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落とし穴72堀:夏の夜の納涼 究明編 

夏の夜の納涼 究明編 





Side:タイキ




思ったより、大事になってきたなー。

ってのが俺の感想だ。


だってさ、肝試しをしたからって、本物が出るわけでもないし、ただの勘違いだろー、で終わるのがお遊びの肝試しだ。

が、この人たちはガチだった。ばっちりと、どこかの心霊特集で必ずある、霊をとらえようと、あちこちにカメラとかを仕掛けて検証するようなやつだ。

まあ、それはいい。

ユキさんやタイゾウさんの性格を考えればやるだろうと思っていたし、俺もそういうことはやってみたかったので、喜んで協力した。

だが、まさか本物に出くわすとは思っていなかった。

だってさ、ここ異世界だぜ?

作り上げた環境なんだぜ?

それで、本物にでくわすとか思わないだろう?

しかも、映像とかコールでの監視状況を確認するに、生物でも、魔物でもないと来たもんだ。

文字通り、俺たちの知らない何かが潜んでいるということ。

アイリを先に帰して正解だったな。

そうじゃないと、俺は絶対これからの現場潜入に参加できなかったと思うから。


そう、これから行うのは、現場潜入での調査。

よくテレビである、魔界潜入とか、芸能人突撃リポートみたいな夏のやらせ特集みたいなものだ。

まさか、自分がそういうことをすることになるとは全く思わなかった。

で、実際準備を整えていると、やっぱり怖い。

今は勇者で王様だが、やっぱり得体のしれないものは怖い。

だってさ、地球の幽霊とか、最悪なのは目を見るだけでもアウトとか、ブリッジして追いかけて来るとか、白い猫子供とか、四つん這いの主婦とか出てくるんだぜ? しかも、そのどれもがほぼ死亡確定ときたもんだ。

異世界の魔物より、よっぽど性質が悪い。

いや、バジリスクとか石化してくるやつはいるけど、ああいったのとは別。

質が違うというか、異次元というやつである。


「よし、準備はできたな。じゃ、俺とタイキ君で様子を見てきます」

「ああ、こちらのサポートは任せてくれ。だが、そちらで危険を感じたのなら即座にもどってくれよ?」

「わかっています」

「まだ死にたくないですからね」


本当に死にたくないから、何かあればすぐに勇者パワー全開で戻ってきます。

真面目に、フルパワーで。


「えーと、ユキさん。なんで私たちは待機なんですか?」

「……ん。不満。サマンサ代わって」


俺がそんな逃亡計画を考えていると、タイゾウさんと一緒に待機することになった、リーアさんとクリーナが不満をこぼしていた。

いや、お二人は……。


「2人はパニックになりそうだからな。リーアはさっきジェシカに抱き着いていたし、クリーナのほうは、魔術を何とかしてぶっぱなしそうだからダメ」


そうそう。

こういう心霊現場において一番やっちゃダメなのが、パニックを起こして単独行動をとること。

心霊現象でのお約束は幻覚などで、気が付けば崖から真っ逆さまというのはよくある。

これは、パニックを引き起こした結果、冷静に周りを見れなくて、正常な判断ができなくなるのが原因。

心霊現象でなくても、この手のパニックによる事故は結構地球でも例があるので、その可能性がある人間はなるべく排除するべきだ。


「むー……」

「不満」


が、そういうのは地球での話であって、そんなことを理解していない2人にとっては置いてけぼりとあまり変わりないよな。


「タイゾウさん一人だけじゃ問題があるんだよ。こういうモニター監視も複数人いるんだ。リーアとクリーナのほうがジェシカやサマンサより得意だと思ったんだよ」

「ああ、ジェシカは機械音痴だもんね」

「悪かったですね」

「納得。サマンサは機械に慣れていない」

「理解力が尋常でない、クリーナさんと一緒にしないでくださいな」


そういうところで納得しちゃうか。

でも不思議だよな。アイリとかも一定以上の機械を扱えないんだよな。

なんでだろうな?

地球でも機械音痴とか普通にいるし、ああいうのは本当に不思議だ。

近場にグレムリンでもいるんじゃないだろうか?

グレムリン。それは、機械に不具合、誤作動を引き起こす妖怪、悪魔。

そう考えると、ビデオや携帯電話などがかかわる怖い話は、このグレムリンが起源なのかもしれないな。

いやー、でもさ、悪辣さはビデオの人とか最悪だけどな。


「と、もうすぐ2時になるな。さっさと行くか」

「「「はーい」」」


ということで、再び、あの廃旅館へと向かう俺たち。

詳しい時刻は深夜1時37分40秒といったところ。

林の道は特に問題はなく、静かだ。


「そういえば、ユキさん。このダンジョンの風とかの設定はどうしているんですか? 風が出てるなら、それでほかのところが倒れて、振動が伝わって……とかありそうじゃないですか?」

「そういう可能性もあると思ってな。本日は無風にしてるんだよ」

「……そうですか」


うん。

話を聞けば聞くほど、さっきの人の手が本物という可能性が高いとわかってくるな。

正直、良いのか悪いのかさっぱりわからん。

こうさ、幽霊をパシャっと撮ってダメージを与える事ができるカメラとかないですかね?

コンボでダメージアップとかフィルムの種類でダメージが上がるとかさ。

こえーんだよ!! 対抗策くれ!!

これ、絶対本物がいるよね!?


