ?』と言われたからだ。
チラっとエルヴィス爺さんをみる。・・・ニヤついていた。
・・・楽しそうだな!おい!
出たとこ勝負をするしかないのかと少し悲しくなった。
「ご質問に対してお答えする前に、いくつか確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
「かまわぬ。」
「初めに、何とお呼びすれば?」
「ふむ・・・ゴドウィンで結構だ。」
「では、ゴドウィンさんと呼んで構いませんか?」
「・・・かまわぬ。」
「ありがとうございます。
では次に、エルヴィスさんとゴドウィンさんは対等の立場なのでしょうか?」
「・・・対外的には対等となるな。」
「わかりました。
・・・ゴドウィンさん。申し訳ありませんが、私からは現状ではお話しできません。
これについては、ゴドウィンさんを蔑ろにする意図はありません。」
「・・・どういうことか?」
少し声質が低くなっています。
・・・とっても怖いんですけど・・・
「実は、私はまだエルヴィスさんからご自身の身の上をお聞きしておりません。
また、私の身の上も話しておりません。
『その話は帰ってから』と馬車を待っている時に約束をしたきりになっております。
先の約束が履行されていないのに、エルヴィスさんよりも先にゴドウィンさんに、
私の身の上をお話しするのは、順序が違うと考えているからです。」
「なるほど、確かにな。でも、一緒に聞いているのであれば問題ないのではないか?」
「申し訳ありませんが、それを決めるのは私ではありません。」
と言うとゴドウィンは腕を組み、しばし考える。
「・・・親父殿。」
「フレッドすまんな。今回は遠慮してくれるかの?」
「はぁ・・・わかった。
タケオと申したな。意地悪な質問をしてすまなかった。」
「いえ、こちらこそ、満足のいくご返答が出来ず申し訳ありません。」
と武雄は軽く会釈をする。
「うむ。では、俺の部下を呼んでくれ。帰宅する。」
「畏まりました。」
とフレデリックが退出して、すぐにノックがされる。
入ってきたのは、武雄達を見つけ馬車を護衛してくれた兵士だった。
武雄が軽く会釈すると、兵士は目礼を返した。
「主、お帰りと聞きましたが。」
「ああ、帰ることにする。
親父殿、タケオ、また会おう。
タケオは、今度うちの屋敷にも来て説明してくれるのだろう?お茶ぐらい出すぞ?」
「わかりました。お茶菓子を持参させていただきます。」
「ふ・・・言いよるわ。楽しみに待っている。」
と部屋を出て行った。
「フレデリック、見送りを。」
「畏まりました。」
とフレデリックも退出していく。
・・・客室にはタケオとエルヴィス爺さんが残った。
「上手く切り返したの。」
「・・・まったく、生きた心地がしませんでした。
足がガクガクです。
上手く行きましたが、下手したら斬られるかもしれない状況での話し合いはご免被ります。」
「結果だけ見れば上出来じゃろ?」
「結果だけなら・・・ね。」
と、足だけでなく体も震えていることを武雄は今になって認識した。
「で、身の上話はどうします?このままします?」
「いや、わしの家族とフレデリックも立ち会わせたい。」
「わかりました。」
とフレデリックが来るのを待つのだった。
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エルヴィス伯爵邸の玄関にて
ゴドウィン辺境伯爵とスタンリー辺境軍騎士団長は馬にまたがる。
「ゴドウィン様、スタンリー殿、本日はありがとうございました。」
「かまわぬ。それより、タケオと言ったか。面白そうな者を親父殿は見つけたな。」
「面白いかどうかはまだ何とも言えませんね。」
「もし親父殿がいらないと言うなら、俺がもらうと言っておいてくれ。」
「畏まりました。」
「では、失礼する。」
と屋敷をあとにするのだった。
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