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落とし穴81堀:クルシミマス(誤字にあらず

クルシミマス(誤字にあらず




Side:スティーブ




ああ、今日も仕事が終わるっす。

なんで、仕事が終わるっすか?

なんで、時間はすぎるっすか?

どうして……と、おいらはそう思わずにいられなかったっす。


「なーに、ぶつぶつ言ってんだ?」

「どうしたべ?」

「ほっとけ。どうせ、また女にフラれたというのは正しくないか、相手にされなかったんだろ」


スラきちさんとミノちゃんは、相変わらずおいらを気遣ってくれる優しい心の持ち主っす。

しかし、ジョンとかいうベジタリアンなんとかいう、オークのクソはどんどん心を失っているっすね。

いや、仕方ないっす。

きゅうりばっかり食べてるから、きっと脳が退化してるっすね。

このまま家畜に戻ったらいいんじゃないかと思うっす。


「おいこら、喧嘩なら買うぞ」

「外でやれよな。部屋がぐちゃぐちゃになるから」

「喧嘩はよくないべよ」

「……というか、声に出してたっすか?」

「「「うるさいぐらいに」」」

「すみません」


まあ、そんなことがあり、俺は一応人生相談を兼ねて、この3人?匹?と居酒屋へ向かうため街へ繰り出した。

ウィードではすでにおいらたちが出回ることで驚く住人はおらず……。


「お、スティーブ。あがりか。お疲れー」

「スラきちさん。今日も子供のお世話ありがとうございます」

「ミノちゃん。助かったぜ。明日はおごりで飯でも行こう」

「お、ジョン。この野菜、どう思う? お前の舌が一番確かだからな」


なーんて、声をかけられつつ、街を歩く。

喧嘩を売られるのは、冒険者区ぐらいだ。

ああ、交易区も驚く人はいまだにいるっすね。

まあ、新しい人たちが入ってくるから当然っすけど。

そこはいいとして、現状、おいらたち魔物は普通にウィードに受け入れられているっす。

大事なのは言葉を交わし、相互理解を図ることっすね。

そういう意味でも、おいらたちに街の警備を一任した大将のやり方は正しかったというべきっすね。


「へい。いらっしゃい。って、スティーブさんたちかい。今奥の大部屋開いてるよ。ミノちゃんさんもそこなら平気だ」

「いつもありがとうだべ」

「気にするなって。ミノちゃんさんにはいつも助けられてるからな」


ミノちゃんは一体仕事でなにやってるんっすかね?

