第11話 待ち人は来た。部屋の中は汚部屋だった。
「待たせたのぉ。」
エルヴィス爺さんがヒョコヒョコ歩いてくる。
服装はやはり中世の物だ。
ふと、武雄は思うことがあったので、エルヴィス爺さんに聞いてみる。
「ところで、エルヴィスさん宛にお客様が来ているのに私も入って良いのでしょうか?」
「今から会う者も感謝の言葉をかけたいだろうからの。
タケオは気にしなくて良い。わしが許可しよう。」
「・・・はぁ。」
と諦めモードで返事をする。
「では、入室しますよ?」
とフレデリックが客間のドアをノックし、中から『かまわぬ。』と許可が下りるのを確認すると扉を開ける。
そこには一面食べ物の食い散らかしが・・・
汚っ!
えぇ・・・なんでしょう?この汚さは。
一人暮らしをしたことがある男なら誰しもが通る汚部屋を、さらに散らかしたゴミ部屋の様相だ。
・・・こんな部屋、入りたくありません。
・・・入った瞬間、さっきまで食べ物だった物を踏みそうです。
「ゴドウィン様、主が戻りました。また、お客様もいらっしゃいました。」
フレデリックが紹介し、エルヴィス爺さんと武雄は入室する。
「親父殿、生きていてなによりだ。」
「・・・フレッド、相変わらず食い方が汚いのぉ。
タケオ、この男がゴドウィンという。
フレッド、こちらはタケオ。わしを救ってくれた男じゃ。」
「フレッド・ジェリー・ゴドウィンと言う。
この度は、エルヴィス伯爵を救って頂き感謝する。」
武雄は「え?」と思う。伯爵?????
「私は北見里 武雄と申します。
特に何かをしたわけでもないのですが、エルヴィスさんから同伴をと誘われましたので参りました。」
すんなりと挨拶ができた。社会人経験も役に立つものだと武雄は思った。
「うむ。で、フレッド。何しに来たのじゃ?」
「再来月くらいに3辺境軍合同新兵訓練をしたいのだが、親父殿の意見を聞きたくてな。」
「なんじゃ、そんな事か。わしは問題ないと思う。ロバートと話し合い、日程を決めて構わぬよ。」
と、そこでフレデリックが前に出て、
「テンプル様より書簡が来ております。」
と、エルヴィスさんに書簡を渡す。
「うむ・・・ん?・・・」
と、書簡を受け取り読もうとしてキョロキョロと何やら探す。
目当ての物を見つけた様で、
「タケオ。すまんが、そのメガネを取ってくれんかの?」
と、タケオの前に置いてあるメガネを指す。
武雄はメガネを持ち、渡そうとしたが少しレンズが汚れている事に気付いた。
なのでハンカチで軽く拭き、他に汚れがないか確めた。
!!!?
武雄は驚愕の表情をしてしまう。
「タケオ、どうしたのじゃ?」
「あ、いえ。特に何も・・・」
と、エルヴィス爺さんにメガネを渡す。
エルヴィス爺さんは、そんな武雄を不思議に思いながらもメガネを受け取り書簡を読む。
「ロバートもお主と同じ事を聞いてきておるぞ。
秋の収穫が終わったので、再来月でどうですか?とな。」
「わかった。では、伯爵と相談して日程を決めさせてもらう。」
「うむ、それで良い。
用事も終わったし、帰るかの?」
「おいおい。俺をこんなに心配させといて、つれないな・・・
まぁ、確かに親父殿に話はもうないな。」
と武雄の方に顔を向けて。
「お前は何者だ?」
・・・至極真っ当なご質問ですね。
さて、どう答えれば・・・と思案する。
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