第1話:俺は銀兎
ピッピッピッピッピッ
目覚まし時計の電子音が鳴ると共に勢いよく起き上がる
けして寝起きがいい訳ではない
「ゼエーハアー朝かぁフー」
俺は寝ると起きる時に動気で目が覚めてしまう
「ハァーどうしてこうも目覚めが悪いんだ」
悪夢でも見ているのか?
「解らない」
自問自答してみるが覚えてない夢の事なんて考えてもしょうがない
深呼吸で呼吸を落ち着けてベットから出ると洗面所へ向かう
動気のせいでマラソンを走り終えた時のような疲労感と体のほてりを引きずりながら洗面台に立つと鏡に今の俺の姿が写る
Tシャツにトランクス、寝る時はいつもこの格好で寝ている。パジャマはあるんだけど面倒で着ない
ほてりで少し赤くなった白い肌に顔は良く言えば整っている方で悪くはないが男っぽくない、女の子と間違われる事も少なくはないが俺は間違いなく男だ
肩まで伸びた銀色の髪に血の様に紅い瞳が最も目立つ外見の特徴である
銀髪で目が兎みたいだから銀兎
これが俺の名だ
洗面台の蛇口を捻り、水を両手ですくい数回顔を洗う
ほてった体に水の冷たさが気持ち良い
顔を洗うと次は台所に向かい朝食を摂る
朝食と言っても料理は全くしないから冷蔵庫に買い置きしている栄養調整食品のゼリー飲料を冷蔵庫から取り出し、その場でキャップを開けてゼリーを胃袋に流し込んだ
俺は高級マンションの一室を借りて一人暮しをしている為、料理を作ってくれる人がおらず、まともな朝食を随分摂っていない
短時間で朝食を終えた俺は寝室に戻って高校指定の学生服に着替える
それから身なりを調え学校に行く準備を済ますと再び洗面台の鏡の前に立つ
鏡に写ったのは黒髪に黒い目をした大人しそうな普通少年の姿だった
その姿を確認した後、俺はマンションを出て学校へ向かった。