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第410堀:新しい風たち

新しい風たち





Side:トーリ




「これからよろしくお願いします」

「ひゃ、ひゃい。よろしくお願いしましゅ!!」


そんな感じで、噛み噛みで挨拶をしているのは、現ウィード警察署長のポーニ。

もう、代表になって、結構経つのにこんな感じだ。


「あれでよく、代表になった時の挨拶とか、今の署長職やってられますね」

「緊張しやすいみたいだよ」

「……いつか緊張のし過ぎで死にそうですけどね」

「仕事となるとすごいから」

「ああ、そういうタイプですか。そういえば、代表就任のあいさつの時はあんな感じではなかったですね」


私とラッツは噛み噛みな挨拶をしている、ポーニ署長を見つめている。


「でも、これも仕事の一環じゃないですか?」

「たぶん。個人的なって言ったからだとおもう」

「あー。まあ、確かに今回の挨拶は代表同士というより、個人的にお願いに来たってかんじですからね」


そう。

今日は、何かあったときは、速やかに協力が得られるよう、ラッツの後継者の商業代表にお願いにきたのだ。

私とラッツは固い友情があるから、何も問題はないけど、この二人は、お互いのことをほとんど知らない。

お仕事だけで顔を合わせるというのは、色々と誤解を生みやすいし、相手のことを理解しにくい。

マニュアルだけでなく、親交を深めることによって、手を取り合った大きなことができる。

与えられた仕事だけをすればいいというわけではない。常に上を目指すために必要なことだと私は思って、こうやって、挨拶回りをしている。


「署長さんはもっと、お堅いイメージだったんですけど。思ったよりもかわいらしいんですね」

「あ、はい。すみません……」

「ごめんなさい。悪く言ったつもりはないんです。ラッツ先輩みたいに、こうガツガツしてなくて、私としてはうれしいですし」


……まあ、ラッツはお店の経営とかは厳しいからね。


「おいこら。代表、ちょっと向こうでお話ししましょうか?」

「え!? あ、いや、違うんですよ!? 先輩、ほら、あれです。言葉の綾って……」

「じゃ、トーリ。すみませんがこれからすこーし用事ができましたので」

「あ、うん。ほどほどにね」

「え? え?」

「署長さんはこの馬鹿でよければ仲良くしてやってくださいね。ではではー」

「きゃー!? ポーニ助けて!? 拉致誘拐の現行犯ですよ!?」

「やかましいですよ。なにか? 本日中に、夏祭りの予算組みたいって?」


ラッツがそうつぶやくと、すっかりおとなしくなって……。


「あ、ポーニさん、トーリさん、お気をつけて帰ってくださいね」


引きずられながら、いい笑顔で言ってきた。

うん。なんというか、ラッツのかわりに代表になっただけある。納得だ。


「あ、はい。ありがとうございます」

「お邪魔しました」


とりあえず、目的の挨拶はしたからいいか。

もうちょっと話せたらなーって思ったけど、それは私がではなく、このポーニが頑張らないと意味がないんだよね。

仕事になるときびきびしてるからいいんだけど、こうも私生活面が弱いと心配だよね。

私としては、そこさえ治ればいい署長になるとおもうんだけどなー。

ま、これからだよね。

そんなことを考えながら、暑い日差しの中を歩いて警察署に戻ってきた。

そういえば、逃げたリエルに代わってデリーユに書類仕事頼んできたけど、大丈夫かな?

あの二人は、部下からの信頼厚いんだけど、現場主義なんだよね。

それが悪いとは言わないけど、自分の分の書類ぐらいはやってほしいよ。

そういう意味で、リエルは副署長から降りたんだけど、リエルがポーニのサポートなんかしたら、きっと書類地獄で死んでるね。


「「署長、副署長。お疲れ様です!!」」

「はい。お疲れさま」

「お疲れ様です。暑いですから、水分補給はしっかりしてくださいね」

「「はっ」」


そして、警察署内にはいると冷房が効いていて涼しい。

はぁー、生き返るね。


「さっさと、署長室に戻って、冷たいお茶でも飲もう」

「はい。そうですね」


あと、仕事をちゃんとしているか真っ先に確認しないといけない。

で、署長室に戻ってみれば……。



「……というところじゃな」

「だねー」

「ギルドのほうとあまり差異はないか」

「正直な話、向こうは国外にも拠点がある分、相互確認という点では圧倒的に優れておる」

「僕たちができるのは、あくまでも、ウィード内だからねー」

「当然の話だな」


なぜか、ユキさんたちが来ている。


「お? 帰ってきたな」

「あ、お帰り。トーリにポーニ」

「うん。ただいま」

「はっ!! ただいま戻りました!!」


なぜかこの署内で一番偉いポーニが一番緊張して敬礼していた。


「あー、そこまで固くならなくても」

「そういうわけには参りません。先輩たちや、この国の守りを預かっている軍の参謀であり、セラリア女王陛下の王配であるユキ様に失礼な態度はとれません」


あ、ユキさんが主な原因か。

そういえば、ウィードじゃ二番目に偉いんだよねー。

全然そんな素振りしないし、私たちにとっては旦那さんだからあまり意識してなかったよ。

普通にウィードの人たちともフランクだしね。


「で、こちらにいらっしゃったということは、何か問題でもあったのですか?」

「あ、まー、ちょっと聞きたいことがあったんだが、署長さんやトーリが不在で、デリーユとリエルに話を聞いていた」

「なるほど。よろしければ、私たちにもう一度、お尋ねしたいことをお話ししてもらってもよいでしょうか?」


……うん。やっぱり仕事となるとすごいよね。

すでに、デリーユが散らかしている書類をささっとまとめて、机の上を綺麗にしている。

しかも、未決裁書類と、決裁済み書類をしっかり分けてるよ。


「いいよ。本来であれば、署長と副署長に聞きたかった話だから。実は……」


そういって、ユキさんは今回警察署に訪れた理由を話し始めた。

内容は、ウィードにちょっかいを出している国の総洗い出しみたいな話だ。

半年ぐらい前までは露骨だったのが、最近はなんか搦め手になっているんだっけ?

