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第446堀:平穏な時間は破られる

平穏な時間は破られる





Side:ミノちゃん ウィード魔物軍四天王将軍 通称優しいミノちゃん




『定時報告。異常なし』


そんな報告が今日も今日とて届いて、それをタイキ君に届けにいくべ。

なんか慌てて、防衛に尽力したべが、特にこの3日は何か起こることもなく、平和に過ぎ去っていったべ。

あれから、半日後には、ガルツの方からも、シェーラのお姉さんとお弟さんのローエルさんとヒギルさんも到着して、防衛の話し合いも済んで、ローテーションで防衛にあたっているべ。

ああ、それに、あんちゃんやタイキ君が懸念していた村々へ襲撃があったという報告はなかったべ。

無論、アイリさんのご両親も無事の確認がダンジョンの機能ですぐに取れたべよ。

本当によかったべよ。

ここまで動きがないとなると、問題は剣の国の方だべな。

モーブさんたちや、霧華も無事だべかなー?

いや、あんちゃんから報告がないから無事なんだろうけど。心配なもんは心配だべ。

そんなことを考えながら、ランクス城の廊下を歩いていると、ふいに声をかけられる。


「お、ミノちゃんじゃないか」

「どうも。ミノ将軍」


声の先にはローエルさんとヒギルさんがいた。


「どうも」


2人に軽く頭を下げて、挨拶を返す。


「なあ、ミノちゃん。暇ならこれから訓練に付き合ってくれないか?」


突然そんなことを言い出すのは、ローエルさんだ。

相変わらず、バトルが好きだべ。

ウィードとのゲート流通が開始してからは、打ち合わせと称して、セラリア姉さんとか、デリーユ姉さんとかと勝負をしているべ。

無論、おいらたちも巻き込まれるべ。


「今日こそは一本取ってみせるぞ!!」


やっかいなことに、ローエルさんもそれなりの実力者なので、おいらたちが手抜きするとわかるみたいで、怒るべ。

こういうところはセラリア姉さんとそっくりだべ。流石友人、類は友を呼ぶと言ったところだべかな。


「……はぁー。姉さん。こっちに来てから毎回言っていますけど、今は非常事態です。個人の訓練ならともかく、お互い軍の統括である将軍同士が気軽に剣を打ち合わせてはいけません。士気にかかわりますし、疲れてしまっていたり、ケガなどしてしまえば、いざ動くという時に問題がでます。シェーラからもきつく言われているでしょう」

「むっ。しかしだ、ここ一年。セラリアやデリーユは子育てで碌に相手をしてくれないのだ。それでは腕がなまってしまうし、ケガなどするつもりはない。しても、ミノちゃんたちが治してくれるだろう?」

「まあ、ケガしたら治すべ」


今ケガをしてもらうと、非常に困るべ。

というか、ローエルさんを戦死とかは絶対させられないから、そういう回復アイテムの使用は数に限りはあるが、10度ぐらい死にかけても復活できるぐらい余裕はあるべ。

まあ、使用したら報告書と始末書ものだから、絶対使いたくないべ。


「ほら」

「ほら。じゃないですよ。セラリア女王やデリーユ様も子供を得て母としての仕事を全うしているのです。当然のことですよ。あと、ウィードに治療を頼むなど、こちらの落ち度になるでしょうが!! シャール姉さんの雷がまた落ちますよ。まえに、勝手にナールジアさんに新型の盾を依頼して、目玉が飛び出るぐらいの請求されて、シャール姉さんに怒られたのを忘れましたか?」


あー、なんかそんなことあったべな。

なんか、ナールジアさんがローエルさんの依頼を受けて、調子に乗って、ガルツの国宝の盾を軽く超える性能の盾を作っちまったべよ。

性能的には、リーアちゃんの初代勇者の盾の強化版で、魔剣、聖剣のシステムを利用した、コアからの魔力供給を使って、多重障壁と自身の回復、ステータスの底上げと、まあぶっちゃげ、チート盾だべ。

それを作ったけど、売っていいですかー? って聞いてきて、あんちゃんとかが悩んでいたべ。

今となっては、ナールジアさん、ザーギス、コメットさん、タイゾウさんの技術力のおかげで、ローエルさんに売った盾なんて、木っ端物だべなのだが、あくまでもこういうチート装備はあんちゃんの身内のみだけの使用と決めていたべ。

