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第426堀:天上の神々の会談(標高5m)

天上の神々の会談(標高5m)





Side:ノノア・ウィザード・シャイン 魔術国 女王 




今日も一室で、私はある人物との話し合いをしていた。

しかし、声こそ二人分聞こえるが、この部屋にいるのは私だけ。


『そっちの方はどうなんだ?』


私の目の前には、鏡が置かれていて、声はそこから響いており、その鏡に映るのは私ではない。

そこには、なんとも、偉丈夫な男が映っている。

断じて、絶世の天才美女の名を冠している私の姿ではない。

その男の名をノゴーシュと言って、ある国をまとめている剣の王だ。


「私の方もさっぱりよ」

『そうか……、情報はいまだ集まらないか』


この二国のトップがこうやって話しているのは、ある問題に対してである。

普通ならば、こうやって話すことなどなかった。

お互い、いずれ潰さなければいけない相手。

神として、世界を救うという使命をルナ様より受け、自分こそが、世界を救うにたる真の王者であると証明しなければいけないからだ。

だが、このように一時的にとはいえ、話し合いの場を設けなければいけない事態になっている。

その原因とは……。


『……ユキという奴は一体何を企んでいるんだ』

「そもそも、そのユキという人物が本当に存在するのかすら、怪しいのだけれどね」


そう、ルナ様が異世界より連れてきた、人の子、ユキ? である。

疑問形なのは、そのユキの情報がまったくもってわからないからだ。

無いのではく、わからないのだ。

ユキという人物の情報は調べればそれなりに入ってくる。

しかし、黒かと聞けば白、赤といえば別の答えは青、という真逆の情報ばかり入り乱れるのだ。

しかも、その情報は私たちにとって意味不明で、女好きで奴隷を囲っているかと言う情報があれば、各国からの美姫や献上の奴隷などは受け取らないというし、ウィードの住人に話を聞けば夫婦仲睦まじいというわけのわからない回答がくる。

では、腕っぷしや頭はどうなのだろうと、調べると、最初こそ、ロシュールの姫たちを助けたという話はあれど、それ以降の目立った活躍はなく、お飾りの軍での参謀という役職に収まっている。

そもそも、あの人は戦いなんて好まないという話まであるのだ。

でも、冒険者ギルドで一戦交えた時は、そこそこの冒険者といい勝負の末、勝利を勝ち取ったとも報告がある。

そういうことで、わからないのだ。情報が無数に錯綜して、どれが真実かさっぱりわからない。


『実在するのか怪しい?』


しかし、私の話し相手であるノゴーシュは基本頭まで筋肉でできているので、こういうことを察する力は低い。

勘で戦いを進めるタイプで理路整然と考えて行う私とは基本的に相いれない。


「そうよ。ここまで情報が無茶苦茶だと、ユキという人物は実在していても、それはただのフェイクな可能性が高いわ」

『なぜだ?』

「だって、ルナ様から直々に任命されたダンジョンマスターが、自分の力を誇示しないで、セラリアとかいうお姫様にダンジョンを任せるかしら?」

『それは、そうだな。これでは、名声どころか、自分の欲を満たすのにも使えないだろう』

「そうよ。あくまでもユキはセラリア女王の盾としての側面の方が強いわ。ユキという何にもしない夫を使って、好き勝手に人事や運営をしているという方がしっくりくるわ」

『……確かに、女ですら、拒否してきたからな』

「13人も侍らせといて、追加が欲しくないとかありえないわ。そもそも、王族として子供を沢山作っておくのは、義務でもある。それを拒否するというのは、セラリア女王の意志があるのよ。おそらくは偽物ね」

『では、ルナ様から任命された、本物のユキはどこに行った?』

「私の予想が正しいのであれば、そのセラリア女王がユキね。最初のロシュールのお姫様を助けたっていうのがどうも引っかかるのよ」

『というと?』

「その時点でセラリアを殺し、入れ替わった。姿を真似るなんてのは魔道具や魔物でもあるわ。実際、ウィードに行って女王になってからは、他国に出向いたという話はないわ。つまり、囮を作って、私たちを混乱させようっていうのが狙いじゃないかと思っているのよ」

