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第439堀:大混乱だぜ!!

大混乱だぜ!!





Side:ノノア・ウィザード・シャイン 魔術国長 魔術神




「とりあえず。怒るにしろ、私たちの話を聞いてからでも遅くはありません。ここはあなたの居城なのですから、違いませんか?」

「私からも頼む」

「……いいわ。言い訳ぐらいは聞いてあげましょう。少しでもましな話をしてくれることを願うわ。そうしないと、貴方たち全員どうなるかわからないわよ?」


まったく、この偽物は状況がわかっていないのかしら?

それとも、セラリアのやつが、わざとやらせているのかしら?

でも、敵対するのであれば、わざわざ使者を送ってくるわけもないし、話を聞くだけ聞いてみても問題ないでしょう。

ファイデが話を聞けというのも気になるし、こっちとしては、今後のノゴーシュとの対立でダンジョンマスターがいないのは不利すぎる。

何としても、ウィードにいるダンジョンマスターであるセラリアはこちらに引き入れたい。

……そうね。向こうは、自分たちが間違っているという認識がないのだから、そこを丁寧に教えてあげれば、私に恩を感じるでしょう。

そもそも、異世界という未発達の世界から連れてこられたのだから、その辺りは私たちが大人の対応をしてあげなければいけない。

落ち着きましょう。短気は損気。知性溢れる私にはふさわしくないわ。


「では、そちらのご希望に添えられるかはわかりませんが、こちらがいう認識の齟齬を説明いたしましょう」

「ええ、お聞かせ願えるかしら?」

「その前に、確認をしたいのですが、今回の使者の受け入れの目的は私たちとの協力関係を結びたい、あるいは属国の関係を結びたいからだと思っておりますが、間違いはないでしょうか?」


ふむ。

ユキと名乗るこのおじさまも、そこのところは理解できているらしい。


「その通りです。私たちとしては、貴方のダンジョンマスターとしての力をこのまま切り捨てるのは惜しいと思っています。そちらにはこの世界の常識がないようですし、その辺を補い合うという形で悪いようにはしませんわ」


ま、私の部下になってもらうっていうのが正しい認識よね。

ノゴーシュの所にこれ以上、戦力が集まれば対抗するのは難しくなってくるもの。


「……ふむ。やはりおかしいですね」


私の説明を聞いたユキはそう呟く。


「何がでしょうか?」

「うーむ。どう説明したものか悩みますが、とりあえず、結論から言ってみましょう。そちらの把握しているこちらの実情はまったく違うのです」

「どういうことでしょうか? どの情報が間違っているのでしょうか?」

「何もかもです。そもそも、そちらの主張がこちらとしては意味不明なのですよ。そうですね。まずは、そちらの主張の食い違いを一つ一つ説明していくとしましょう。まずは、私たちがルナ殿から力を無尽蔵にもらい、ダンジョンを拡大しているという認識ですが……」


あら、ルナ様の聖名を軽々しく口にするなんて、不敬すぎるわね。

この場で……、って落ち着きなさい。話を聞くと決めたのだから。


「それが違うのですか?」

「はい。違います。よく考えていただきたい。ルナ殿は、私たちの自らの手で世界の問題を解決することを望んでいます。異世界から連れてきたというだけで、手助け、いや無尽蔵の援助をするのであれば、そもそも、私を立てる意味もないでしょう。ルナ殿自らやってしまった方が早い」

「それは……。いえ、ルナ様はお忙しく、だからこそユキ殿に手を貸したのでは?」

「それこそおかしな話です。わざわざ新人を連れてきてそちらを贔屓にすれば、このように問題が起こるのは必然。私ではなく、ノノア殿たちに援助があってしかるべきでは?」


……確かにそうだ。

私たちにルナ様がお力を授けてくださった方が、混乱もないはずだ。

いや、まつのよ。今の本題はお互いの齟齬、間違いを正すための話だ。

だから……。


「つまり、ユキ殿はルナ様から無尽蔵の援助などは受けていないということを言いたいのですか?」

「はい。その通りです」


落ち着くのよ。

これは、言い逃れの為のウソ。

そこを指摘すればいい。


「しかし、あの規模のダンジョンや転移ゲートなどは、魔力が足りないのは私も理解しています。その魔力は一体どこから来たのでしょうか? ルナ様以外にあり得ないと思うのですが?」


