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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
国の在り方 暗躍編

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第457堀:裏方の裏方の裏方の仕事

裏方の裏方の裏方の仕事




Side:モーブ




俺たちは相変わらず、宿でのんびり夜空の月を見て待機していた。


「なあ、俺たちはなんでこんなことをしているんだろうな……」


今日も酒を飲むことなく、作戦が完了するまで待機とか辛すぎる。


「はぁー、城では今頃大捜索なんだろうな……」

「我慢しろ。俺たちが動くわけにはいかないからな」

「そうですよ。こっちはこっちで冒険者ギルドと連携して、消息不明ポイントの捜索があるのですから、そっちで頑張りましょう」

「まあなー……」


ライヤの言ってることはわかる。

俺たち冒険者が動いているのが万が一ばれれば、下手すると冒険者全体の問題になりかねない。

それなら、もとから背景が不明な霧華や、魔物の侵入で処理されるスティーブを使う方が効率がいい。

そして、カースの言う通り、行方不明者の捜索もあるので、俺たちが冒険者ギルドと協力して動かなければいけないので、こっちの騒動に手を貸すのは問題がある。

別件の可能性もあるので、冒険者行方不明の捜索は絶対にやってくれとユキからも言われているからだ。

そこで一番の適任が俺たちなので動くわけにはいかないのだ。


「しっかし、俺たちも運がないな。ノーブルの時も、結局、ロゼッタたちの相手をしていただけだったからな」


あの時はひどかった。

ユキがどうせとんでもないことをすると思ったから、ロゼッタたちを嫌な予感がするといって無理やり王都から引き離して、訓練していたが何もなく、ロゼッタに笑われたもんだ。


『あははは!! モーブも勘が鈍ったか? まあ、訓練ができたからいいけどな』


そんな感じでひどい恥をかいたもんだ。


「いいじゃないか、大したことがなかったんだからな」

「そうですねー。私たちが戦力とか、最前線など、それはそれで遠慮したいですからね」

「でもよー。亜人の村の時から俺たちずーっと裏方の裏方の裏方だから……」


ドーン!!


俺がそう文句を続けようとすると、窓から轟音が聞こえて来た。

咄嗟に、俺たちは身構える。


「なんだ、近くじゃないな」

「ああ、遠くの音だな」

「城の方でしょうか?」


一瞬、霧華やスティーブがばれたのかと思ったが、どうやら違うらしく、城とは違う方向から土煙が上がっているのが確認できた。

月が出ている日でよかったぜ。


「あの方角は、冒険者ギルドの方だな」

「ですね。喧嘩でもありましたか?」

「流石に、こんな時間にないだろう?」


既に飲み屋ですら看板を下げている時間だ。

起きているものなどほとんどいない。


「……どうする?」

「とりあえず、俺たちのことがばれたという様子ではなさそうだな」

「うーん。ここまでの騒ぎですから、余程の肝の太い人以外は起きているでしょうし、行ってみましょうか。霧華やスティーブたちへ状況が変わったと伝えないといけないかもしれませんし」


話はまとまったので、ユキに連絡を取る。


『わかった。状況の把握に努めてくれ。無理はしなくていいからな』

「わかってるって」


簡単に説明したあと、許可も出たので、すぐに冒険者ギルドへ向かったのだが……。


「……変だな」

「ああ、誰一人いない」

「この騒ぎで誰も起きていない?」


なぜか、通りには誰一人出ていなかった。

それどころか、いつもの夜の風景といった感じだ。

嫌な予感はしつつも、ギルドへ向かってさらに走り続ける。

そして、たどり着いたギルドでは……。


「くそっ! なんなんだよ!! このオーガは!!」

「みんなを返せよ!! なんで誰も来ないんだよ!!」


そういって半壊したギルドの建物を背に戦っている2人の冒険者と、大きな袋を担いだ黒いオーガが戦っていた。

その大きな袋からは人の手がはみ出てぶらぶらしている様子から、あの中に人が詰められているのか? 

なんでそんなことをしているんだ?