『たしかに、セラリアがユキというならば、実権は握っているし、名声や権力、富もある。筋は十分通っているな』

「連合なんてものを組み上げるにしても、そっちの立場の方がやりやすいわ」

『……連合か。まったく。厄介なことをしてくれたものだ』


ノゴーシュがにがにがしく呟く通り、この連合が組まれたことは私たちにとってかなりの痛手だ。

世界を統一して世界を救うに足る、力と才を示すということができなくなってしまった。

このままでは、いつまでたっても戦いができず、世界は5大国とそれに追従する小国群から変わることがない。


『競い合うのではなく、このような惰弱な方法で世界が救えるわけがないのだ。必要なのは他を率いる圧倒的な王者だ』

「……そうね」


この筋肉バカの言葉に同意するのは癪だが、私が世界を救うための叡智を築くためにも、このような八方ふさがりの現状は打破しなくてはいけない。

だが、このやり方には正直、賛辞の言葉を沢山送りたいぐらいだ。

わずか数年で、よくぞここまでことを成し遂げたと。

武力でもなく、秘めたる魔術の才でもなく、ダンジョンの力を利用した、弩級の国家間外交戦略。

おそらくは、私たちとはモノの見方が違うのだろう。

人の子であるからこその視点というべきか。

なので、私としては、この筋肉バカと組むより、最終的にはウィードを取り込んだ方が後々有利になると思っている。


「そこはまあいいでしょう。今話してもまとまらないわ」

『そうだな。それを確かめるために、ファイデを送ったのだ』

「その言い方は適切ではないわね。彼は私たちに協力してくれて行ってくれたのであって、部下ではないわよ?」

『変わらぬよ。私たちの用意した農地で畑を耕して税を納めている。部下どころか本来であればただの農民だ』


このバカは……。

治世は部下に任せているから、基本的にこういう政治面はめっきり弱い。

ファイデの農耕技術がよそに行けばどれだけ大打撃かわかっていない。


「……で、ファイデはリリーシュのところにいくと言っていたわね」

『ああ。あの女がユキとは懇意だろうからな。情報も持っているだろう。ダンジョンの真実を伝えれば、ユキとは縁を切るだろうさ』

「真実……ね。ねえ、いい加減私にも、あなたが部下にしたというダンジョンマスターの紹介ぐらいしてくれないかしら? この連絡用の魔道の映し鏡をくれたのだからお礼も言いたいわ」

『残念ながら、このダンジョンマスターの力は凄まじいのでな。失う可能性があることはできない。よって、迂闊に人目にさらすわけにはいかない』


そう、これがウィードを取り込みたいと思う理由だ。

ダンジョンマスターとの協力を取り付けているのは、私ではなく、ノゴーシュなのだ。

つまり、現状のパワーバランスはノゴーシュの方が強い。

ダンジョンに関しての情報は必要最低限で、だれがダンジョンマスターなのかも知らされていない。

まあ、私が知らないのだから、ルナ様がユキとは別に、昔、現地人をダンジョンマスターにした生き残りなのだろうが。

昔はただの多少便利な拠点ぐらいの認識だったが、ユキの使い方を見て、ぜひとも部下に欲しいと思った。

それを、ノゴーシュに先をこされ、焦りがあるというわけ。


「私は魔力を供給しているのよ? それぐらいの権利はあると思うのだけれど?」

『……たしかに。ノノアの膨大な魔力のおかげで、ダンジョンからの供給がスムーズに行っているのは事実だな』


あら?

今日はもうひと押しすれば何かしら情報が得られそうね。

いつもなら、怒って話がなしになるのだけれど。


「まあ、機密であり、下手に人目にさらせないというのはわかるわ。だからせめて、名前だけでもいいから教えてくれないかしら? いつまでもダンジョンマスターなんていうのはあれでしょう?」

