表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
国の在り方 暗躍編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

569/2194

落とし穴83堀:年末の戦場

年末の戦場




Side:エリス




今年ももうすぐ終わり。

クリスマスも終わって、ウィードでは3度目の年越しの準備をしています。

ユキさんの故郷日本に倣い、一年の汚れを落とす大掃除や、年越しそばの用意、そして年明けのミサの用意、お祭り、もう一年の中で一番忙しいといっても間違いないでしょう。

食料の少なくなる真冬にここまで活発に人々が動くようになるとは思いませんでした。

流石、私のユキさんを育んだ地球の文化ですね。


「……あうあう。仕事が……終わらない」


そんなことを考えていると、会計代表席からそんな声が聞こえてきます。

そこには数多の書類に目を通して、目が死んでいるティファニー、こと略してテファがいます。

私の後継は見ての通りテファになっています。

既に私は副代表の地位になっていて、一年前のような地獄の忙しさからは解放されています。

まあ、ユキさんの関連で新大陸とか行ったりで大変なんですけどね。


「ティファニー代表。こちらの書類も確認をお願いします」

「あ、はい。えーと……商会から? えーと、ラッツさんじゃなかった、ノンちゃんからか」


ノンというのは、ラッツの代わりに商会代表となった子で、こちらも女性で、種族は狼人族。トーリと同じ種族ですね。

ラッツ曰く、商売の嗅覚が優れているらしいです。


「ふむふむ、年末のリテア教会で配る、お汁粉の経費か。それなら、リテア教会の申請と被るから……」


なるほど、リテア教会の申請を商会で引き受けたのですね。

普通なら、わざわざ申し出て引き受けることもないでしょう。

教会のトップはリリーシュ様であり、私たちと繋がりは深いですから、特に問題もなく申請も通るはずです。

商会も結局は国営なので、結局はウィード政府からの支援ということになるので、わざわざ商会が申請する理由もないのです。

では、なぜか?

これは、ノンが自分の覚えをよくするためでしょう。

ノンの提案でというのが肝です。

今まで、ウィード政府だったのが、ノンの案にすり替わるというのはあれですが、ちゃんと明確な意思を持った人がやったというのが大事なのです。

商人として、名前を売るのは大事なことですからね。

相手が教会となれば、後々代表から外れても、いい相手になりそうですから。

確かに、ラッツの言う通り、商売の嗅覚は鋭いようです。


「えーと、あの書類はどこだっけ……。……うわーん」


で、書類を整理しきれていないテファは泣いています。


「はぁ。テファ。教会からの書類は昨日決済して、後ろの教会関連のところですよ」

「代表。ありがとうございます!!」

「代表はテファよ。私は副代表」

「あう。そ、そうでした。でも、年末の代表ってこんなに忙しいのですね」


テファは言われた通り決済の書類棚を探しながら、そんなことを言う。


「当然というのはあれね。他所はここまで忙しくないわ。年末は静かに厳かにってのが普通だもの」

「ですよねー。ウィードは年末が一番忙しいですから驚きました。というか、エリスさんはこれをよく二年もやりましたね。あ、この書類だ」

「そうねー。でも、慣れるものよ? というか、規模は年々大きくなってるから。他所の国からも年末はウィードでって人も多くなってきたし」

「うわー。それって、私の方が忙しいってことですか?」

「会計だけならね。私は一応ユキさんやセラリア様の補佐もあるからね」

「……エリスさんはよく働きますね」

「愛の力ね」

「……おなかいっぱいです」


そんなやり取りをしつつも、書類をお互いガンガンさばいていく。

これぐらいのことはやってのけないと、ウィードの財布どころの会計職は務まらないのだ。


「あら? さっきの教会関連のは終わったの?」

「あ、いえ。ちょっとわからないことがあるので、ノンちゃんに後で聞いてみようかと思って後回しです」

「なるほど」


そんな会話とか確認を繰り返しつつ、仕事をこなしていると、訪問者が来たと報告があった。


「このクソ忙しいときに誰ですか? 面会の約束はないですよ?」

「お帰り願ってください。どうせ、ほかの部署からのお金の無心です。ポーニじゃないですか? 今年の夏、新しい部署を設立するから、お金くださいって。しかも、ユキさんとかの支援うけて、あのウサギ、ロリ顔でいてしたたかなんだから。おかげで、こっちの書類仕事が増えたんですよ。よりにもよってエリスさんが休みの時に!!」

「……そうだったの」

「はい。おかげで、セラリア様と連絡をとって新しく経費を確保するのに苦労しました。即日とかわけのわからないこと言ってましたし。あのロリウサギめ!!」


ああ、ウィードで妙な噂が出てきたときに作ったあの部署ね。

そういえば、申請書類を見なかったと思ったら、私が休みの時にやってたのね。

しかも、即日とか、私が間にいたならともかく、テファ一人の時にそれだけやれるって、この子もすごいんじゃないかしら?

