第127話 8日目 夕食後の報告会。(大演習の感想。)と就寝前の雑談。
「ちょっと熱が入ってしまいましたね。
まぁ、結局は、スミス坊ちゃんは、同格の者に負けなければ良いのです。」
「はい、わかりました。」
「さて、お爺さま。模擬戦は以上ですが、
何かあります?」
アリスが促す。
「うむ、わしとしては、お互いに知力を使っていたし、失敗や負けの感覚も経験した様なので安心したの。
二人ともこれを教訓に気を引き締めるのじゃぞ?」
「「はい。」」
エルヴィス爺さんの言葉に武雄とアリスが答える。
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「では、あとは大演習ですが。」
「うむ、タケオ、魔法の攻撃を受けてどう思ったのじゃ?」
「・・・防げて良かったなぁ、と。」
「ちなみにどうやって防いだのじゃ?」
「『シールド』を縦3列5枚ずつ配置しましたが?」
「また、おかしな方法を取ったの。」
「テイラー店長が『魔法はイメージで』と言うので、出来るかなぁと思って・・・」
「出来たから良かったものの出来なかったらどうしたのじゃ?」
「コートに全力で『プロテス』をかけて強化して、アリスお嬢様を身を挺して守ろうかと。
最悪、アリスお嬢様が無傷なら何とかなるでしょう?」
「え!?タケオ様、そんな賭けをしていたのですか?」
「私的には賭けと言うほど出来る確率は低いとは思いませんでしたよ?
だって、『シールド』を発動している時点で、そこにあるのですから、あとはタダ並べるだけでしょう?」
「まぁ・・・そうじゃがの。
そんな発想をした者は見たことないの。」
「そういうものなのですか?」
「通常、あの手の攻撃を防御する場合は、数人の魔法師が全体を守る様に『シールド』を張ってするのじゃが・・・
それを一人でするとは・・・なんなのじゃ?」
「『なんなの?』と言われましても・・・初級魔法しか使えないと言われていますが?
それも上限の魔力量が25で、ほぼ同時に使える魔法は15が限度ですね。」
「『ほぼ』とはなんじゃ?」
「正確に同時ではないのです。若干の差があるみたいです。」
「どのくらいの差じゃの?」
「『シールド』、『ケア』なら瞬間的に・・・『ファイア』なら3秒間で15個ですね。」
「うむ・・・わからんの。」
「はい、どうしてだかわかりませんが・・・その程度です。」
「これで込められる魔力量が増えたら脅威ですね。」
アリスはクスクス笑いながら言う。
「まぁ、総魔力量は徐々に増えていくのだろうの。」
「増えて行けば良いですね。」
武雄は「現状のままでも十分ですよ」と思いながら返答をするのだった。
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「さて寝るかの」とエルヴィス爺さんの言葉と共に皆が客間を出ていき、武雄とアリスも寝室に戻って来ている。
武雄は、お風呂の準備をし、アリスを入れて今は、アリスの髪を軽く乾かしている。
「タケオ様、明日はどうしますか?」
「そうですね~・・・スミス坊ちゃんの加勢にいきますかね。」
「ですよね!」
「そういうアリスお嬢様はどうしますか?」
「私はタケオ様に付いていきますよ。」
「・・・アリスお嬢様から見て、スミス坊ちゃんとハロルドの対戦はどう思いますか?」
「そうですね・・・圧倒的にハロルド優勢でしょうね。
それにハロルドはスミスの指南役ですし。」
「そうだったのですね。」
「それにしてもスミスに言い聞かせていただきありがたかったです。」
「あぁ、
『勝たなくて良い』ですか?」
「はい。昨日、タケオ様から言われた通りなら目が覚めたかもしれませんので。」
「とても良い顔をしていましたよ?」
「はい、姉としてスミスの成長は嬉しく思います。
が、少し寂しい気もします。」
「あら?急な成長で離れていく感じがしますか?」
「私の後ろに、いつもいましたから・・・」
と、アリスは少し遠くを見る目をする。
武雄はそんな言葉を聞き、何も言わずにこやかにアリスの髪を乾かすのだった。
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とある森の中、ローブを深くかぶった二人の男が焚き火を囲んで座っている。
「・・・指令がきた。」
「この時期にか?・・・予定では、あと半年後に決行だったはずだが・・・」
「・・・内容は・・・動けと。」
「今回は、ゴドウィン伯爵邸を目指すのだったな。」
「・・・違う。2年前と一緒・・・エルヴィス邸を目指す。」
「あそこは前回やったのだが・・・まぁ命令なら仕方ないか。
注文は?」
「・・・3日後に・・・襲撃。」
「・・・準備時間が少なすぎだな・・・他には?」
「・・・大物は出すな。」
「カスで良いのか・・・という事は威嚇か・・・
本当に2年前と一緒だな・・・また遠隔から操作できるのにするか・・・
・・・数は600くらい用意できるが?」
「・・・前回は・・・ゴブリン200・・・簡単に撃退された。
・・・今回は少し多く・・・エルヴィス家を滅ぼさない程度で。」
「本当に威嚇かよ・・・はぁ・・・カスがいくら死のうが別に痛くはないが・・・
・・・確かエルヴィス邸の街の常駐兵力は600だったか?」
「・・・多く見過ぎ・・・550くらい。」
「大して変わらんな。
じゃあ、良い感じで口減らしになる様にするか・・・」
二人は焚き火を消し、闇に紛れていった。
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