と、いかん。そんなことより今は……。


「……ふっ!!」


まずは不意打ちで、あの大袋を持つ腕を斬り落とす!!


ザンッ!!


「グガッ!?」


黒いオーガと一瞬交差して切り落としたのだが、それだけでこちらの存在を正確に把握して、すぐにこちらに棍棒を振り上げていた。

ちっ、まだ足の勢いが殺せていない。

この速度に追いつくとか、並みの魔物じゃねーな。


「ライヤ!!」

「わかっている!!」


すぐに後を追うようにライヤが槍を突き出して、棍棒を弾く。

って弾くだけか。

ライヤの武器狙いで武器を取り落とさないってユキたちぐらいだぞ!?

思ったより厄介な相手じゃねーか。

まあ、大本命の大袋はすでにカースが落下する前に、魔術で確保して後方に下がっている。


「あ、あんたたちは!!」

「モーブさん!!」


どうやら、冒険者ギルドにいた連中みたいで俺の顔を知っているみたいだ。


「よお。なんだが派手なことになってるじゃねーか」

「そ、そうなんですよ。いきなりこのオーガが!!」

「はい!! なぜかみんな起きなくて、俺たちだけが起きてて……」

「話は後だ。まずはこの黒いオーガを仕留める」


ライヤはそういってすぐに黒いオーガに攻撃を始める。

だが、そのことごとくを棍棒で弾き、守る。

おいおい、ライヤの槍をあそこまで受けきるとか、本当にすげーな。

しかし、片腕をすでに切り落としているせいか、防戦一方だ。


「よ、よし!! 俺たちも!!」

「あ、ああ!! モーブさんたちだけに無理はさせねえ!!」


あ、やべ。

2人の冒険者は俺たちの応援を受けて自分たちも援護をしようと動きだすが、ちょっとレベルが違いすぎる。

下手したら死ぬ。

せっかく助かった命だ、無理をして捨てることはない。


「お前らは下がってカースと一緒に袋に詰められた人の介抱を頼む!! こいつは俺たちがやる!!」

「わ、わかりました!!」

「頼みます!!」


俺がそういった瞬間、ライヤの槍が大きく弾かれ、俺の横に飛び退いてくる。


「ちっ」

「やっぱり、あいつらを狙っていたか」

「グルルル……」


恨めしそうにこっちを見てくる黒いオーガ。

オーガ系の厄介なところはその巨体からくる力と、生命力もなんだが、合わせて驚異的な再生能力がある。

ライヤがつけた傷が目に見えてわかる速度でふさがっていく。

まあ、限界はあるから、通常のオーガであれば、何度も切り付ければ出血や再生が追い付かなくなってくるので、そこまで難しい相手ではない。

が、その再生能力を補うのが、食事だ。

食事をとれば、再生能力が補われる。専門家がいうには再生能力は魔術で行使しているので魔力を取り込む方法ではないかと言われている。

だから、あの冒険者2人を狙っていたわけだ。食えば俺たちをなんとかできるってな。

というわけで、冒険者ギルドの中ではその厄介さから相応の腕がないと討伐クエストは受けられないがな。

俺たちぐらいになれば、弱点の頭をぶっ壊して、一撃で終わる。

が、この黒いオーガはそうもいかないらしい。


「何回狙った?」

「10回だな。確実に躱して、守ってきた」


ライヤは槍を構え直しつつ、そう答える。

俺も大剣を握りしめ、剣先に黒いオーガを捉える。


「やれそうか?」

「ああ、問題ない。急所が狙えないだけで、懐かしの削りに持ち込めばいいだけだ」

「グルッ……」


俺たちのやり取りを、聞いているだけで手出しをしてこないところから見ると、自分の立場がよくわかっているらしい。

進むも引くもできないってな。

だが、覚悟を決めたのか、黒いオーガの瞳に力が籠るのが分かった。


「グオォォォォ……!!」


雄叫び。

勝てぬとも、前に進むと決めた声。

己を奮い立たせる勇気。

こういうことは、場数を踏んだ奴しかできない。

この瞬間だけは、お互いに通じ合うものがある。

さあ、戦士の戦いだ。


「おおっ!!」

