第100話 午後は小銃の練習。
武雄とアリスは屋敷で昼食を取ってから城門外の演習場に着いた。
「体が筋張っています。」
武雄は苦笑する。
「初めて馬に乗るのですから当たり前です。」
とアリスも苦笑する。
「それにしても・・・あの馬になぜか懐かれましたね。」
「・・・タケオ様は何かしたのですか?
元々大人しい馬なのですけど、懐き方が異様でしたよ?」
アリスはその光景を思い出して苦笑する。
「え?練習が終わったら『ケア×1』をかけたのですが?」
「は?馬にですか?」
「ええ。疲れただろうからと思って。」
「それは・・・懐くでしょうね。」
「ん?なぜです。」
「『ケア』は回復ですが、副作用でちょっと興奮するのです。」
「・・・?・・・麻薬ですか?」
「あくまでちょっとだけで持続性もないですし、人間は気が付かないらしいのですが、
馬は・・・どうですかね?『もっとして』と懐くかもしれません。」
「なるほど。では、飴と鞭であの馬を手懐けますかね。」
「上手くやってくださいね。」
とそんな会話をしていると兵士長が詰め所からこちらに向かってくる。
「アリスお嬢様にキタミザト様、今日はどうしたので?
あ・・・大演習は事前に連絡を貰わないと・・・」
と。この間の訓練を思い出したのか苦笑しながら言う。
「違います!今日はタケオ様の小銃の練習に来ました!」
とアリスは言う。
「そうでしたか。
では・・・どの辺りでされますか?」
と兵士長は明らかにホッとした様子で聞いてくる。
「大き目の木を目標にしたいので・・・あの木にします。
で、周囲への立ち入りは禁止です。後で杭を打っておきます。
近寄るなら私の後ろ側からでお願いします。」
「わかりました。」
と兵士長は詰め所の方に帰っていった。
武雄はここまでくる途中に買った
小さい杭とロープを使い周辺に立ち入り禁止の境界を作っていく。
そして元居た位置まで戻る。
「さて、しますか。」
と、これも途中で買ってきた安物の敷物を敷いて伏せ撃ちの格好を取る。
あくまでも映画とかのうろ覚えで構える。
約50m先の木を狙う。
引き金をひくと「パン」と音と共に木に命中する。
「・・・当たりましたね。」
「まだ1発ですよ。」
アリスの呟きに武雄は答える。
レバーを引き中の薬きょうが飛び出し、新たな弾丸を入れ、木に向かって構える。
引き金をひくと「パン」と音と共に今度は木を外す。
そんなことを連続で18発分する。
と武雄は伏せ撃ちの体勢を解いて、体を起こしてくる。
「・・・20発中命中は17発ですか。」
「それはどうなのでしょう?」
アリスは武雄が使っているのと同じ敷物に座りながら見ていた。
「んー・・・私のイメージでは、このタイプの有効射程は最低でも400m・・・
50m、100mを全弾命中させるのは当たり前にしたいですね。」
「そうですか。目標は高そうですね。」
「まぁ初回にしては良くできたでしょうね。
ちなみに魔法の有効範囲はいくつですか?」
「そうですね・・・200mでしょうか・・・」
「なるほど、そのぐらいは当てないといけないのですね。
では、あと20発撃ちますね。
少し待っていてくださいね。」
「はい。わかりました。」
・・・
・・
・
結果、20発中19発の命中だった。
「まぁ、こんなものでしょうか。
明日は伏せ撃ちを辞めて、この距離でしゃがんで撃ってみましょうかね。
・・・と、あと10発ありますが・・・アリスお嬢様、撃ちますか?」
と武雄は横寝になって言う。
「え?良いのですか?」
「ええ。待たせてばっかですので、お嬢様も試しにと思ったのですが?」
「やります!」
と武雄が伏せていた場所にアリスも伏せてくる。
「やりたかったのですね」と武雄は苦笑する。
新たな弾丸を入れたのをアリスに渡す。
「まずは銃のこことここを照準と言って、目と照準と的が一直線になる様に構えます。」
「はい。」
アリスは武雄の真似をしながら構える。
「では、このまま的を狙ったまま引き金を引いてください。」
「はい。」
アリスが引き金をひくと「パン」と音と共に木に命中する。
「・・・当たりましたね。」
武雄が先ほどアリスが言ったことを言う。
「まだ1発ですよ。」
アリスは先ほど武雄が言ったことを言う。
「レバーを引くと薬きょうが飛び出してきますが、熱いので注意してくださいね。」
「はい。」
とレバーを引き中の薬きょうが飛び出す。
新たな弾丸を入れ、木に向かって構える。
と武雄は何か気づいたらしく、自分のトレンチコートを脱いでアリスの腰回りに被せる。
「?・・・タケオ様?」
「いえ、私の気が削がれそうだったので。」
武雄は苦笑する。
アリスは「どこを見ているので?」とジト目で抗議するが武雄は無視する。
アリスは気を持ち直し、木に向かって構え、引き金をひくと「パン」と音と共に今度は木を外す。
「あれ?・・・むぅ・・・タケオ様のせいです。」
「ふふ。私のせいなら、それはアリスお嬢様のお尻が可愛らしいのが元凶ですね。」
「むぅ・・・」
ジト目で抗議するが武雄は笑っている。
「はいはい。あと8発ありますよ。」
「残りは全部当てます!」
とアリスは意気込む。
・・・
・・
・
結果、8発中7発の命中だった。
「・・・負けました。」
「ふふ、何にです?」
と武雄は周りに散らばった空の薬きょうを拾っていく。
「撃った後の弾丸をどうするのですか?」
「帰りに魔法具商店に持ち込もうかと。」
「?わかりました。」
とアリスも薬きょうを拾い集める。
武雄は木までの杭とロープを回収し、一緒に城壁の近くに置いておく。
「持って帰らないのですか?」
「ええ、明日も来る予定ですしね。」
と一まとめにして置き、敷物も回収しリュックに詰める。
「では、魔法具商店によってから家具屋に行きますか。」
「はい。」
武雄とアリスは連れだってまずは魔法具商店に向かうのだった。
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