第102話 家具屋にて。(街の心配事。)
家具屋にてアリスと武雄は奥の椅子に座り、お茶を飲みながら店長の話を聞くことにした。
「ジェシーお嬢様は20歳の時に、レイラお嬢様は19歳の時にそれぞれ結婚をなさいました。」
「そうですね。お姉様方は、その年で結婚しましたね。」
アリスは頷く。
武雄はアリスに姉が2人居るのを初めて知って「へぇ」っと思った。
「で、アリスお嬢様は今年で19歳・・・年を越すと20歳・・・
浮いた話がない・・・皆の心配事なのです。」
「ちょっと待って・・・ジェシーお姉様は20歳で結婚でしょ?
私はまだ心配される歳ではないでしょう!?」
アリスは「ウガー」と抗議する。
「・・・あぁ・・・なるほど。」
「タケオ様!?わかるので?」
武雄の呟きにアリスが反応する。
「いえ?ここの住民ではないので本当の所はわかりませんが、なんとなく。」
「キタミザト様は、わかりますか?」
「なんとなくですか・・・アリスお嬢様の二つ名ですね?」
「ええ・・・それで婚期が延びるのではないかと・・・皆心配で・・・」
「なぜ?二つ名が問題に!?」
「今の王様から勲章までいただいて・・・戦功がありすぎなのです。
名誉や家柄を考えるとアリスお嬢様に釣り合う格の貴族なんて数えるぐらいでしょう?
それに・・・」
「それに?・・・なんです?」
「・・・アリスお嬢様の逆鱗に触れて暴走された際に抑えられる貴族なんているのですか?」
武雄の言葉に店長はコクコクと頷く。
「な!?そんなことで!?」
アリスはぷくーっと頬を膨らませて抗議してくる。
「はいはい。怒らない、怒らない。
貴族は基本的に恋愛結婚ではないのでしょう?」
「う・・・確かにお見合いが多いかと・・・幼少期からの付き合いでの結婚は稀です。」
「見合いならまだしも親が勝手に決めてくるなんて当たり前の世界と思いますが?」
「うぅ・・・そうですが・・・」
「エルヴィス伯爵は、その辺は本人の自由と思っている節がありますから。
アリスお嬢様に見合いの要望があることすら伝えなかったのではないですか?」
「・・・あれ?・・・確かにお爺さまから見合いの話を聞いたことはないですね?」
「たぶん、伯爵はアリスお嬢様を本気で娶る気なら、誰の仲介もなく自力で会いに来るぐらいの者しか認めないと積極的には見合いを取り合わなかったのでしょうね。」
「・・・だれも来たことないのですが??」
「だから戦功がありすぎで、そこら辺の貴族の坊ちゃんでは尻込みしたのですよ。」
「あぁ・・・」
とアリスは頭を抱える。
そんなアリスを武雄は苦笑いして見ている。
「ちなみに店長。私はアリスお嬢様を娶ったのではないですよ?」
「そうなのですか?」
「迎え入れたのではなく。
私からお願いしてなってもらったが正解です。」
「ほぉ。」
「タケオ様!?」
アリスは驚いた顔をする。
「おや?アリスお嬢様、なにか?
当初の気持ちは、知らない人よりマシ程度だったのでは?」
「う・・・ですが・・・今の気持ちは・・・」
「はい、それは後で部屋に帰ってからじっくり聞かせて貰います。
で、結局のところ、私はアリスお嬢様に嫌われない様に精一杯に努力しないといけないという状況なのですよ。」
と武雄は言う。
「何でもいう事を聞くので?」
店長が聞いてくる。
「それとは違いますね。
私の言う努力は・・・対等の立場に立って、同じ景色を見ることでしょうね。
まぁ私は平民ですから貴族のアリスお嬢様に対しては、精一杯努力して何とか対等っぽく見せるのが精々なのですよ。
一緒に笑ったり、美味しい物を食べたり、時には喧嘩もするでしょう。
それにお互いの生まれも育ちも違うのです。
新しい発見をすれば喜び、意見が違うなら喧嘩もする。貴族・庶民関係なく夫婦ってそういう物では?」
と武雄は店長に苦笑する。
「なるほど、キタミザト様。
仰り様は良くわかりました。
末永くアリスお嬢様をお願いいたします。」
と深々と頭を下げる。
そんな店長を武雄は微笑で見ている。
とアリスの方を向き。
「アリス・ヘンリー・エルヴィスさん。」
「はい!」
アリスは、いきなりフルネームで呼ばれ緊張する。
「私の横で一緒に幸せを探して貰えますか?」
武雄は、あの時の言葉を言う。
「タケオ・キタミザトさんが何と言おうと貴方の隣が私の居場所です。
一緒に幸せを探させてください。」
アリスは驚くが今の気持ちをちゃんと言葉にする。
「苦労をかけます。」
「喜んで。」
武雄とアリスはお互い笑いあう。
そんな二人を店長も店員も涙を流しながら喜んだ。
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