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第448堀:主役が脇役になる瞬間

主役が脇役になる瞬間





Side:ビッツ・ランクス




「どういうこと!!」


私は思わず叫んでいた。

それを聞いた、彼が心配そうに近寄ってくる。


「どうかしたのかい?」

「いえ、誰かがランクスをダンジョン化したみたいで、これ以上こちらのダンジョンを広げられないみたいなの」

「なんだって? なるほどね。流石、卑劣漢タイキのやりそうなことだ。やつと手を組んでいたからな」

「どういう意味? このダンジョンの意味がわかるのかしら?」

「簡単だよ。ランクスをウィードに売ったのさ。ほら、連合にはゲートがすでにあるだろう? つまり、ウィードのダンジョンがあるってことだ。だからこれは神々に逆らうユキという奴の仕業だろう」

「そういうこと……。まったく、あの男は!! ない頭を使うから!!」

「まったくだ」


ああ、もうランクスは悪に染まっていたのね。

服従を誓うものがいれば、助けてあげようかとほんの少し思っていたけど、それはもう無駄だったみたい。


「で、どうする? こうなると、ウィードの戦力も出てくるだろう。引くのかい?」

「大丈夫ですわ。ウィードの戦力は大したことないですわ。ゴブリンを将軍に据えて、一番強い魔物でブラッドミノタウロスです」

「余剰の戦力が存在して可能性は?」

「ないとは言えませんが、存在しても、敵ではありませんわ。私たちのように冒険者を食ってはいるようですが、規模が私たちとは違います。万民のためなどと謳って、他国にも地続きのゲートを設置しているのです。だから私たちの軍を倒せるような余裕があるわけないですわ」


愚かよね。

自国の為だけにDPを溜めていれば、私たちと対抗できたかもしれないというのに。

まあ、しょせん、女神様に頼ることしかできない無能だったということね。


「なるほど。当然だな。ではこのままランクスを目指すんだね」

「はい。でも、これではDPが得られませんし、私の指示も届かないですわ。どういたしましょう?」

「そうだな。ビッツ。悪の鎧という感じのものはないかい? それを着て私が直々に指揮を取ろう。その方が、ランクスを滅ぼしたのがウィード、ユキだというのに説得力があるだろう。この世界でその規模の魔物を操れるのは、表向き、魔王とウィードぐらいしかいないからね」

「素晴らしい案ですわ。少々お待ちください。なるべくよい武具を用意して、ケガなどしないようにしませんと」

「そうだね。まあ、この真の勇者たる私がケガをするとは思えないけど、頼むよ」


そう、彼は悪の勇者タイキを仕留め、真なる勇者となり、大陸の覇者となるの。

そして、私はその彼を支えた女神として、大陸を治める。


「しかし、彼らもかわいそうだな。私たちみたいにレベルアップができればよかったのに」

「彼らにはそのような頭がないから、未だにゴブリンやオークなどを使っているのです。まさか、自分のダンジョンの魔物を狩ってレベルを上げられるなど思いもしないでしょうから」

