第110話 隠し通路発見。と家具が来た。
武雄とアリスが馬を厩に戻し、エルヴィス邸の玄関を入るとフレデリックが丁度いた。
「おかえりなさいませ、アリスお嬢様、タケオ様。」
「ただいま、フレデリック。」
「フレデリックさん、お疲れ様です。戻りました。」
「先ほど、家具屋から連絡があり、もう少ししたら家具を持ってくるとのことです。
今は、お二人の部屋からベッドを移動中です。」
「はい。」
「お手数かけます。」
アリスは頷き、武雄は礼をする。
「ですので、部屋へは戻らず家具が到着するまで客間にてお待ち下さい。」
「わかりました。」
アリスは了解をする。しかし、武雄は。
「ベッドがない状態を見てみたいのですが平気ですか?」
「構いませんよ。ベッドは今、次期当主部屋の近くまで来ていますので、寝室への入室は問題ありません。」
「わかりました。」
フレデリックは二人を残し、ベッドの移動に戻っていった。
「タケオ様は見に行かれるので?」
「はい。この間の引っ越しの際は戻ってきたら終わっていたので、大きい物がない広さを感じようかと。」
と武雄は苦笑する。
「わかりました。私は客間にいます。」
「はい、いってきます。」
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武雄は寝室に戻り、中を見て一言。
「広っ!」
あのベッドが、どれだけの面積を占領していたか・・・
しばしの間、武雄はボーっと眺めながら広い寝室を満喫していたが。
「そういえば、昔何かの本にあったなぁ」
と武雄は何気なくベッドがあった場所の壁を軽く叩きながら歩く。
「コンッ」・・・「コンッ」・・・「・・・」・・・「コンッ」・・・
武雄は腕を組み軽く悩む。
と、
「タケオ様、何を悩んでいるので?」
いつの間にかアリスがやって来ていた。
「おや?きましたか。」
「タケオ様が客間に来ないので暇でしたので。」
アリスは「相手して」という顔をする。
「はは、それはすみませんでした。」
武雄は苦笑する。
「で、何を悩んでいるのですか?」
「ここに何かあるのでしょうか?」
武雄はさっき壁を叩いた時に音がしなかった箇所に手を当てる。
「・・・どうして、そう思われましたか?」
「いえ。
本とかの物語では、貴族の屋敷には隠し通路がある・・・みたいな設定を見かけるので、ここにもあるのかな?と思って何気なく壁を軽く叩いたらここだけ音がしなかったので。やっぱり?と。」
「なるほど・・・タケオ様の考えは半分正解ですね。」
「ということは?」
「この部屋には隠し通路・・・避難通路はあります。
ただし、そこではないですね。」
アリスは武雄の書斎への扉の脇に行く。
「ここにあります。」
と扉の横にある小机を横にずらし壁を押すと扉の様に開き、部屋が現れ中には階段がある様だ。
「おぉ。」
武雄は感嘆する。
「ちなみに、これはどこに通じているのですか?」
「薪小屋ですね。」
アリスの言葉に武雄は「忠臣蔵?」と思うが言っても通じないので「いつの時代も考えは一緒か・・・」と思うに留まった。
「他にも屋敷内には、何個か通路があります。
見に行ってみますか?」
「いえ、私が知る必要はないでしょうね。
・・・これは向こうから開けられるのですか?」
「いえ、取っ手がないので開けられません。
それに小机がカンヌキの役割も持っているので、開けられない様にしています。」
「なるほど、ちゃんと考えられているのですね。」
「ええ。避難できないのは、いろいろ問題がありますからね。」
「そうですね。」
とアリスの説明が終わった所で。
「アリスお嬢様、タケオ様。家具屋が到着しました。」
とフレデリックがやってきた。
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「またのご利用をお待ちしております。」
と言い残し、家具屋の店長が帰っていった。
武雄とアリスは玄関で家具屋一行を見送り、寝室に戻ってきていた。
「タケオ様、ベッドがきましたよ!」
とアリスは新品のベッドにダイブする。
「はは、新品の匂いがしますね。」
「ええ!良い香りです。」
アリスはベッドでゴロゴロする。
武雄はベッドに腰かけ、そんなアリスを微笑みながら見ていた。
「そう言えば、タケオ様の書斎にソファと小机がありましたね。」
「ええ。店長が気を利かせてくれたみたいで持ってきてくれました。
私が店内で物欲しそうな顔をしているのがバレましたかね?」
武雄が苦笑する。
「そのソファはあまり使わないでしょうね。」
「おや?なぜです?」
「え?だってタケオ様は机で作業するでしょうし。
ソファは来客用でしょう?」
「私の昼寝場所ですね。」
「隣部屋にベッドがあるのにですか?」
アリスは「なぜ?」という顔をする。
「アリスお嬢様はソファで寝たことないのですか?」
「ありませんね。はしたないですから。」
「ほぉ、そうですか。
では、体験してみましょうか。」
と武雄は自分用の枕を持って立ち上がる。
アリスも立たせ書斎に向かう。
「ささ、アリスお嬢様。横になってください。」
以前、決めた通り部屋の奥に廊下側に向かって机を配置し、壁際に本棚が並んでいた。
机と対面に小机とソファがある。
アリスはジト目で抗議するが、渋々横になる。
と、武雄は自分のコートをアリスにかける。
「?タケオ様?」
「寝るには、ちょっと寒いでしょう?
後で起こしますから。」
と言い武雄自身は机に座り、昨日買ってきた紙にペンで何か書き込み始める。
アリスは武雄をボーっと見ていたが、そのうち寝息が聞こえてきた。
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