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第465堀:動き出す毘沙門天と本命登場

動き出す毘沙門天と本命登場




Side:ビッツ




な、なんてこと。

まさか、私にダンジョンを譲ってくれた人が、ノゴーシュ様を倒すために私を利用したなんて!?

これは確実に負ける。

そう、心の底から実感した。

最初からはめられていた。

そうか、だから、魔物たちもいまだにここにたどり着かないし、いろいろ上手くいかなかったのだ。

あいつが、私を笑うために、情報を流していたに違いない!!

悔しい!! なぜ、私だけがこんな目に!!

い、いつか必ず、この復讐はさせてもらいますわ!!

とにかくいまは逃げるのが先、ノゴーシュが戦っている間なら何とか逃げ出せるはず。


でも、なぜか体が動かない。



『今更気が付いたところで遅い。絶対お主は逃げられぬよ』



そんな声がはっきりと聞こえた。

私の中から。


「な、なに!?」

『私のことはどうでもよい。とりあえず、今うかつに逃げようとすることだけはやめておけ。あの連中に背を見せればきっと撃たれるぞ』

「撃たれるって、弓程度なら弾き返せますわ」

『弓程度ではない。鉄砲だ』

「てっぽう?」

『ふむ。やはり、この地にはまだ鉄砲が伝来しておらぬか。弓よりも簡単に誰でも扱え、弓よりも鋭く威力の高い矢を打ち出す武器よ。目にすら止まらぬ。放たれた矢は視認できるが、鉄砲の玉はなかなか難しい』


……そんな武器があるなんて、聞いたことありませんわ。

なら、空から逃げれば……。


『それも仕方あるまい。まあ、そういうことだ。とりあえず逃げるという手段はおすすめせんな。横にいる空飛ぶ女たちを使うのもおすすめしない。ただの的だな。隠れる場所がない分、四方八方から狙われるだろう』


心を読んだ!?

でも、どうしたらいいんですの!?


『まあ、この決闘の成り行き次第で取るべき行動は変わるが、逃げるのは愚策。まあ、あの男があの若武者に勝てるとは思えんが』


どういうことですの?

ノゴーシュ様は剣の神ですのよ?

それが、負けるなんて思っているのですか?


『負けぬと思っているのならば、なぜお主は逃げるつもりだった?』


うぐっ。

そ、それは状況が悪いからですわ。


『然り。状況が悪いし、あの男も刀を握ったが故に負けるは必然。剣の神と言ったか。確かに、あの動きはお主らが通常持っておる直剣には最適であろう。しかし、刀にはそぐわぬ。故に、刀の扱いに慣れておる、あの若武者に軍配が上がるのは当然。まさに必勝の策を相手は持ち出してきたというわけだ』


貴方の言う通りであれば、結局負けるのではありませんか!!

ここに残ってどうするのですか!!


『逃げるは駄目、戦うも愚。なれば、共闘しかあるまいよ』


共闘?


『お主らが唯一、読めぬ一手を、いや二手をもっていたことだ。それが、あの男が握っている刀。童子切安綱。そして、この姫鶴一文字よ。まあ、私は分け御霊のさらに写しで、姫鶴と混じっておるが故にかなり力が落ちているが、あっちの童子切は本物故な』


何を言っているのかわかりませんわ。

というか、貴方は姫鶴一文字だったんですの?


『然り。私は姫鶴一文字であり、毘沙門天の化身』


意味が分からないのですが。


『まあ、私の名は知らぬよな。今大事なのは私の名ではなく、あの男の持つ童子切よ。よくもアレを使おうなどと思ったな。日ノ本の大鬼が封印されている。あの童子切を』


オオオニ?


『そう、大鬼。あの男が狂うか、乗っ取られるか、それとも復活するかは知らぬが、それが我らというか、お主が生きるための手段よ』


だから、何を……。

そう私が問いかけようとした瞬間……。



カラン、カラン……。



そんな音と共に、ノゴーシュとカタナが真っ二つになってしまった。



「「ああっ――――!?!?」」



そんな声が相手からするのが不思議でしたが、こちらはそれどころではありませんわ。

ど、どうするのですか!?

これでは周りを囲まれて、さらに逃げ道が……。


『落ち着け。流石、あの上泉殿の弟子というだけはあるか。ここまでとは思わなかったが、逆にありがたい。ほれ、あの男の亡骸を見よ』


なにを……。

そういいながら、ノゴーシュの亡骸に視線を向けると、黒い霧が覆っていて、再び体がくっついた!?