「そうだな。凡人である彼らが悪いのではなく、賢い私たちがいけないのか」

「ふふっ、罪ですわね」


いまや、私や彼のレベルは400以上。

ノノアやノゴーシュを騙してDPを浮かせた分を軍備に回し、私たちの底上げに回した結果、だれにも負けない最強の軍、そして世界の祖たる真の勇者と女神が誕生したの。


「そうだ。このような兜はどうだろうか? リッチの集団に紛れるのにはちょうどいいだろう」

「そうですわね。なら、タイキやユキが震え上がりそうな、こちらの鎧とかはどうでしょうか?」

「ああ、素晴らしいね」


そんな弾む話をしながらも、着々と彼の準備は整う。

今の姿はどう見ても、リッチの親玉に見えますわ。


「じゃあ、私は行ってくるよ。タイキやルースは私が殺さずにとらえておくよ。準備が終わり次第、連絡をするから」

「はい。万が一にも負けるとは思いませんが、お気をつけて」

「任せておきたまえ」


そういって、彼は魔物たちの指揮官として、ランクスへと旅立った。

あとは、ランクス攻略の知らせを待つばかり。

その間に私も、彼の呼びかけにすぐ応じられるよう、ノゴーシュとの約束のカタナとやらを選んでいた。

一応不測の事態が起きる可能性もあるので、先に刀を渡しておいてご機嫌をとろうというわけですわ。

あの考えなしの剣神ならきっと手を貸してくれるでしょう。

しかし、このDPを使った交換というのは不思議よね。

私が知識を手に入れると、その都度呼び出せるアイテムが増えるの。

流石は上級神様がお与えになってくださったお力。


「でも……、不思議な名前ですわね」


私はカタナの名前を見ても、全然意味が分からなかった。

私たちに馴染んだ名前が付いていないのだ。


「ナガソネ……コテツ? ヒメヅル……イチモンジ? よくわからないわ」


とりあえず、DPが高いものが良いものと決まっているし……って、ナニコレ。

とんでもなく高いんですけど!?

彼にあげた聖剣エクスキャリバカーの20倍!?

……むむ、出せない額ではない。余裕も多少はある。

いずれは倒すとしても、今はご機嫌を取って矢面に立ってもらう必要はある。


「ここは、我慢ね。こと剣の良し悪しが剣の神にわからないわけないですし」


下手に、安物を渡して敵対されてもこまるから、これは先行投資ね。

すぐに回収できる予定もあるからこれでいいでしょう。


「えーっと、名前は……。ドウ……ジ……ギリ……ヤスツナ? なんて読みにくい。でも、そういえば、ノゴーシュ様は確かノブツナとか言っていましたし、このカタナからあやかった名前かもしれませんわね。これにしましょう。あ、そういえば二本いるとか言ってましたわね。うーん、流石に同じレベルのをもう一本は厳しいですわ。……これでいいでしょう。なになに。シマヅ……イチモンジで」 


イチモンジって名前が多いですわね。何かカタナによくつける名前かなにかでしょうか?

ま、いいですわ。

とりあえず、時間はまだ十分にありますし届けに行きましょう。

私はゲートを通って、いっきにノゴーシュ様の城へと向かう。

今の時間なら、訓練場ね。


ブンッ!! ブンッ!!