そう、あんな規模のダンジョンを作るのにも維持するのにも、魔力が絶対に足らない。


「それとも、どこからか人を攫って、DPに変えているのですか? そんな所業を私は見過ごすことはできませんよ?」


魔力を注いでもたかが知れている。

なら残るは奴隷でも買い入れて、殺してDPに変えるぐらいだが、ルナ様の援助を受けていないと言い張るなら、その殺した数は数えきれないでしょう。

そんなことをする相手を野放しにはできない。

どういっても、貴方たちが許されるわけはないの。

しかし、ユキは特に動揺することなく、再び首を傾げて口を開く。


「やはり変ですな。ファイデ殿と同じことを仰る」

「それはそうです。私がファイデにダンジョンの在り方を教えたのですから。で、何が変なのでしょうか?」

「ダンジョンを維持するための魔力を得るための方法ですが、ノノア殿が言ったほかにまだ手段があります」

「……どういう方法でしょうか?」

「ダンジョンの支配下でない生物が長時間ダンジョンに留まることにより、無意識に霧散するそのわずかばかりの魔力がダンジョンに吸収されるのです」


……そんな馬鹿な。

それだと、あれだけ人々を抱えているウィードの魔力が足りなくなるなんてことはない。

いちいち人々を犠牲にする必要もない。

つまり、私たちが見当違いなことを言っているということになる。

残るのは、私たちが異世界人に負けているという事実を認めたくなくて我儘を言っているだけ……。

いえ、待つのよ。

相手の言葉を鵜呑みにしていけない。


「それが真実だという証拠はあるのでしょうか?」

「そうですね。私の方も別のダンジョンマスターと繋がりがあるわけですが、どの方も同じようにダンジョン内に人が一定時間いると魔力を回収できるといっていますから。私だけが特別ではないと言えますね」

「いま、何と言いましたか? ユキ殿はすでにほかのダンジョンマスターと接触しているような発言でしたが……」

「ええ。すでに複数のダンジョンマスターと友諠を結んで協力して魔力枯渇問題に取り組んでいます。無論、リリーシュ殿やほかの神々の協力もあります」

「……」


待ちなさい。

……これってかなりまずいのかしら?

てっきり一人で成り上がっていると思っていたのに、ユキことセラリアを潰せば掌握できるわけではない?

しかも、ダンジョンマスターのみならず、リリーシュ以外の神が協力している?

そんな馬鹿な。この大陸に残っているのは私たち以外には獣神ゴータのみ。

神々って言ったしゴータ以外の神がいるってことよね。どこから来たのよ!?


「まあ、私の口だけでは信じられないでしょうから、ファイデ殿にもこうして同行していただいたわけです」

「そ、そうですね。ファイデ、貴方が見て聞いた話を聞かせて頂戴」


一縷の望みをかけてファイデから否定してほしかったのだけど……。


「ノノア。事実だ。このまま戦いを仕掛ければ、お前たちはただのやっかみ、嫉妬で襲い掛かったという実に馬鹿らしい名しかのこらない。どこにも大義はないからな」

「……」


私はどうするべきなのかしら?

