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第130話 スミスの寄り道。

「お茶をお持ちしました。」

スミスが座っている目の前の机にお茶を持ってくる。

ついでに自分の分も机に置き、スミスの対面に座る。

「ありがとうございます。」

「いえいえ。粗茶ですけど、マッタリとしていってください。」

ここは魔法具商店 向かいに座っているのはテイラー店長だった。

「ところで、なんで僕を呼び止めたのですか?」

「んー、こんなことを言うと失礼かもしれませんが。

 とても良い顔をされていたので。」

「そうですか?僕は変わっていないつもりなのですが?」

「ふふ、そうですか。

 私的には昨日と違い今日は上を向いてスッキリした顔をされている様に見えましたので。

 良い事があったのだろうと思ってお茶に誘ったまでです。」

「そうですか。」

スミスはお茶を口にしながら店内を見回す。

と違う机に武雄の小銃を見つける。

「あの小銃はタケオ様のですか?」

「はい。」

「確か・・・高威力の銃を目指すのでしたか?」

「ん?キタミザト様はそんなことを言っていましたか?」

「はい。今は弾丸に頼らない銃が出来れば良いが、

 タケオ様の思惑通りに全て良い方向に行けば、高威力銃が出来ると言っておりました。」

「ふむ・・・そうですか。」

テイラーは少し腕を組んで考えると。

「なるほど。キタミザト様の『触れている間は、ずっと強化をする』との仕様はそれも見越してということですかね。」

「どういうことですか?」

スミスは質問をする。

「いえ、この小銃は先ほども言いましたが、キタミザト様からの注文で『触れている間は、ずっと強化をする』という仕様が入っています。ご本人からは『当てそこなった相手の剣を受ける為』と言われたのですが・・・

 むしろ、この改造で発生する衝撃に耐える様に小銃の強度を増す為かもしれません。」

「へぇ・・・わかりません。」

「はは、私とキタミザト様の趣味の話ですね。

 あ、申し訳ありませんが、キタミザト様にご伝言をよろしいでしょうか。」

「構いません。」

「はい。では、『小銃の改造が今日の昼過ぎに終わりますので試射はいつでもできます』とお伝えください。」

「お伝えします。」


「テイラー店長は」

「テイラーで結構ですよ。」

「ありがとうございます。テイラーは、この街の出身ではないのですか?」

「ええ、生まれは違う村ですね。王都にも数年居ましたが・・・どうしました?」

「いえ、僕が小さい時は、この店はなかったと思って。」

スミスの言葉を聞いてテイラーは苦笑する。「今でも小さいですよ?」

「この店を構えたのは3年くらい前でしょうか。」

「そうですか・・・つかぬことを聞きますが、王都とは、どういう所ですか?」

「王都に興味が?」

「来年、寄宿舎に入るので・・・どんな所なのか知りたいのです。」

「なるほど、そうですね・・・何でもありますね。」

「何でもあるのですか?」

「はい。街は物、人に溢れています。

 陛下が居ますから当然ですが、全ての地域から集まってきます。」

「そうなのですか・・・あまり欲しい物が無いので・・・魅力がないです。」

「はは、スミス様は何に興味が?」

「んー・・・わかりません。

 強いて挙げるならタケオ様に匹敵する知識が欲しいです。」

「無理でしょうね。」

「即答しますね・・・難しいのですか?」

「そうですね・・・キタミザト様の知識の源は量ではないですから。」

「量ではない?」

「はい。たぶん、知識量と言う点ではキタミザト様はスミス様の下をいきますよ。」

「そうですか?」

「・・・キタミザト様と話していると思うのですが、キタミザト様の凄い所は発想にあります。

 この発想は知識を蓄えた者では、その知識により考えが凝り固まってしまって普通は発揮できません。

 私なんか・・・この小銃を見ても改造しようとは思いませんから。」

「そうなのですか?」

「ええ、知識と経験は似ているのです。

 例えば・・・この小銃は『魔法師でなくても魔法師の真似事が出来る様に』との仕様で作られています。」

「はい。」

「この考え自体は昔からあります。

 ですが、知識と経験を重ねるごとにそれは出来ないと思ってしまうのです。」

「なぜですか?」

「魔法師組合という組織を知れば知るほど世には出せないとわかるからです。

 そして案外、手立てが思いつかないのです。

 魔法と言う便利な方法があるのに、それを否定してまで兵器を作ることは無駄としてしまいます。」

「なるほど。」

「キタミザト様も言っていましたが、この小銃の開発者も常識がないです。

 逆に考えればキタミザト様と同レベルの発想を持っています。

 しかし、キタミザト様は、この開発者と違う所があります。」

「なんでしょう。」

「慎重なのです。自分の発想から来る知識を世に広める気があまりないのです。」

「確かにタケオ様は自分の知識はエルヴィス家の為に使うと言っていましたね。」

「普通、知識量が増えていくとそれを誇示したくなります。

 自分はこんなに物を知っている、考え付くとね。」

「そういう物なのですか?」

「ええ。なので皆、王都を目指すのです。

 あそこは人、物、金、知識・・・すべてがありますから。」

「そうですか・・・プライドの高い人が多いのですか?」

「ええ、プライドだけは高い人達ばかりです。」

テイラーは苦笑する。

「行きたくなくなったのですが?」

スミスも苦笑するしかなかった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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