『……そのぐらいならいいか。ダンジョンマスターの名前は、ビッツ・ランクスという女だ』

「そう、ビッツ・ランクスっていうのね。今度、何かプレゼントでも見繕って送るわ」

『そうか、それは助かる。彼女も最近警備の厳しさで鬱屈としているようなのでな』

「そうなのね。何か心が安らぐようなものを用意しておくわ。と、そろそろ魔力が持たないわね」

『わかった。次の連絡は3日後でいいか?』

「ええ。3日後には魔力が鏡にたまるから、連絡を取りましょう」


そういって、バカとの連絡が終わる。

そして、鏡には美しい私の姿が映る。

あの疲れる会談が終わっても、なお衰えない美貌と溢れる才。

水晶のように青白い髪が少しだけ乱れている。

髪が長いと、座るっていう行為すらも気を使わないといけないのが難点ね。


「しかし、ビッツ・ランクスって、異世界の勇者に追い出された、ランクスの姫の名前じゃなかったかしら?」


思わぬ情報がバカから聞けたので、こっちはこっちで情報を集めましょう。

でも、あのお姫様がダンジョンマスターなんて聞いたことがないし、年が若すぎる気がするのだけれど、まあ調べてみないとわからないわね。

私はいまだ、ダンジョンマスターの力を正確に把握していないのだから……。


「さて、ウィードの方はファイデからの情報待ちだし、今はロシュールの工作に力を入れる方がいいわね。だれか!!」

「はい。お呼びでしょうか?」

「会談は終わりました。少しの休憩の後、ロシュールへの話し合いの方を詰めたいと思います。各部署に連絡を入れておいてください。会議室で行います。あと、他のほうはまだ動くなと」

「かしこまりました」


そういって、メイドが下がる。

その手には木製の指輪がはめられていて、杖の代わりになるものだ。

性能も並ではなく、通常の杖の3倍ぐらいは効率が違う。

私の、数百年に及ぶ研鑽のおかげで、この魔術国における攻撃魔術の使用可能者は90%以上という驚異の数字をたたき出している。

これはほぼ全ての国民が魔術師として戦争に参加できるということだ。

ここまで頑張ってきた魔術国を、ぽっと出のルナ様頼りの男に潰されてなるものですか。


「というか、私との面会をよくも断りやがったわね!! 絶世の美女である私との面会を断るんだから、ユキが男なわけないじゃない!!」


そう、実を言えば、ウィードができたころ、ロシュールを伝手に会談を申し込んだのだが、却下されたのだ。

なにが、ユキ様は国防のためウィードから離れられませんよ。

あんたが偽物だから動けなかっただけでしょうに!!


「ま、あの屈辱を晴らしたあと、部下に迎えればいいのよ。まあ、私との差を見て絶望するしかないでしょうけど」




Side:ユキ




今日も、お仕事が終わって、お家で一家団欒。

はぁ、癒されるね。


「ぱぱー」

「はいはい。どうした、サクラ?」

「だっこー」

「わたしもー」

「よしよし。スミレも一緒に抱っこだな。よっと」

「「きゃー」」


うむ。

娘はかわいい。

最近は語彙もふえて、自分のやってほしいことを一生懸命喋るのがたまらん。

横で見ているセラリアとルルアも娘たちを見て微笑んでいる。


「あらあら、パパが大好きねー」

「そうですね。旦那様が大好きですね」


そうでないと困る。

娘たちに嫌いとか言われたら、一か月ぐらい引きこもりそうだ。


「そういえば、ノノアの名前を聞いて思い出したのだけれど、ウィードができたころに面会の希望が来てたのを覚えているかしら?」

「え? そんなのがあったか?」

「まあ、ノノアだけじゃないし、山ほどあったからね。でも、あの時の即断は驚いたわよ」

「ええ。大陸一の絶世の美女と言われる、ノノア様の面会の希望を特に悩むも事もなく……」


『いや、ダンジョン外にでるとかありえないし。絶世の美女とか興味ねーし』


「で、即座に無理の返事を書くように言い渡されました」


ああ、そんなことがあったのか。


「正直あの時、あなたと結婚できたのがどれだけ奇跡かと思ったわ」

「はい。絶世の美女ですら一蹴でしたから」

「いや、大事なのは、こうやって仲良くやれるかだろう? なあ、サクラとスミレも仲良くできる人の方がいいよな?」

「うん」

「なかよくー」


そうそう、人は仲良くすればいいんだよ。

美人だから、神だからとか言って意地を張るとか勘弁願うわ。





なんか最近台風ばっかりだけど、みんな大丈夫?

福岡はなんか台風からはずれてるからそこまで被害はない。

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