出会う人、出会う人、お礼をいってくるっす。

いや、警備だから、こう人助けみたいなことだろうとは予想がつくっすけど。


「じゃー、生を4つで」

「あいよ。生4!!」

「あとは、焼き鳥を20本適当に」

「あいよ。少々お待ちください」


席に着きつつ、とりあえずささっと注文をすませる。

そして、生がすぐに届き、軽いつまみもついてくる。


「さて、話もあるだろうが、まずは……」


スラきちさんが触手のように体の一部を伸ばし、グラスをつかむ。

おいらたちもグラスをもって……。


「かんぱーい!!」

「「「かんぱーい!!」」」


一気に生を流し込む。


「ぷはー!! 仕事終わりの一杯はいいねー」

「だべな」

「癒しの瞬間だ」

「そうっすねー」


どこの世界でも共通。

仕事帰りの一杯はうまい。

まあ、お酒や付き合いが苦手な人は違うっすけどねー。

そういうことが無い分、おいらは恵まれてると思うべきっすかねー。


「はぁ」


そう考えてもやっぱりため息が自然と出る。


「ふーん。飲んだだけじゃ気が晴れないみたいだな」

「いったいどうしたべ? 仕事が終わるのが嫌みたいなこといってただべが?」

「そういやそうだったな。お前はさぼりたい派だろ? なんでそんな言葉が出てきた?」

「あー、そうっすね。そのためにここに来たっすね」


とりあえず、どう話したもんかと思っていると、コールからメール連絡が届く。

それを見て、おいらは気がさらに滅入るっす。


「ん? メールがどうかしたのか?」

「誰からだべか?」

「見るぞ? えーと……、アルフィンさんからじゃねーか」


そう、メールはアルフィンからっす。


『いつ帰ってくる?』


と、書いてあるだけっす。


「なにかその内容が問題なのか?」

「アルフィンさんも聖剣使いの使命から解放されて、元気そうでよかったべよ」

「スティーブと仲良くやってるんだろ? よかったじゃねいーか。お互い合意であれば、ユキ大将も文句は言わないだろうしな」


ジョンの軽いからかいの入った言葉に、おいらはまともに反応することなく……。


「だったらよかったっすね」


と返事を返すだけで精一杯だったっす。


「……? 何か問題でもあるのか?」

「アルフィンさんが?」

「まさか、あの人は結構真面目でウィードにかなり馴染んでるって、コメットさんが言ってたぞ?」

「それが問題なんすよ」

「「「?」」」


そう、それが問題っす。

彼女は、色白でスタイルがよく可愛いタイプっす。

いままでの陰鬱な生活から脱するように、ウィードで元気いっぱいに動いているし、ご近所の評判もいい。

家事もできるし、理想の彼女と言っても過言ではないっす。


「どこにも問題があるようには見えないけどな」

「だべ」

「聞いた通りの内容だな」

「問題はここからっす」


馴染んでいるからこそ、彼女は自分のやりたいことがやれたっす。

誰かと話すことも、自由に出歩くことも、向こうの大陸じゃ魔物使いとして追い立てられたっすからね。

何をするにも制限が付いていたっすよ。

聖剣使いになったあとは多少は改善したっすけど、内乱が起こって裏で細々と過ごす生活。

挙句、ヒフィーにコアを埋め込まれて軽い催眠状態。

だからこそ、アルフィンはこのウィードに来て、ある欲望を爆発させたっす。


「なんだよ。その欲望って?」

「なんかまずいもんだべ?」

「あまりやばいなら上に報告だろ?」

「違うっす。アルフィンは甘いものを作って食べることが至上と考えているっす」

「「「はぁ?」」」


甘味というのは、この世界において、基本となる砂糖の生産量がかなり乏しく、未だ嗜好品の一つっす。

このウィードを除いて。

そう、ウィードでは大将のDP交換能力や、土地の改造で砂糖の安定供給が行われているっす。

つまり、アルフィンの欲望を遮るものは何もなかったっす。

ウィードでおいらが預かってから一か月は、毎日の食べ物はおいらが用意するもの以外はお菓子だったっす。


「……え? ギャグ?」

「流石にそれはないべー」

「いや、まあ一か月ぐらいはそうじゃないか? 手ごろな価格だし。女性は食が細いっていうだろ?」

「ああ、そういわれるとそうだな」

「納得だべ」

「ふふふ……。それで終わりじゃないっすよ。スーパーラッツの既製品を食い尽くしたあとは、自分で作り始めたっす。そうなると、味見役がいるっすよね?」

「「「……」」」


3人は顔を見合わせてまさか、という顔をしているがそのまさかっす。

アルフィンの甘党は加速し、毎日のお菓子摂取量が増えたっす。

最初はおいらも、初めてのお菓子作りだしーと思っていたっすけど、そんな生半可なモノじゃなかったっす。

毎日必ず食後にデザートが付くようになったっす。

お昼のお弁当がお菓子になったっす。

朝食がケーキになったっす。

グラドは嫌気がさして、学校に入り浸って飯を食って戻ってくるようになったっす。

つまり、おいらがお菓子消費役になったっす。

もう、お菓子を見たくない一歩手前っす。


「そりゃー……」

「止めるべきだべ」

「だな。体を壊すんじゃないか?」

「いや、そこまでじゃないっす。流石においらもやばいと思って、止めたっすよ。話を聞いてちゃんと量も調整するようになったっす。弁当お菓子も元に戻って、グラドも戻ってきたっす」