最初は、別のモノを用意するとか話が挙がっただども、結局はローエルさんの人柄を信じたセラリア姉さん、デリーユ姉さんの後押しがあって売ることにした。

支払いは、シェーラちゃんを通じて、貿易を担っているシャールさんと相談して決めようとなったべ。

そして、シャールさんはその盾に対して、法外ともいうべき支払いを決めたべ。

ローエルさんのポケットマネーと給与で。

曰く、あの馬鹿姉の考えなしを正すいい機会ですので、気にしないでください。とのこと。


「あぐっ……。あいつめ、未だに私の給料を差っ引くんだぞ……。ウィードでごはんを食べるのにも困るぐらい……」

「……普通は、外交バランスを崩したとか、諸々の罪に問われて、処刑ですからね? あと、いつの間にウィードで食事を……。連れて行ってくださいよ。というか、どこからお金出してるんですか」

「ん。なら今度から一緒に行くか? あとお金はもちろん私は持ってないからな、ミノちゃんとか、ジョンとか、いろいろだな」

「は? 本当ですか?」


ヒギルさんは、ギギギと首をぎこちなく動かしながらこちらを見て聞いてきた。

特に隠す必要はないので、言うことにするべ。


「本当だべ。ウィードに訓練に来た後とか、そのままご飯を食べて帰るべよ。お客さんだし、お金のこととかは気にしなくていいべよ。おらたちは、あんまりお金を使うことはないからな」

「ミノちゃんは優しいんだぞ。ヒギル」

「そんなことは知っていますよ!! あーもう、このバカ姉が!! よその国の将軍に毎回飯代をせびっていたとか馬鹿ですか!! ああ、そうでしたねバカ姉でしたね!!」

「な、なにをそんなに怒っているんだ? あ、あとそんなにバカバカいうな!! 私だって怒るぞ!!」

「バカにバカと言って何が悪いですか!! あーもう、一旦、ガルツに戻りますよ!! シャール姉さんやティーク兄さんに絞ってもらわないといけませんから」

「は!? なんで兄上やシャールのことが出てくる!? いまは緊急事態だぞ!!」

「バカ姉!! あんたのしてきたことの方が緊急事態だよ!! こんな時にまたウィードへの多大な借りができているのが判明するとか……、もう独房に入っていた方がいいんじゃないですか?!」


そんなことを魂が出そうなため息とともにいいながら、ローエルさんの耳を引っ張りながら、ゲートがある方へと歩いてく。


「い、いたい!? ヒギルやめないか!!」

「黙ってついてきてください。この状態でついてくれば多少は減刑の可能性も……。あ、ミノ将軍。貴重な情報をありがとう存じます。ランクス防衛の押し付けと、その他諸々のお詫びは後日改めて伺います。部下の方には、ミノ将軍の指示に従うよう命令をだしておきますので、どうか、一旦部下を預かっていただきたい」

「あ、うん。わかったべ。一応、おらも、ジョンたちも気にしていないから、穏便に頼むべよ」

「はい。ご配慮、本当に感謝いたします。これでバカ姉の減刑も多少はかなうでしょう」

「ま、まてっ!! 話を……。シャールにこれ以上な……」


そんなことを言いながら廊下の奥へ消えていく姉と弟。

世の中、そうそう上手くはいかないもんだべな。


「と、いけないべ。おらは、タイキ君に報告しないと」


あの漫才を見て頭の中から予定が吹き飛ぶところだったべ。

おいらも任務中だから、ローエルさんのようにならないとは限らないべ。

アレを戒めとするべよ。



「あ、ミノちゃん。お疲れ様」

「おつかれさまだべ」


執務室の方に到着すると、タイキ君はいつものように政務の片付けをしながら、コール画面を開いている。

あれはおそらく、ランクスの国土を眺めているんだろうなー。

この前渡したDPを使って掌握したんだと思うべ。

ま、これは国家機密だし、おらとしてもまじまじ見る理由はないべ。


「はい。お茶です。ミノちゃん将軍は定時報告ですか?」

「あ、ども。はい。アイリさんの言う通り、定時報告だべ」

「こっちのモニターには異常はないけど、ミノちゃんの見張りは?」

「肉眼でも問題なしだべ」

「そっか。今日も今日とて平和でよかった。で、済めばいいけど、なんというか焦れるな」

「だべな」


おらは出されたお茶を啜りながら、タイキ君の言葉に同意する。


「調べた結果、どこもまだ手付かずだというのは、いい結果だと思う。けど、何も動きがわからないのが不気味すぎる」

「そのお姫様の体制が整っていなかったと考えるべきだべだが、いつ動くのかもわからないから、こっちは警戒しっぱなしだべだからな。こんな状況をずっと兵が維持できるわけないべ」