それどころか、額に角が!?

ど、どういうことですの!?

それに、横に炎がいきなり上がっていますわ!?


『ちっ、依り代ではなく、配下の屍鬼としたか。予想とはちと違うが、まあ、良い。体を借りるぞ娘』

「は!? 何をい……」


しかし、私の言葉は続けられることはなく、勝手に口が動き……。


「関東管領、上杉輝虎。いざ参る!!」


カントウカンレイ? ウエスギテルトラ?

何を言っているの!? なんで、変になったノゴーシュに近づいていくのよ!?

そんな私の気持ちとは裏腹に、今までよりも信じられないくらい鋭く、カタナが迷いなく振りぬかれる。

しかし、その鋭い斬撃は、吹き上がっていた炎に阻まれ止まる。


ガギン!!


「ちっ!!」


止められた瞬間すぐに私は飛び退くと、私がいた地面がいきなりえぐれた。

いや、違う。

大きい手から伸びる爪でえぐれたのだ。


「そうやすやすとはやらせてはくれぬか。酒呑童子」


その視線の先には炎の中から出てくる、オーガがいた?

いや、あれは私が呼び出したオーガとはくらべものにならない。

炎の化身のような魔物が現れた。

なに? なんなの、あの魔物は!?


『言ったであろう? 酒呑童子という大鬼よ』


だから、なんなのですかそれは!?


『あの刀に封印されておった化け物よ。お主らが面白半分に血を吸わせるから目覚めたといったところだ。まあ、最後はあの男が餌になったようだが』


そ、そんなのがいたんですか!?


『そう。これが、可能性よ。これが復活するとなると、もう四の五の言ってられぬ。感じたと思うが、生半可ではない。これを放っておくわけにはいかんとわかるはずだ』


え、ええ。この化け物が解き放たれれば、一体だれが止められるというのでしょうか。


『だから、共闘よ』


幸い、若武者や侍が都合よく居るのでな。

え?


「そこな若武者!! 奥の若造!! そして、立会人の老武者!! さっさと、獲物をもって加勢せい!! 驚いておる暇なぞないぞ!! 日ノ本の大鬼の始末ぐらい我らでしなければ意味がなかろう!!」


な、なにいってるの!?

この隙に逃げるんじゃないの!?


『何を言っておる。ここで主導権を握るのだ』


気が付けば、アーウィンやタイゾウとかいう奴に、勇者タイキまで傍に来ていた。

ひぃぃぃ!?


「待てや、ビッツ姫。なんでそんなわけわからん口調に……」

「若造、私はビッツではないわ。この刀の中身よ」

「中身って、上杉謙信だろ? なんだよ上杉輝虎って?」

「タイキ君。謙信は法名だ。出家してからついた名前が謙信で輝虎はその前の名前だな」

「ほう。私のことを知っているものもいるようだ。まあ、それで私が陣頭指揮を執るのに異論はないな?」

「越後の龍がトップならまあいいかな」

「見せてもらいましょう。軍神と言われたあなたの実力を」

「えーっと、よくわからないけど、弟弟子が協力するならいいのかな?」


な、なんであっさり言うこと聞くのよ!?


『なに、昔取った杵柄というやつだ』


わけわからないわよ!! 

でも、なんとかなるんでしょうね!?


「で、酒呑童子を相手にどうするんですか? 幸い、あっちはこっちをにらんでくるだけで動いてこないですけど……」

「だな。輝虎公。どうされますか?」

「はっ。諱を呼ぶとは、切り捨てられても文句は言えぬぞ? まあ、こっちも猫の手も欲しいところだから不問とする。まずは、あの男を斬る。おそらくあの男、力を酒呑童子に供給しているようだからな」

「なるほど。ノゴーシュは腐っても神ということか。わかりました」


そして、なぜか4人は化け物を囲むように、別れ……。


「各々かかれぃ!!」


何も考えていないじゃない!?

あの化け物に真正面からなんて!?


ガギィィン!?


そんな音が響いて、飛び退く。



「ちっ。厄介よ。あの炎」

「こっちも駄目でしたよ。あの炎が鎧みたいになってる」

「同じくですな。しかし、あまり時間をかけては駄目でしょうな」

「ですね。どんどんあのオーガに力が行っている。なんとかこじ開けないと」


どうするのよ!?