「なら問題がないじゃねーか」

「なんで帰りたくないとかいってるべ?」

「関係があるのか?」

「あるっすよ。もうすぐ年末ということは、ウィードでは年越しイベント前に、お菓子大量消費イベントがあるっすよね?」


そう、どこかの生誕祭なのに、リア充を大量発生させる悪しき文化と化しているあのイベントっす。

まあ、今年はアルフィンがいるっすから特に文句はないっすけど、別の意味で問題が出てきたっす。


「クリスマスのお菓子を作ってるのか?」

「ああ、なるほどだべ」

「我慢してた分、多いってやつか?」

「そうっす。ここ数日、学校の子供たちに配るお菓子とかいっていろいろ作っては、おいらとグラドが消費役になっているっす。グラドはすでに、学校に逃げたっす」

「「「あー……」」」


そこでようやく納得した3人。


「つまり、さっきのメールはいつ帰ってきて、お菓子を食べてくれる? という意味か」

「そうっすよ」

「毎日は……流石に胃がもたれるべな」

「なるほどな。じゃあ、俺たちが行って消費を手伝えばいいだろう」

「おお、ジョンの癖にいい案っす」

「癖には余計だ。まあ、一応連絡は入れとけ。スティーブだけに食べてほしいとかあるかもしれないからな」

「そんなことないっすよ。彼女はまだまだ、外の世界を知ったばかりでそんなことに興味が向く状態じゃないっすよ」


だからこそ、ある意味生殺しっすけどね。

ま、さっそく連絡を入れておくっす。

味見でスラきちさんたちが手伝ってくれるとメールするとすぐにOKがでた。

用意に時間がかかるというので、居酒屋でそこそこ飲んで時間を潰したあとに、家に帰ると……。


「あ、おかえりなさい。みんなのケーキありますから、感想聞かせてくださいね」


そう笑顔で言って、おいら達の前にワンホールのケーキがおかれていた。


「いろいろケーキ作ってみたんです。みんな食べますよね?」


そう、一人ワンホールずつ。


「「「……」」」


舐めてたっす。

まさか、一人一つずつホールケーキを用意するとは……。


「私はこのフルーツミックス食べますから」


そう言って一人でガツガツとワンホールのケーキを食べ始める。

クソ、おいらたちは協力するといった手前、ワンホールケーキを切り分けて、交換してなんとかその日を乗り切った。

そして、それから、職場にケーキやお菓子を持ってくるようになるアルフィン。

当初は部下たちに分けていたが、それが一週間も続くと、アルフィンが来るたびに固まり、姿を隠すようになる。

手伝うといったおいらたちは逃げるわけにはいかず、なんとかケーキを消費する日々。


「あと数日でクリスマスだ。だからそれまで……我慢だ」

「だべ。アルフィンさんにも悪気があるわけじゃないべ。……だから、クリスマスまで」

「そう、だな。それまでは付き合ってやらないと……」

「みんなすまないっす……」


そして、セラリア姐さんがとどめを持って到着するっす。


「ねえ。スティーブたち。クリスマスのケーキ作ってみたんだけど、味見してくれない?」

「「「もう、ケーキはいやだーーー!?」」」

「は?」


以上がおいら、スティーブ、今年のクリスマスというかクルシミマスだった。








ここまでひどいのはそうそうないだろうけど、身内に女性が多いと似たようなことはあるんじゃないだろうか?

俺も妹がいるのだが、お菓子の味見役はよくやらされていた。


さて、クリスマスの落とし穴を作るかはちょっと悩んでいますが、25日に確定していることをお伝ええします。

25日、クリスマスに、適当に作ったゲームプレイ動画を上げることになりました。

詳しくは活動報告にて25日にどのサイトかなどを掲載します。

まあ、素人作成だからあんまり期待はしないでね。

ではでは。

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