序章
初投稿です。未熟者ですがよろしくお願いします。
俺はもう止まらない
止める事が出来ない
俺の踏み出した足は重々しいがそれでも充分だった
相手は雑魚、擦れ違いざまに胴へ一閃
崩れ落ちる相手の体を横目に刀に付着した相手の体液をいつも持ち歩いている布を取り出し、その場で拭き取る
「ぎ〜ん兎〜銀兎〜」
俺は歌い始めた。
俺の心が壊れてしまうから
「今宵も歌う〜罪の歌〜」刀を鞘に戻し、二つに別れた相手の上半身歩み寄る
「未だ消えぬ〜友の呪詛〜」
相手は俺に対しての怒りや死への恐怖と共に奇声を上げ腕を振るう
「ぎ〜ん兎〜銀兎〜」
死に行く者の最後のあがらいはどちらも俺には届かない
「失う者の〜悲しみは〜」
そろそろ死んで貰おう、死んでくれないと困る
「瞳を紅く〜染め上げる〜」
俺は片足を上げ頭を踏み付けた、何度も、何度も、何度も・・・
「ぎ〜ん兎〜銀兎〜」
頭蓋骨が割れ、肉が裂け骨が飛び出し、脳がはみ出す・・・死んだ・・・
「心に秘めた〜苦しみは〜」
・・・始まる・・・俺の罰が・・・
「異質な姿に身を変える〜」
・・・苦しい・・・辛い・・・狂いそうだ・・・もう嫌だ!許して欲しい・・・
「ぎ〜ん兎〜銀兎〜」
いつも言葉にもならない絶叫が俺の頭を掻き乱す
「元には戻れぬこの姿〜」
これが何なのか解っている、これは俺が殺した者達の呪い
「晒さぬ内に〜走りだす〜」
殺せば殺す程呪いが強くなり、最後に見たアイツの顔が頭から離れない
その顔は絶対に許さないと俺に訴えているようだ
「故郷を離れ〜何処までも〜」
俺はこの銀兎の歌をこれからもずっと歌い続けるだろう
呪いを紛らわせる様に、自分を見失わない様に
「あ・・・」
誰!
声のした方向を振り向くと一人の少女がいた
今俺がいる場所は路地裏でこの先は袋小路になっていて人が来るなんて殆どない、現在の時刻夜中の十二時過ぎならなおさらだ
「ぎ〜ん兎〜銀兎〜」
どうして人がいるのかは今は考えない事にしよう
女の子に背を向け全速力で走りだす
「待つッス!」
待たないよ
「この身が滅ぶ〜時までは〜」
「うわっ!なんか踏んだッス」
あの死体の事かな?
本当は一般人にアレを見られちゃいけないけど殺した瞬間を見ていなければ多分大丈夫だな
「重ねた罪を〜歌にして〜」
路地のつきあたりには三階建ての建物の壁があった
壁の手前で踏み切り高く跳び上がる
普通では有り得ない脚力で二階の窓枠に足を乗せ、もう一度高く跳ぶ
そして難無く建物の屋上へ着地した
今宵は綺麗な満月だ
そう思うと不思議と身体が軽くなる
「罪と歌う銀兎〜」
跳びはねる動作はステップの様に軽快で、舞い上がる髪を月明かりが美しく銀色に輝かせる
そして月が照らす夜の街に消えていった
「・・・見つけたッス」
蓮野 弥生は歓喜の声を漏らす
「ついにやったッス!ほんとに本当にいたッス!あの姿!あの歌!間違いない!あれがこの街の不思議!銀兎!」