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第453堀:侵食

侵食





Side:霧華




私たちの知らないところで、世界は動くとはよく言ったものです。

てっきり、剣の国の王都にいる私たちが、一番この問題の中心にいるかと思っていたのですが、昨夜からその中心はランクスに移ったようです。

まあ、問題なく防衛は成功して、捕虜も得たと、朝の定時報告にありました。

その関係で、また私たちの動きが変わるので、モーブさんたちの所に足を運んだわけですが……。


「ぐがー。ぐごー」


いびきをかいてモーブさんは盛大に寝ているようです。

テーブルの方にいる、ライヤさんやカースさんは起きていますから、どうやら順番で仮眠でも取っているのでしょう。


「出直した方がいいですか?」

「いや、大丈夫だ」


ライヤさんは特に気にした様子もなく、寝ているモーブさんに向かって蹴りを繰り出す。


「ふごっ!? なんだ!! 敵か!!」


流石、優秀な冒険者といったところでしょう。

蹴りが当たる直前に身をひるがえして即座に枕元にあったナイフを握ります。

自分の得意とする大剣ではなく、部屋の広さにあったナイフを瞬時に取る辺りもすごいです。

やはり、ただのおっさんではなかったと思う瞬間でした。

主殿が、まだ私たちがいないときに頼りにしたというのも理解できます。


「敵じゃない。霧華が来た。というよりお前ずっとあれから寝てたからな」

「ええ。もう朝ですよ」

「マジか!? すまん!!」

「いや、お前が一番気を張っていたからな。気にするな」

「そうですよ。俺とライヤさんで交代で休んでいましたから。で、霧華さんが来たんで起きてください」

「あ、わかった。霧華すまん」

「いえ。起きたのならなによりです。しかし、今起きたということは現状を知らないようですね」

「ああ」

「では、そこからですね」


私はとりあえず、主殿からの報告を簡潔に説明する。

敵の撃退に成功して、敵の指揮官を捕虜にとり、その捕虜が敵の中核である可能性が高い事から、大々的に処刑を行うこと。

その行動で、関係しているノゴーシュが必ず動いて出てくるはずなので、そこの監視を強めてくれとのこと。


「話は分かった。でも、俺たちが冒険者ギルドで動くのは変わりないんだろう?」

「はい。ですが、これ以上に厄介なことが判明しました」

「これ以上に厄介? どういうことだ?」


そう、本題はこれから。

主殿の故郷で国宝ともいわれる刀が、ビッツによって取り寄せられたこと、その刀には恐ろしいオーガが封印されているので、まず所在を確認してほしいという話。


「オーガが封印? そこまで慌てるようなことなのか?」

「言い方が悪かったですね。この世界の分類上、オーガに近いだけで、完全に新種に近いタイプです。主殿の故郷では鬼と分類される妖怪の中でも最上位の魔物です。さらに、その鬼という分類の中でも、頂点と言われるのが、童子切安綱に封印されている酒吞童子といわれています」

「……なんかものすごく物騒だな。でも、あれだろう? ユキならちょいちょいってやれるんだろう?」

「そうだといいのですが、その酒呑童子は当時、各々で英雄譚を持つ、英傑5人をもってしても、真っ向から勝負しないで寝首を掻くことでようやく仕留めたという伝説が残っているぐらいです」

「……それは大丈夫なのか? 大丈夫じゃないのか?」

「それを見極めるのが私たちの仕事です。その鬼が封印されている童子切をおそらくはビッツないし、ノゴーシュが所持している可能性が非常に高いのです。ルナ様曰く、そうそう解ける封印ではないですが、余程の耐性がない限り刀に宿る童子の荒魂に精神を侵食されるそうです。そうなると、刀の持ち主が、無体を働き、人を斬り、悪意を吸収して封印が解けることもあるそうです」

「刀が人をねー。そういう話は聞いたことあるな……」

「確かに、呪われた剣というのは聞いたことがあるな」

「その類ですかね? レイス系になるのでは?」


モーブさんたちはあまり焦っているようには見えません。

まあ、日本三大妖怪など知らないでしょうし、実感がわかないのでしょう。


「話は分かったが、ノゴーシュの奴が持っているのならそこまで心配することなのか?」

「いや、モーブ。問題は国宝というところだ。ルナ様のミスとは言えオリジナルが来たのだから、ユキたちが慌てて取り戻すはずだ」

「そうですねー。国の面子にかかわりますし」

「ああ、そういうことか」

「さらに付け加えるのであれば、主様の故郷の大妖怪がこの世界で暴れる可能性があるのです」

「そりゃー、見過ごせないな」

「幸い。今日はノゴーシュの公開試合日です。そこで刀を持っているか確認できるでしょう。まあ、持っていても、その試合に使うかはわかりませんが、私はその試合からノゴーシュを追って刀の所在を明らかにするよう命令が来ています」