「はっ!!」

「グルァ!!」


ユキのおかげで、俺たちの実力は上がっていて負ける道理はない。

しかし、一撃で倒せないから、削りになる。

黒いオーガは時間とともに増える傷を抱えつつも、一切ひるむことなく、俺たちを攻めたてた。

だが、限界は訪れ、ついに動けなくなる。


「……グ……グル……」


膝をついて、腕を振り上げることすらできなくなった黒いオーガだが、全身を血まみれにして死期が近づいてなお、こちらを見つめ闘志を衰えさせてはいなかった。


「お前は強かったよ」


俺は言葉は通じるとは思えないが、その在り方に敬意を表してそういう。

それが聞こえたのかどうか知らないが、黒いオーガは力が抜けたのか、棍棒を手放し、そのまま動かなくなった。


「……おそらくこいつが、冒険者の行方不明者を作った原因なんだろうな」

「だろうな。ここまで強いと冒険者ギルドのメンバーでは手に余る。俺たちですら削り戦法をするしかなかったからな」


正直な話、ユキの配下レベルだ。

これは、冒険者というか、普通なら軍隊でやっとというレベルだな。


「となると、こいつはビッツの配下ってところが濃厚か?」

「……そのようだな。姿が消え始めている」

「はぁ?」


ライヤのセリフに首を傾げつつ、黒いオーガの亡骸を見ていると確かに、うっすらとしてきて、最後に魔石と棍棒だけが残る。


「どういうことだ?」

「ここは、ビッツの支配下だろう。やつのダンジョン内での死亡なら配下の魔物はああなる」

「ああ、そうか。ドロップアイテムか」


ライヤの説明に納得しつつ、魔石と棍棒を回収する。

そしてふいに思いつく。


「なあ。スティーブとかもダンジョンで倒せばドロップするのか?」

「……たぶんな」

「あいつは何落すんだろうな」

「さあな」


あの強さで通常のゴブリンの魔石とかだったら詐欺だな。

俺がそんなくだらないことを考えていると、後方に下がったカースが戻ってきた。


「終わったようですね」

「おう」

「捕まっていた人たちはどうだ?」

「無理に袋に詰め込まれたのか、多少捻挫とかしている人がいましたが、おおむね平気ですね。流石冒険者たちというべきですか。あれだけ詰め込まれたら下にいる人は一般人なら圧迫死してますよ」

「そりゃよかった」

「ますます、ビッツの配下だというのが濃厚だな。一般人でなく冒険者だけを狙う。DPの多い奴を狙ったということだろうな」

「でしょうね。私も後方に下がっている間に、ユキに連絡を取って、黒いオーガのことを調べたのですが、どうやらシャドウオーガとかいう亜種のオーガで、霧華みたいなデュラハン・アサシンのように隠密が得意なタイプで、広範囲に催眠効果があるスキルを保持しているようです」

「それで、周りが寝静まったままだったのか」

「本来であれば、スキルの効果はそこまで高くないはずなのですが……」

「レベル上げでもしていたんだろうな。そういう強さだった」

「ええ。二人で奮戦していた冒険者は運よくスキルが効かなかったと思うべきですね。それでも、私たちがこなければ、オーガの胃に収まっていたでしょうが」

「証拠隠滅も完璧と。こりゃ、こいつが犯人だろうな……」

「だろうな。まあ、あとはユキへ報告して、俺たちはこの場で第二の襲撃がないか待機だな」


久々にいい運動はしたが、深夜の戦闘は勘弁だ。

あとあとの行動に差し支える。

もう、俺は若くないんだぞ……。








久々のお仕事。

ユキというウィードの裏方の、さらにその裏方のスティーブ城内潜入の、裏方のモーブたちのお仕事。

こうして、ビッツの収入源はつぶれるのでした。


そして、すっかり忘れていたが、11月30日に5巻発売だぜぃ!!

もうさ、感慨深いとかも思わんよな。

一番の原因はポケモンとGジェネが忙しいからなんだが。



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