予想通り、そこには深夜だというのに、剣を振って鍛えている剣の神がいた。

正直にいうと、腕の振りがまったく見えませんわ。

彼もノゴーシュ様には剣の腕で勝てませんもの。

やはり、無暗に敵対するのではなく、利用する方向で動くべきでしょう。


「ノゴーシュ様。鍛錬中失礼いたします」

「ふむ。ビッツ姫か。どう……」


振り返って、こちらを見て口を開こうとしたのだが、すぐに固まり、私の腕の中にあるカタナに視線が固定されている。


「見ての通り、ご所望のカタナを手に入れてまいりました。一応、選べるものの中で、最上位のモノと、そこそこのモノを用意させてもらいました」

「なぜ、どちらとも最上位ではないのだ?」

「最上位のモノは私の勇者である彼の聖剣の20倍のモノです。今の蓄えでは一本がやっとでございました」

「なんと!? そこまでのモノか、では見せてみよ」

「はい。まずは、そこそこのモノを。こちらもそこそこと言っても、聖剣の5倍はしました」


そういって、シマズイチモンジを渡す。

彼は即座に、カタナを鞘から引き抜き、剣身を見る。


「……素晴らしい。これでそこそこか。確かに、あの聖剣より力を感じる。名だたる騎士と鍛冶屋の魂が詰まっている」

「お喜びいただけてなによりです。そのカタナの名前を、シマズイチモンジと申します」

「珍妙な名前だな。だが、ノブツナと同じ流れを感じる。わかった、シマズイチモンジ。私の力となれ」


ふう。

どうやら満足してもらえたみたいね。

なら、こちらのほうも大丈夫でしょう。


「そして、こちらが最上位のカタナにございます」

「ふむ。見せてもらおう」


ノゴーシュ様は同じようにカタナを受け取ると、すぐに鞘から引き抜いて……。



「「……」」



その剣身から目が離せなかった。

どう違うのかと言われると、難しいのですが、確実にあのカタナには私たちの視線を釘付けにするだけの、何かがあります。

だって、私が宝飾でもない剣を見て素直に綺麗と思えたのですから。


「名は?」

「……」

「ビッツ姫。正気に戻るのだ」

「……」

「なるほど。それほどのカタナか。……神の力の残滓を感じる。これは鞘に納めねば、まともな会話は無理か」


私は、ノゴーシュ様がそのカタナを鞘にしまう最後まで、目で追っていた。


「ビッツ姫。良いカタナを選んでくれた。姫が魅了されるほどの実戦の剣はそうそう存在せぬ」

「はい。ありがとうございます」

「では、改めて聞こう。このカタナの名はなんという?」

「そのカタナの名前は、ドウジギリヤスツナといいます。ノゴーシュ様から聞いた、ノブツナと関係があるのかと思いまして、こちらを選びました。おそらくはノブツナという名の由来かと思われます。先ほどの神々しさから確信いたしました」

「なるほど。ヤスツナか。確かにノブツナと似ている。これほどのカタナなのだ。その可能性も十分にあるな。感謝する」

「いえ。私たちを匿っていただいたお礼にございますれば」

「十分すぎるお礼だな。これでは私がもらいすぎだ。何か問題があればすぐに言われるとよかろう。このカタナをもってすべてを斬り払おう」

「感謝いたします。ですが、現在はまだランクス侵攻を開始したばかり、敵も脆弱なれば、今回はノゴーシュ様の手を煩わせることはないでしょう」

「そうか……。それは残念だ。実戦での試し切りはできないか。まあ、先ほど言ったようになにかあれば遠慮などしないでくれ」

「はい。そのときはよろしくお願いいたします。では、私は彼の報告を待つ身なので、ランクスの方へと戻ります」

「わかった。気をつけてな」


そういって、私はランクスの方へと戻る。

しかし、その帰り道、私の頭の中はカタナで一杯だった。


「すごく、綺麗でしたわ。私にもあのような、美しいカタナを持つべきですわね。そう、美しいものは私のようなものが持つのにふさわしいのですわ」


時間はありますし、彼が戻るまでは、カタナを数本取り寄せてみるといたしましょう。




Side:ルナ




ビリッ!!


そんな感覚が体を走る。


「ああん? 静電気? もう秋から冬だしそんな時期かなー」


こりゃー、炬燵とミカンもだすべきかなー。

ま、今は漫画の続きっと……。

そう思って、漫画を積んだ山へ手を伸ばすと……。


ビリッビリッ!!


「ふぁっ!? く、空中で放電した!? いや、ちがう? 私の能力で処理しきれていない?」


これ、体から魔力が抜けて行こうとして、抜けなかった感覚だ。

わかりやすく言うと、おならがでそうで、出なかった感覚が近いかな?


「……たく。なんのエラーよ。この私の能力を超えるとか、ああ? DPでの刀の呼び出し?」


エラーを確認すると、DPでの交換する際の複製エラーだ。


「えーっと……。うげ!? 童子切安綱!? ユキのやつ何考えてんのよ。複製できるわけないじゃん。あれ、今現在、酒呑童子の荒魂封印してるのよ。なんでまた……って、タイゾウとかいるし、研究とかでせがまれたかもね。ま、DP出して送れないとかぐちぐち言われそうだし、別に害があるといっても、意識乗っ取られるぐらいだしー、ユキには心配無用ね。荒魂の複製とか時間かかってクソ面倒だし、本物を送って。あとで複製と交換すればいいでしょう」


そう決めて、とりあえず本物を東京国立博物館から転送して、代わりに外見だけ似せた偽物を置いておく。


「さーて、本日は休日。仕事なんて、明日明日。休みは思いっきり休む!! たまった漫画よむぞー!!」


ひゃっはー!! 全巻読破してやるわよ!!




この章、編?のボス交代のお知らせでございます。

だれがボスかって?

いやー、もうわかるんじゃね?



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― 新着の感想 ―
[一言] わざわざ相手が探してた指揮官レベル導入あざぁーっす 解りやすい狙撃対象が現れてジョンも一安心 てゆうかどこに召還されてるか確認せずに入れ換えるって、本当に問題行動しかしねぇな駄目ゴミ
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