そんなことを考えていると、部屋のドアが開かれて中に誰かが入ってくる。


「そういわないでください。私もユキ様からエリス様がいるからって聞いてたんですから」

「あははっ、テファがそこまで悪態つくのも珍しいから、余程大変だったんだろうね。と、やほー」

「うわっ!? ポーニ!? ノンちゃん?」


なぜか、警察代表ポーニと、商会代表のノンだった。


「私もいますよー」

「えーと、お邪魔します」

「おじゃましますねー。ミリーさんがいますので、ちょっとソファーかりますねー」

「ラッツさん!? トーリさん!? リリシュ様!? ミリーさんまで!?」


そういってさらに部屋に入ってくるのは、私の親友で妻仲間のメンバー。


「どうしたの? こんなそろって。しかもミリーはもうすぐ出産日でしょ? なんでまた」

「仕方ないのよ。冒険者ギルドの代表はいまだに私だから。まあ、大丈夫よ。リリシュさんにもついてきてもらっているし、気分も悪くないから」

「そう? で、みんなはなんでここに?」

「それはー、私がー説明しますねー」


なぜか、一番関係なさそうなリリーシュ様が声を上げた。

そして内容は、ちょうどさっきテファが先送りにした、経費の申請がかぶっている件についてだった。

今年の規模が昨年を大幅に上回りそうと、入国管理も務めているポーニの所からリリーシュの所に連絡がいって、これじゃ教会で配るお汁粉が足らない。でも、もう申請はだしちゃったと、困っているところに、教会の設備搬入で訪れていたノンが事情を聞いて、じゃあ、商会で申請すればいいんじゃないかとなって、二重の説明も兼ねてここに来たそうだ。


「えーと、それならなぜ、ミリーさんも?」

「……当然よ。来訪者が増えるってのは一般人もだろうけど、きっと冒険者も山ほどいるのよ。一般来訪者は警察でもいいけど、冒険者となると、こっちも厳正にしょっ引かないといけないから」

「なるほど」

「で、ティファニーさんには悪いんですけど、今回の年末大幅に来訪者が増えるという話で、年末の警備体制の見直しをしなくちゃいけないんです。その関係で、新規に年末の経費を算出したのがこれです」

「あ、わかると思うけど冒険者ギルドも増員だから、経費はギルド持ちだけど、どれだけ人員をとか話し合わないといけないからね。必要経費だから、認めてあげてね。テファちゃん」

「というわけで、商会からの申請はそのまま通してくれていいから」

「どうもー。すみません」


バサバサとテファの前に落ちる書類たち。


「もちろん、確認はしていただいて構いません。元が外交官であるルルア様、シェーラ様方からの連絡です。おそらくは、もうすぐ……」

「すみません。テファ代表至急確認してほしい書類が外交部署の方から届いています」

「……見せてください」


私も横から覗くと、確かにルルアとシェーラの字で年末をウィードで迎えたい人が各国から大勢集まる模様。今年はさらに人が増えると予想ができるので、他の部署の連携をお願いします。と大まかにこんなことが書いてある。


「失礼します。セラリア女王陛下の使いで参りましたクアルです。年末の大幅な旅行者が……って、皆さん何を?」

「タイミングがよかったですー。予算増加の話ですかー?」

「え? あ、はい。リリシュ様のおっしゃるとおり、旅行者が増えると予想ができますので、セラリア様から、予算増加の書類をお持ちしました。お願いします。テファ会計代表」

「……はい。ありがとうございます」


既に、テファの目は死んでいる。

当然だ。これから新たに渡された予算配分を決めて書類作らないといけないのだから……。

クアルもそのことを察したのか……。


「今年の年末は私たち近衛隊の半数も街の警備にあたります。私たちの方はセラリア様の命令範囲なので、特に経費の申請はありませんから、ご心配なく」

「……ありがとうございます」


書類仕事は一つ減ったのだが、目の前にある膨大な仕事が無くなるわけもなく、無表情で返事をするだけのテファ。


「……で、では私はこれで失礼いたします!!」


いたたまれなくなったクアルはすぐに部屋を脱出。

そして始まるのは……。


「ティファニーさん。追加予算の八割ほど警察の方に回してほしいのですが……」

「ちょっとまった!! ポーニそれはないよ。ねえ、先輩?」

「当然ですね。ここはさらなる、商売の開拓に使うべきですから、私たち商会が八割ということで」

「いや、ラッツ。警備ができなくなるから」

「あのー、それだとー、教会の予算がゼロになりませんかー?」


予算の争奪戦。

その中でぽつんとたたずむテファ。

あ、これはまずい。

そう思った私は、ミリーを連れて外にでる。


「ねえ。いいの? テファ、死にそうなんだけど?」

「いいのよ。ミリーをあの場においておく方が心配だわ」

「はい? どういうこと?」

「ああ、ミリーは知らなかったのね。あの子が会計の代表になれたのは……」



『うっせーな!! 黙ってろ!! クソ忙しいときに騒いでんじゃねーー!! ちゃんと今までの書類を見て予算組むからおとなしく待ってろ!! それ見てから抗議に来いや!!』

『『『ひゃい!?』』』



「ね?」

「……すごいわね」

「私たちと一緒よ。怒ったら怖いのよ」

「あー、なるほど」


とりあえず、今年も乗り切れそうね。

ミリーを家に送ったら、テファにお菓子でも買ってあげましょう。












もう仕事納めの人たちも多いでしょうが、終わる寸前に飛び込んできた仕事にはイライラするでしょう。

そして、ウィードの後輩たちもこうやってたくましくなっているわけです。


そして、いよいよ今年もあと本日を含めて3日。

執筆掲載の予定ですが、一応、31日まで通常。

そして、1日は0時に更新予定です。

それから3日、5日と奇数日の二日に一度更新になります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