緊張感と仕事に対する姿勢はどうしても慣れによる弛緩がでてくるし、逆にそれを保てても、兵はいつもより簡単に疲弊するようになる。

先が見えない戦いってのも大変だべ。

いまだ、どこに敵のダンジョンがあるか把握できていないからだべ。


「うーん。こっちからは動くわけにはいかないし。剣の国に乗り込んでいる、モーブさんたちと霧華さんの頑張りに期待するしかないねー」

「だべなー。あ、そういえば聞いたべか? 向こうではなにかずいぶんと冒険者が消えているって報告があるべ」

「ああ、聞きました。たぶん、そっちがメインだったから、他国に手出しはしてなかったみたいですね」


実は剣の国の潜伏メンバーは妙な情報をつかんでいた。

冒険者が剣の国の周辺で行方不明になることが多発しているらしいべ。

まあ、冒険者が行方不明なんてよくあることだから、特に注視している様子ではないらしいだべが、ここ数年で高ランクの冒険者も3組ほど消えているから、巷では強力な魔物でも出たのではないかという噂もあるべ。

だが、おらたちはピンと来たわけだべ。

これは餌になっているって、ウィードのメンバーは全会一致だったべ。

で、現在はどこで冒険者たちが消えたのか、調べている最中。

下手すると、ギルドとノゴーシュがグルの可能性もあるから、慎重に調べているべ。


「まあ、ゆっくりなおかげで、国土をしっかり確認できたわけだけど……」

「なにか、使えそうな土地があったべか?」

「いや、盗賊の根城みたいな場所を発見できたから、後日討伐だなって。無論、使えそうな土地もあったよ。いやー、コールって便利だよなー」

「ま、気に入ってもらえてよかったべよ」


そんな風に雑談をして、そろそろ配置に戻ろうとしていると、ジョンから連絡がきた。


「どうしたべ?」

『剣の国方角の、森から大量の魔物が押し寄せているのを目視で確認しました。至急、勇者王に連絡を取られたし。繰り返す、森から……』


くしくも、その声はダイレクトにタイキ君に届いていて……。


「確認した。数は約千五百。どこから出てきた? 奥の方へダンジョンを広げるか……って、あれ? 他所属のダンジョンマスターの管理地なので、攻略しないと広げられません!? この前はなかったぞ!!」

「となると、お姫様が攻めてきたってところだべな。人の姿は確認できるべ?」

「いや……、侵攻部隊には人は確認できない」

「うーん。DPに替えるつもりだったのか、それともこっちの殲滅が目的だったのかは判別つかないべな。まあ、タイキ君はあんちゃんへ報告を」

「わかりました。ミノちゃんはどうします?」

「えーと、後方10キロの位置にダンジョンの出口を設置をお願いするべ。ゲートも設置して、おいらたちが移動後に撤去、戦闘終了後、おいらたちが残存していれば、再度ゲートを設置して回収お願いするべ」

「了解。予定通りですね。……すぐ事情を話して戻ってきます。防衛、よろしくお願いします」

「ジョンが現場にいるみたいだし、何とかなるべよ」


おらはそういって、執務室を出る。

さーて、敵は千五百かー。

部下たちの装備は敵の種類で選定しないといけないべな。

忙しくなるべ。




なんか、不評だと思った前回のビッツの話は、異常なコメントの盛り上がりを見せていた。

でも、ひとつ不満がある。


なんで、ユキたちが苦戦するとか思わないの!!

ひどいわ!! ビッツだって頑張っているのよ!! 足りない頭で!!


あと、久々の登場だったローエルとヒギルは速攻退場。

主に、姉のせいで。

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