「おちつけ、タイキ君。口に出てるぞ」

「すみません」

「ま、心霊特番みたいに、一人で部屋に待機とかはないから心配するな」

「そんなこと頼まれたら逃げますから平気です」

「そして、一人で逃げて襲われるとかパターンだな」

「いやなこと言わないでくださいよ」


よくあるパターンだよな。

こんなところにいられるかー、って言った人が飛び出して、死体になってカムバックするのって。


「最悪、ここを一気に更地にして、ライトアップすれば本物がいてもどうしていいかわからんだろう」

「……そうですね。ユキさんが相変わらず、鬼だというのがわかります」

「失礼な。有効な対抗策を言っただけなんだが」


確かに、それ以上の対抗策はない気がする。

幽霊とかは人の死角などからでてくる。

無論、その死角というのは、柱の陰とかも利用するのが基本だが、それが全部なくなれば、存在していると仮定されている幽霊はどうなるのだろうか?

いまだかつて誰も試したことがない、幽霊が出た瞬間に周りを更地にして、逃げ場をなくす大作戦。

幽霊泣かせな作戦ですわ。血も涙もないですわ。


「ユキ。廃旅館が見えました」

「……とりあえず。魔物などの気配は感じませんわね」


くだらない話をしている間に、廃旅館についたようだ。

ライトに照らされて、ぼやーっと玄関だけが映る様はなかなか、恐ろしいものがある。

ホラー映画のオープニングみたいだ。

そんな感想はどうでもいいので、さっさと中に入っていく。

さっさと調べてさっさと帰る。

これが一番だろう。

気味の悪いところに長居する理由はない。

すたすたと迷いなく、人形が置いてある部屋にたどり着く。

映像と同じように、人形がコロンと転がっている。


「タイゾウさん。問題なく部屋につきました。そっちは何か問題はありましたか?」

『いや、映像を見る限りなにも変化はない。リーア君やクリーナ君はどうだい?』

『こっちも特に問題ないです』

『……こっちも問題なし』

「わかりました。これから現場検証を開始します。何かあれば連絡をください」

『了解』


俺たちはカメラを各々持って、部屋を撮り始める。

俺が持ってきたビデオカメラは一旦机に置いて、心霊写真が撮れないかをためす。


「あとは、落ちた人形を調べるか。そういえば、タイキ君。人形が置いてあった段の裏はどうだった?」

「何もありませんでしたよ。一応、動画と写真は撮りました」

「そうか、じゃ、録画したままこっちに来てくれ。人形を調べてみる」

「了解」


ユキさんは特に怖がることもなく、床に落ちた人形を拾って調べる。

見る限り、特におかしい様子はなさそうだな。


「……特に変なところはないな。この人形が置いてあった位置はあそこか」


そういって俺も、人形が置いてあった場所をみる。


「こっちも特に何もないですね。虫とかもいないし、なんで動いたんですかね?」

「映像ではゆっくり動いてたから虫かと思ったけど、見つからないな。ジェシカ、サマンサはどうだ?」

「いえ、虫らしきものは見つかりません」

「こっちも見つかりませんわ」


しかし、この状況下で淡々と調べ物ができるこの女性二人はすごいな。

流石軍人さんと貴族の娘さんだ。

怖いものは幽霊より現実の人間というやつなんだろう。


『ユキ君いったん部屋を出てくれ。そろそろ2時だ』

「了解。いったん部屋の外に出るぞ。タイキ君はこの人形に合わせてカメラを設置してくれ」

「ういーす」


とりあえず、心霊現象が多発する時間になるので、人形をもとの場所にもどして、監視体制を強めてからいったん部屋の外にでる。

脅かす相手がいないとでないのでは? とは思ったが、そんなことを言い出したらどう考えても俺がその役になるので勘弁願う。


「暇ですね」

「なら、ここら辺をぐるっと撮影してくるか? 予備は持ってきているだろう?」

「すみませんでした。許してください」


俺たちはのんびり廊下で丑三つ時が過ぎるのを待っていた。

タイゾウさんからの連絡もないし、何も問題なく、廊下で座っているだけ。

何やっているんだろうな。

気が付けば、ジェシカさんとサマンサさんは眠っている。

神経太いなー。


「ここまでなにもないとな。眠くもなるさ」

「確かに、でも、アレなんだったんでしょうね?」

「さあ。まだ現場検証だけだからな。これを持ち帰って改めて調べてみると何かわかるかもしれない」

「そっかー。あ、そういえば、ありがとうございます」

「急にどうした?」

「いやー、こうやって、夏の遊びをできるとは思わなかったですからね。もう、一生、異世界で勇者をやるばかりと思ってましたから」

「あー。普通ならそうだろうな。まあ、余裕があったってことだ」

「余裕すぎますけどね」


おかげで、地球に帰れないとか思って癇癪を起してたり悲嘆にくれる暇もない。

また日本の夏を体感できるなんてね。


「そういえば、蛍とかは?」

「蛍は夏と勘違いしやすいが、5月後半から6月だから、時期が違うぞ」

「え!?」

「まあ、種類によっては夏にも飛ぶが、基本、蛍の時期は6月ごろが一般的だな」

「しらなかったー」


なんというか、今更知った新事実だ。

しかし、言われてみればそんな気がする。

夏にしてはまだそこまで暑くないような時期だった気がする。


「じゃあ……」

「それは……」



と、こんな感じで、心霊現象の究明は俺とユキさんの夏談義で気が付けば終わっていて、そのまま撤収するのであった。

あったあった、夏休み、友達を延々とだべって、気が付けば朝日が昇っていたとか。



本当に、懐かしいわー。





あるある話。

学生のお泊り会とか、気が付けば朝だったとかざらだよなー。

肝試しとかも何もなく終わるのが普通だよな。


さて、そこはいいとして、記録してきた映像には何か映っているか!!

次回、解決編。

君は生き残れるか?

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