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第441堀:過去の姫君

過去の姫君





Side:ユキ




『あ、そういえば言っていませんでしたね。ノゴーシュの所にいると思われる、ダンジョンマスターの名前はビッツ・ランクス。かの異世界から呼び出された勇者に王国を乗っ取られたかわいそうな姫らしいですよ?』


ほほう?

なにやら、今回の裏が見えてきたぞ。


「ほーう。あのクソ姫が動いておったのか」

「あの時の、クソバカ姫ですかー。殺しておくべきでしたね」

「そうだね。そう思うよ」

「……殺っておくべきだった」


デリーユ、ラッツ、トーリ、カヤはその話を聞いて、殺気を溢れさせて静かに怒っていた。

俺も、そうは思うけど、あの時はいろいろ問題があったしなー。

というか、タイキ君が片づけるべき問題だったしな。

ミリーやアスリンたちがいなくてよかったわ。

ミリーは興奮しておなかの子によくないだろうし、アスリンたちはあのクソ姫と直接会って罵倒されているからな。


「えーっと、その皆様がお怒りになっている、ビッツ・ランクスとは何者でしょうか?」

「ん。私たちに聞き覚えがないということは、この大陸での出来事?」


首を傾げているのは、当時いなかったサマンサとクリーナ。

あとで現場にいるジェシカにも説明をしておかないとな。

とりあえず、再確認の為にもサマンサとクリーナに説明するか。


「クリーナの言う通り、こっちの大陸での出来事だ。えーっと、簡単に説明するとだな……」


ウィード建国祭の時に、方々から集まった小国の一つで、タイキ君が現在国王を務めている国、ランクスの姫君だった人物だ。

その名もビッツ・ランクス。

タイキ君曰く、ビッチ姫。一つ文字ずらしただけだから、お似合いだろうって言ってた。

よくある小悪党というか、勇者の看板だけを利用して、自分たちが好き勝手にふるまえるようにしていた暴君? やっぱり小悪党でいいや。

とにかく、勇者という看板を盾に、大義名分ということでほかの国を攻め滅ぼしたわけよ。


「……なんですか、その屑は」

「ありえない。なぜ、そんなことが許された?」


当時はまだ魔王が脅威として存在していた時期なので、勇者に従わないということは、魔王に与している。そういう大義名分で魔王の配下は討つべし。

勇者としては、破格らしい俺と同じ異世界出身だから、各国としても下手に口は出せないし、魔王討伐のためと言われたら、なんにも言えなかったとのこと。


「本物の屑ですわね」

「ん。屑」


当時のタイキ君は何も知らないし、周りの誰が敵で味方か区別がつかないから、とりあえずいうことを聞きつつ、情報や力を集めていた。

そして、ランクスが横暴をやっていると気が付いて、どうにかしようと悩んでいた。

下手に謀反を起こそうにも、周りが巻き込まれるし、国々に呼びかけを行われたら勝ち目がないと。


「……タイキ様も相当苦労なさったのですね」

「……勇者も大変」


そんなことを悩んでいたら、ウィードができて、勇者という単一戦力に頼らず、同盟国でいざ魔王退治みたいなことになってきたから、勇者の看板でいろいろ甘い汁を吸っていたランクスはそれが当然受けられなくなる。

だから、ウィードに行って難癖をつけようとした。

でも、タイキ君もここで他国と連絡を取って、謀反を起こすための準備をするいい機会と思ってビッチ姫、じゃなかったビッツ姫と一緒にウィード建国祭に来たわけだ。

だが、ここでタイキ君は気が付いた。

このウィードの在り方は同じ日本人がかかわっていると、だから、なんとかして俺と接触を図った。

やり方はまあ乱暴だったけど、アスリンたちも許しているから問題ない。


「どういうことしたのですか?」

「ん。そこはごまかしてはいけない」


……えーっと、ドッペルのアスリンにいきなり斬りかかった。

本当に切るつもりはなかったみたいだが、まんまと俺が出て行った。


「しかも生身でな。あの時は流石に肝が冷えたわ」

「本当ですよ。もう二度としないでくださいね」

「本当だよ」

「……ユキに首輪が必要だと思った事件」

「……ユキ様に首輪が必要だというのはよくわかりましたわ」

「ん。ユキは自分の立場が分かっていない。首輪をつけて私たちにリードを持たせるべき。それが安全」


いや、全員で頷くなよ。俺は犬じゃないやい。

と、そこはいいとして、そうやって、俺とタイキ君は現状を話し合って、ビッチ姫というかランクス王国の転覆に手を貸したわけだ。

結果は知っての通り、タイキ君が無事王様になって新生ランクスが生まれたというわけだ。


「なるほど、つまり、そのランクスの元姫が今回の騒動を起こしていると、ノノア様の口から出たので殺気だっているということですか」

「ん。怒る理由は理解した。しかし、それはあり得ない。ダンジョンマスターはユキで打ち止めのはず。ルナが言っていた、近年はダンジョンマスターを現地で任命していないと。あの名簿にもビッツの名前がなかった。矛盾があるので、ビッツの名前をかたっている何者かという可能性もあるのでは?」

「俺たちが殺気立っている理由についてはサマンサの言う通り、そして、クリーナの推測も間違いじゃない。その可能性も十分にある。だけど、わざわざこの状況で偽名を言う理由がわからない。逆に俺たちに敵対した理由がしっくりくるんだよな」

「どういうこと?」

「つまりだ。ノノアの話であれば、ビッチ姫はかわいそうな悲劇のヒロインだ。それを追いやった悪の勇者タイキ、そしてノゴーシュやノノアから聞いたであろう、俺が異世界人だという事実から、今までの恨みつらみであらぬことを吹き込めば、それなりに相手もだまされるだろうさ。だって、すでに実績で抜かれてうっぷんが溜まっているからな。敵対する理由が少しでもあればいいわけだ」