すでにいろいろな工作は仕掛けているし、今更寝返りは許されるのかしら……。

いや、そもそも、問題はなぜここまで認識の違いがあったのかだ。


「……今はまだ混乱しています。しかし、なぜこのような齟齬が生じているのか見当がつきますか?」

「予想でしかないと前提に付きますが」

「それで構いません」


今、ちゃんと話を聞かなければ私の国はなくなる。

そんな気がした。

だってファイデもあちら側だし、これはすでに情報で不利、物量でも不利。

大義もなし。これでどうやって勝てるのよ。


「まず、聞きたいのですがノノア殿は直接ダンジョンマスターとの面識などはないのではありませんか? 情報は誰かから又聞きされたのでは?」

「……そうです。剣神ノゴーシュから聞きました。協力として、実際コアに魔力を注いで送るという行為はしていました」

「なるほど。では、おそらく、ノノア殿は情報を制限されて聞かされ、協力者として担がれたのではないかと考えます。魔術神と言われるあなたであれば、膨大な魔力を供給できるのですから」

「確かに、そちらの言う通りです。しかし、なぜ、ノゴーシュやダンジョンマスターはそんなことを……と聞くのは愚問ですね。自分たちで独り占めしたかったのでしょうね」

「おそらくは」


ちっ、バカだと思っていたあいつも、ちゃんと頭を働かせて、こっちを飼い殺しするつもりだったのね。


「くやしいですが理解はできました。しかし、なぜこのような話をしたのでしょうか? 私の方にダンジョンマスターがいないとも限りませんし、私がだましている側だという可能性も拭えません。ここまで危険を冒して、なぜ私たちと話し合いを求めたのでしょうか?」

「それは、安全の確保ができたからです」

「安全の確保ですか? それはどういう……」


私が続きを促そうとした言葉は続かなかった……。


『文字通り。安全が確保できたからだよ。そして事実を話してあわよくば協力体制、嘘だといって敵対するなら、そっちを捕縛する用意ができていたってことだ』


そんなこの部屋にはいない第三者の声が響いたからだ。

私や護衛たちは慌てて、辺りを見回すが、この部屋に人が隠れられるような場所はないし、私の耳がおかしくなければ声はユキ殿から聞こえている。


『おっと、特にそっちを害する気はないからな。そこのメンバーに手出しはしないでくれ。そうなれば、こっちも捕縛しないといけないからな。で、話の続きだけどな。なぜこんな話をしたかの一番の理由は、知らなすぎるんだよ。ダンジョンマスターについて。だってすでにこの城はダンジョン化してこっちの支配下だしな』

「はぁ!? そんなことができるわけないでしょう。バカにしているのかしら?」


何かいきなりとんでもないことを言い出す、声だけの存在。

そんなに簡単にダンジョンが作れるなら、今頃世界はすでにダンジョンだらけよ。


『馬鹿にしているつもりはない。だからこそ知らないということを信用できるんだけどな。とりあえず、ダンジョンとしてその城を掌握している証拠を、そこのユキから見せてもらうといいさ』


そういわれて、ユキ殿たちを見るが、なるほど、落ち着き払っている。


「……そちらの協力者というのは真実のようですね。で、我が城を手中に収めた証拠とやらを見せてもらえるのでしょうか?」

「わかりました。ではまず、この城の立体的な見取り図でも……」


そういって、ユキ殿がダンジョンマスターとしての力を使ったのか、半透明な城の小さな模型が出てきた。


「これは……間違いなく。私の城」

「納得いただけて何よりです。ほかに確実な証拠といわれると、この部屋にゴブリンでも召喚するのが一番わかりやすいと思いますが、どうされますか?」

「い、いえ。それは結構です」


……どういうこと?

偽物かと思っていたこのユキは、本物のダンジョンマスターだったということ?

では、セラリアはなに?

わ、わからない。一体私はどういう状況に陥っているの!?


『その混乱が何も知らないっていう証拠だ。だから、あんたはただ踊らされているだけと判断して、説得を試みたわけだ。彼の、ユキのナイス判断に感謝しろよ。本来なら問答無用で捕縛か処刑の予定だったんだからな』


声だけの存在の言葉で、ようやく私は自分の状況が理解できた。

すでに私たちはいつ殺されてもおかしくない状況に置かれていたのだと……。







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