「ああ、そうか。今日は公開試合か」


剣の国は実力主義という、脳筋の図式があるので、こうやって定期的に王が公開試合を行って、兵の徴収を行っているのです。

私から見ればバカなやり方だとは思いますが、主殿曰く、一定以上の力を持つ者を、何も養成所とかもなく定期的に集めるには都合の良い手段だと言っていました。

ノゴーシュ自体が試合に出ることはまれで、その試合で認められれば勝とうが負けようが、剣の国の騎士に任じられるので、成り上がりにはいい場所となっています。

こういうところは貴族主義とは違った人気が民にはあるようです。

見世物としての観光客集めにもなっているみたいです。


「ということなので、本日は、一緒に公開試合を見に行ってほしいのです。刀の確認もありますし、ノゴーシュ自体の実力を見るいい機会です」

「まあ、俺たちもその予定だったし、いいよな?」

「ああ。今日はこっちもそのつもりだった」

「そうですね。そんなに都合よく、刀が見つかるとは思えませんが……」


カースさんの言う通り、そんなに都合のいい話があるとは思いませんが、無暗に捜索するよりは可能性があるので、見ることに越したことはありません。



そいう話で、公開試合の闘技場に来たのですが……。


ざわざわ……。


思ったよりも人が多いですね。

小国の定期的な催しの割にはすごいと思います。


「やっぱり人が多いな」

「お前も昔は来てたんだろう?」

「まあなー。参加する側だったからな」

「結果はどうだったんですか?」

「それがなー。その時、変な参加者が一人いてな。俺は自分の修行不足を実感して、冒険者になったんだよ。って、ちょっとまてよ? その参加者は確か刀を持ってたな」


思いもよらぬ情報が飛び込んできた。

刀を持っていた?

もしかして、未だ見ぬ実力者が敵にいる可能性がある?


「それはどういうことですか? 詳しく聞きたいのですが」

「あー、ちょっとまて。確かー、ノブツナとか言ってたな。そいつのすごいのなんのって、ノゴーシュとの一騎打ちまで認められて、圧勝したんだよ。でもな、それがまずかった。剣の国の王様の面目を潰したからな。箝口令が敷かれて、そのノブツナってやつも追われてすぐに逃げたんだよ」

「あー、それがここ30年あまりおとなしい理由か」

「なるほどですね。戦争したがりのこの国がおとなしかった理由はそこでしたか」


……モーブさんたちには上泉信綱の話はしていませんでしたね。

しかし、すさまじい話ですね。

本人としては剣の道の探究だけが目的だったのでしょうが、神も超えているとは……。

幸いなのは、上泉信綱は今この国にはいないようですね。

主様からは、ああいう規格外とは敵対するなと厳命が下っていますし。

となると、やはりノゴーシュがその時に刀に目をつけたと思うべきですか。

これは主様に報告しなければ。


そんなことを考えているうちに、公開試合が始まりました。

既に予選は終わっていてベスト10が出そろっています。

優勝者がノゴーシュと手合わせができるという、オマケが付いているようなので、そこを見ればいいでしょう。

しかし、どの試合も低レベルです。

まあ、これが普通なのでしょうね。

主様たちが規格外なだけと改めて認識させれらます。

そもそも、剣を振り合うというのが、主様の故郷にある兵器の前ではもうすでにスポーツの域ですからね。

勿論、私もちゃんと銃器を使えます。

正直、剣とかよりも、銃のほうがいいです。

そうやって、つまらないながらも試合を眺めていると、何やら、大会運営の人たちが集まって、魔物が入っていた檻を舞台に上げる。


「なんだあれは!?」

「ミノタウロスじゃないか!!」


周りからそんな声があがります。

確かに檻の中にいるのは、ミノタウロスです。

何かの余興だとは思うのですが、何をそんなに驚いているのでしょうか?


「あー。霧華には雑魚なんだろうが、ミノタウロスは本来高ランクの冒険者たちか、中隊規模の軍隊で退治するものだ。だから、あんなふうにとらえてくるというのは恐怖をあおる」


私が不思議そうな顔をしているのを見たライヤさんが説明をしてくれます。


「なるほど。しかし、周りの様子からは普通ではありえないような感じですが」

「普通ならオークとかだな。ミノタウロスなんて、ダンジョンでもない限り、簡単に捕まえられないからな」

「そういうことですか」

「おそらくは、霧華さんの考えている通りでしょうね」


ビッツに要請してミノタウロスを持ってきたとみるべきでしょう。

しかし、何のためにという疑問が残りますが、登場したノゴーシュを見てその疑問は吹き飛びました。

ノゴーシュは腰に刀を佩いていました。

遠目からでもわかるほど、危ない刀です。

……まさかこれほどとは。

ミノタウロスの登場にざわめいていた観客も、ノゴーシュが抜いた童子切に目を奪われ……いや、ひきつけられ、静まりかえっています。

その様子に満足したのか、ノゴーシュは檻を開け、ミノタウロスと対峙し、あっという間に一刀両断してしまいます。

そして、刀を納刀した瞬間……。


ワッーーーーー!!


大歓声が闘技場を包みます。

ノゴーシュはその歓声に手を振り、そのまま戻っていきます。


「おいおい。マジかよ」

「……ユキが警戒しているだけあるな」

「これは、ノゴーシュよりもあの刀がまずそうですね」

「……そのようですね。私は一旦、主様に連絡を入れます」


そういって、その場を離れるのですが、正直、思ったより簡単に刀を見つけられたことを喜んではいられませんでした。


「あれは、まずい」


ノゴーシュの纏う魔力が思いっきり濁り初めていたのです。

刀から侵食されるように腕からじんわりと……。


「一か月後では遅すぎますね。なるべく早い作戦の開始を進言しましょう……」


もうちょっと、神なのですから、侵食に耐えて欲しいのですが……。

それは無理な相談ですかね?






ということで、そろそろおかしくなってきています。

さあ、どうなるのか!!

異世界大江山決戦になるのか!!




で、そこはいいとして、みんなポケモンゲットしてるかい?

俺はポケモンゲットしてるぜ!!

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