「理解した。ビッツは今までの恨みを利用して、神々をウィードと敵対させようとした。しかし、それで怨恨という理由はわかるが、ダンジョンマスターという立場がどこから来たのか説明できていない」

「そこは、想像でしかないけどいいか?」

「ん。仮説として聞いておく」

「仮説な、それで行こう」


クリーナの言う通りに、とりあえずホワイトボードにカリカリと書き込んでいく。


仮説その1:俺と同じように、協力者のダンジョンマスターがいて名義貸しをしている。

仮説その2:あるいは、ダンジョンの制御を奪ったか。

仮説その3:実際はダンジョンなどなく、コアを使った偽装工作、およびコアを使った兵器開発。


「これが大体大まかな仮説だな」

「ふむー。相変わらずよくもまあ、こんな短時間でパッと思いつくのう」

「ですねー。お兄さんはなんというかこういう抜け道つぶしが好きですよね」


デリーユとラッツが感心して褒めてくれるが、これはどこぞの馬鹿共相手には常に必要なことだったのだ。

まあ、あいつらの場合仮説その4があって「その場のノリ」というのがあるからたちが悪い。

しかも基本的にその4が適応されるから予防も対処もできねー。

そんなことはいいか。ちゃんと説明しておかないと。


「さて、俺としては可能性が一番高いのは仮説その2だと思っている」

「なぜでしょうか?」

「理由を聞かせて」

「簡単なんだけどな。ノノアをつかって魔力をDPの足しにしていたことから、ダンジョンの特性を知らないということなんだよ。仮説その1だと協力者のダンジョンマスターがいてその事実に気が付いていないということになるし、何より、住人がいればDPが簡単に回収できるシステムというのを見せた、ウィードを見たビッチが同じ行動に出ていないのが不思議すぎる。俺たちとは別のダンジョン町を作った方が、勢力を盛り返すのには最適だからだ」

「なるほど。つまり、ビッツは詳しい説明も聞かずダンジョンマスターからダンジョンの制御を奪ったと思えばいい?」

「仮説だけどな。それを証明するように、ノノアの方にダンジョンを作るということをしていない。コアがあればダンジョンを生成できるという事実を知らないのか、それとも代理人でもいいと理解していないということだ。ほぼ対等な同盟国へのダンジョン建設はいろいろな意味で有利に働くからな。物流の円滑化、連絡の簡易化、お互いの監視などなどな。ビッチ姫は腐っても王族だからな、こういう外交手段は多少なりとも知っているだろう。勇者っていう看板を利用するぐらいは思いついたんだからな」

「……説得力がある説明ですわね」

「ん。ユキの説明は的を射ていると思う。つまり、これはほぼビッツが裏で手を引いているとユキは思っている?」

「そうだな。十中八九そうじゃないかと思っている。あのビッチ姫はウィードにも恨みあっただろうからなー」

「逆恨みじゃったがな」

「自業自得ですよねー」


デリーユとラッツの言う通り、自業自得ではあるが、そんなことで悔い改めるような性格なら最初から問題になっていないし、タイキ君も謀反なんてしなかっただろうさ。


「でも、不思議だね。ビッチ姫が裏でいろいろやっているのなら、まずはウィードよりも、タイキさんのランクスに仕掛けるんじゃないかな?」

「トーリさん。それは準備が整っていなかったのですから、仕方ないですわ。匿ってくれている神、魔力供給をしてくれる神を優先しないことには、協力も得られないでしょうから」

「ん。その通り」


トーリの疑問にサマンサが答えて、それを後押しするクリーナ。

しかし、俺もトーリの言葉になにか引っ掛かりを覚えている。


「んー。そうなんだけど。それが普通なんだけど、あのビッチ姫が自分の利益を捨ててまで我慢するとは思えないんだよ。なんかこっそり自分の分を増やしていそうなんだけど……」


そりゃー、あの強欲ビッチ姫だから当然やるだ……ろう!?


「あっ、やばい!!」

「な、なんじゃ!?」

「どうしたんですか? お兄さん?」


驚くみんなを放って置いて、大至急タイキ君にコールで連絡を取る。


「でろー!! でろよ!!」


長い、この時間がやたらと長く感じる。


『はい。タイキです。ユキさん、どうしたんですか? ノノアの方で進展がありましたか?』

「そうだ!! タイキ君、その過程でビッツ・ランクスがダンジョンマスターとして名前が挙がった!!」

『はぁ!? クソビッチ姫の名前が!?』

「そうだ。詳しい説明は後でするから、剣の国方面の警戒レベルを上げろ!! あと、近辺の村とかごっそりなくなってないか確認しろ!! 移動とか説明が来てるのも全部だ!!」

『ちょ、ちょっと待ってください。それってまさか……』

「ああ、ビッチ姫が自分のダンジョンの餌にしてる可能性が高い。元自国領だから、こっそり動くのは楽だろうさ」

『あのクソビッチ姫が!! わかりました。大至急調べさせます!!』


トーリの言う通り、自分でやれることはやるタイプだ、この悪い予想が当たってないといいが……。

こればかりは、もう後手だからそこまでビッチ姫が愚かでないと願うしかない。


「ったく、ゆっくりノノアの事情聴取を聞いている暇はなさそうだな。ノノアのことはタイゾウさんたちに任せて、俺たちはモーブたちや霧華と連絡を取って、剣の国の調査を本格的に始めるぞ」

「「「はい!!」」」


しかし、剣の国にいる人員が少ない。

シェーラにも現状を報告して、ガルツの防衛警戒レベルも上げないといけないな。

ランクスほどでないとはいえ、恨みを買っただろうからな。




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