「なに。簡単なことよ。身があらわになっている部分を斬ればいい」


はぁ!?

あの化け物を斬れるわけないでしょう!?


「なるほど。陽動ってやつですかね」

「そうすれば、自分の方に炎を戻さないといけない。道理だな」

「で、その隙に。ノゴーシュを斬ればいいと」

「まあ、大江山の大鬼退治にはもう一人足りぬが、いないものを言っても仕方あるまい!!」


ちょ、ちょっと!?

突っ込むの!? 突っ込むの!?

私が止める間もなく、私の体はあの化け物に肉薄して斬りかかる。


ザシュ!!


え? 斬れた!! 斬れたわよ!!


「えーい。わかっておるわ!! しかし、浅い!! ……なに!?」


その化け物の腕が降りぬかれて、再び地面がえぐれる。

いたっ!? 肩が痛いですわ!?


「ちっ、かすっただけでこれとは。流石は酒呑童子と言ったところか」


視線が自分の肩に向くと、ごっそりと切り裂かれて、血があふれ出していました。

ひ、ひぁぁぁぁ!?

い、いだい!! 死ぬ、死んでしまいますわ!?


「この程度で死ぬか!! 黙っとれ娘!! 気が散る!!」


ぞ、ぞんなこと言ったって……。

血、血がこ、こんなに……。


「何やってるんですか? 攻撃もらうなんて」

「この体の主が委縮していてな」

「ああ、そりゃそうだ。まともな実戦はやったことがないでしょうし」

「女子にやはり、戦場は無理か」

「いやー。程度の問題だと思いますけどねー。タイゾウさん、アーウィンさん、治療するからよろしく」

「任された」

「わかったよ」


ちりょう?

タイキがしてくれるんですの?


「私のことはほっとけ。この傷だと、使わぬほうがまだいい。治療するだけ時間の無駄だ。今すぐ動くようにはならん。攻め手を増やす方が大事。片腕で振れぬわけでもない」

「あー大丈夫、大丈夫。この世界には魔術がありまして、っと」


えっ!?

いつの間に無詠唱で高レベルの回復魔術を使えるようになったのですか!?


「ぬ? 面妖な? 傷がなくなった?」

「動きますかね?」

「ああ、問題ない。不思議だ。このような治療方法がこの地にはあるのか」

「ですね。あと100回ぐらいなら、容易いですよ」

「ほう。ただの一番腕の悪い若造ではなかったか」

「そりゃー、流石に3人と比べると落ちますけどね」

「ならばよし!! 多少の傷なら若造が治す!! 皆の者!! 果敢に挑みかか……へぶっ!?」


ふえっ、なんでいきなり倒れたんですの!?

あ、頭が痛い!?

何か、後頭部に乗っている?


「情報収集は終わったんで、とりあえず邪魔」


そんな声が上から聞こえてくる。


「き、貴様!! 誰かは知らぬがここが攻め時!! 邪魔をするな!!」

「やかましいわ。ほら3人とも下がった下がった」

「ういー。了解です」

「わかった」

「えーと、よくわからないけど。わかりました」


なぜか、3人は輝虎の時より素直に言うことを聞いて引いていく。


「わけわからずなことを!!」

「お前の方がわけわからずだよ。上杉謙信だか、輝虎だか知らねーがな。ここは最初から俺が仕切ってるの。まったく、なんでこうも横槍が入りまくるかな。とりあえず、お前ら全員正座で話聞くからな。あ、酒呑童子は保護してくれ」

「はぁ!? 貴様、酒呑童子を保護な……ど」


そういって、頭を押さえつける力が抜け、あの化け物の方を見ると、そこには泣きじゃくる、赤い髪をした女の子がいただけでした。


「いじめないで……。かか様、かか様……」


何がどうなっているんですの?




さてー、これにて処刑当日の話は終了。

毘沙門天さんは頑張ったけど、踏まれて終わり。

いい当て馬だったね。


そして、問題は酒呑童子が小さな女の子になった件だが、明後日の回答を待てないのなら、もうちょっと酒呑童子の件を詳しく調べると謎が解けるかもしれない。

誰が親であるか? それと、也の字の時の話を合わせて考えれば……。


まあ、ある種の運命というか呪いというか。

若い頃に頑張りすぎたというか……。


次回を待て。



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