第134話 魔法具商店での雑談。
「テイラー店長、アナタは王家専属魔法師に師事していたと言いましたよね。」
「ええ。」
「普通に考えれば、王家専属魔法師・・・側近の魔法師を師と弟子の2人しか雇わないということはあり得ません。
必ず警備の為に複数人の部署として存在しているはずです。」
「そうです。私がいた当時は10名で王の警備も兼ねていました。」
「では、その集団は平時に何をしているのですか?」
「え?魔法の修行と警備の効率性のアップや新魔法の検討で・・・あぁ・・・」
テイラーはガックリとうな垂れる。
「え?タケオ様、どういうことですか?」
「ん?簡単なのです。王家専属魔法師集団は平時は暇をしていて、魔法の研究をしているらしいのですが。」
「はい。」
「彼らは王家の者が外出する際、もしくは式典の際に警備もしているのですって。」
「ええ。」
「守る方の考えとしては、どんな攻撃があったとしても要人を守れるように警備検討しますよね?」
「普通そうですね。」
「どうやって効率よく守るか・・・もっと言えば、少ない人数で多数を守れる方法を検討するわけです。」
「当たり前です。」
「そう、当たり前です。
では、先ほど私が言った魔法攻撃があった場合、自動的に防御する方法を検討していないと思います?
私程度でも考えられる物を王家専属・・・魔法師のトップ集団が考え付かないわけがないのです。」
「んー・・・あ、なるほど。実施までいかなくても検討をしているはずですね。」
「ええ。で、テイラー店長は、そこに所属していた時に、この手の資料すら見たことがないと言います。
たかだか10名で・・・城もしくは1フロアを守るのです。
絶対に何かしら一人もしくは少数でも守れる様な検討をしていてもいいはずなのに、検討資料すらない。
なので、この手の資料は誰かが隠蔽していると考えるのが妥当です。」
「なるほどぉ。」
アリスは頷きながらお茶を口にする。
「確かに王城内の王家専属魔法師部隊専用の部屋の一角に専属魔法師のみしか入れない小部屋があります。」
「そこでしょうね。
そして、その技術はもう確立されているのでしょうね。
秘匿しているならば、公表すれば弱点がわかるくらいに洗練されている可能性があります。」
「かもしれません。」
テイラーは難しい顔をしながら頷く。
「ふふ、おもしろいですね。魔法師の世界も。」
「ん?呆れないのですか?」
武雄の言葉にテイラーが質問をする。
「なぜ?秘匿技術なんて魔法だけではないでしょう?
それこそ、ラルフ店長の仕立て屋にだって、いい服の作り方のノウハウがどこかにあるでしょう。
程度の差はあってもどこにでもありふれた話ですよ。
ましてや王城、王を守る為の技術は極々一部の人しか知らない方が良いでしょう。
他国のスパイが居るかもしれませんしね。」
武雄は苦笑する。
「まぁ、そんな私の考えは良いのですが。
そうですか自動防御は可能ですか・・・」
武雄は軽く天井に目線を巡らせたかと思うとニヤッと笑う。
「タケオ様、怖い笑い方をしていますよ。」
アリスが冷静に突っ込む。
「え?そうですか?
自動防御用の宝石が10個以上着いた杖を持っている姿を想像したら可笑しくて。」
と武雄は苦笑する。
「そうですか?」
「ええ、似合わないなぁと。」
武雄の言葉にアリスも想像した様ですぐ後にクスクス笑う。
・・
・
「アリスお嬢様、指輪は決まりましたか?」
武雄が聞くと。
「ええ、候補を3つまで絞りました。」
と3つ並べる。
一つ目は宝石と細いリングの組み合わせ。
二つ目は2個のリングを草模様で繋ぎ、中央に宝石を配置した組み合わせ。
三つ目は幅の広いリングだが花柄の意匠が凝っていて咲いている花の中に宝石を配置した組み合わせ。
「タケオ様、どれが良いと思いますか?」
武雄はドキッとする・・・こういう選択肢は危険なのでは・・?
「ち・・・ちなみにアリスお嬢様は、どの指に付けようとお考えで?」
「左手の小指ですね。」
アリスは左手を見せる。
「テイラー店長、宝石は何を使うのですか?」
「えーっと、うちにある中だと・・・回復ならアメジストに加工を施しますね。紫ですよ。」
「んー・・・」
武雄は悩む・・・とっても悩む・・・
「・・・タケオ様、そこまで悩まなくても構いませんよ?」
アリスは苦笑する。
「・・・私は二つ目が良いかと思うのですが・・・」
武雄は恐る恐る言う。
「どうしてでしょう?」
・・・「やっぱり理由は言うのね」・・・武雄は心の中でガックリする。
「直感というのと、紫色なので、花に見立てたら良いのでは・・・と。」
「なるほどそうとも言えますね。」
アリスは頷きながら考える。
・・
・
「では、二つ目にしましょう。」
アリスは決めた様で指輪を持ち上げる。
武雄はホッと胸を撫でおろすのだった。
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