私たちが新大陸で忙しい間に、ウィードはウィードで新しい問題がでてきていて、今後はそれに力を入れるって言ってたもんね。


「なるほど。で、デリーユ特務やリエル特務のお話しはなんと?」

「罰する域にはないって話で、裏をとろうにもうかつに動ける状況じゃないってところかな」

「そうですか。……申し訳ありません。私としてもなにか新情報があればいいのですが、特務たちと同じような情報量です」

「そりゃ仕方がない。下手をしなくても裏で他国が絡んでくるから、警察じゃどのみち追えない場所がある。ウィード国内で拘束しても外から圧力がかかるか、知らぬ存ぜぬで通されればおしまいだからな」

「おっしゃる通りです。ですので、私はそういった噂を出ない域に対しての専門の部署を作るつもりです」

「噂のための?」

「はい。ユキ様がおっしゃったように、そういう国民の不安を煽るまでではないものの、そういう国の安定を揺るがすような話はちゃんと調べておかないといけないと思ったのです。正直、作るか悩んでいた部署だったのですが、ユキ様からお話があったので決心がつきました」


あれ?

そんなことを考えていたんだ。


「しかし、そんな働いているかわからないような部署は嫌われるんじゃないか?」

「はい。そのとおりです。ですので、普段は警邏隊ですね」

「ああ、街の治安を維持するがてらってやつか」

「そうです。新しく部署を作ると大げさに言いましたが、警邏隊の内数名に噂を集めさせるだけです。今までは、住民の苦情や依頼などで、噂を調べるという形になっていました。しかし、こうすることで、警邏隊自らが、噂を集めて調べるという行為ができるようになります」

「なるほどな。実害がないと動けないっていう枷を外すわけか」

「はい。しかし、実害がないと押さえられないので、噂を集めるだけです。……恐らくは庁舎のほうや、セラリア様のほうに報告が行く形になると思います」


よく考えてるなー。

私より署長向きだと思うよ。


「幸い、噂が集まりやすいスーパーラッツの代表とは顔合わせをしていますので、協力も取り付けやすいと思います」

「そこまで根回ししてるのか。あとは冒険者ギルド関係か?」

「はい。あちらとも協力ができれば効率は上がると思います」


……いや、顔合わせの時、噛みまくりだったけどね。

何が彼女をここまで変えるのだろう?


「残るは、予算をどこから捻出するかだな」

「……はい。そればかりは悩んでいます」


あー、確かに、新しい部署を設立とか、実質ほかの部署の分隊みたいな扱いとしても、それなりにお金がかかる。

設立費とか、人件費とか、まあいろいろ。


「そこらへんは俺から、セラリアやエリスに話してみよう。ポーニ署長の意見には俺は賛成だから、協力させてもらうよ」

「ありがとうございます」

「後日、そうだな必要書類を作るのにどれぐらいかかる?」

「……だいたい、一週間ほどあれば」

「なら、一週間後にとりにくるよ。それで、セラリアとエリスの協力はとれるだろう」

「お願いします。あと……」


しっかりとユキさんと話すポーニを見て感心していると、リエルやデリーユが私の近くに来ていた。


「すごいねー。僕には無理だね」

「思ったより逸材じゃったな」

「うん。そうだね」


頑張っているのは私たちだけじゃないってわかるし、うれしい。

こうやってみんなでウィードを作って守っていくんだって。


「あれ? そういえばドレッサも一緒に来てるけどなんで?」

「私もこの話に協力しようと思ったのよ。最近、色々町中でお手伝いのクエスト受けている時に、色々噂を聞いていたから」

「なるほど」


確かに、そういうことなら役に立つかもしれない。

と、その話を聞いたのか、ポーニがこちらに向かって口を開いた。


「トーリ副署長とお話しをしているのは、ドレッサさんでしたか?」

「え? はい。そうですけど」

「先ほどのお話しを聞かせてください。冒険者ギルドのクエストをうけて、ウィードのお手伝いで噂話を聞いたとか?」

「はい。今日は清掃のお手伝いで、公園を掃除していて……」

「なるほど。どうでしょう? よろしければ、新しく作る部署に入りませんか?」

「ええ!?」

「無論、ドレッサさんは警察官の採用試験を受けたわけではありませんので、外部協力者という扱いですが、ちゃんと報酬は支払います。いろいろな仕事に従事しつつ噂を集めるというのは、実に素晴らしいものだと思いました。どうでしょうか?」

「え、え? えーっと、ユキはどう思うの?」

「別にいいんじゃないか?危険な事はドレッサが自分から首を突っ込まなければないだろう。普通に仕事してればいいだけだよな?」

「はい。その通りです。危険なことはこちらに任せてください」

「えーっと、なら、よろしくお願いします」


そうして、ドレッサが外部協力者として、噂集め部署への配置が決まった。

見事な若者たちのやる気や働きに、私たちはお役御免かな?なんて言ったら。


「何を言うとるんじゃ。妾たちも若いではないか」

「いや、デリーユは歳的におばあ……」

「よし、リエルこれから組手じゃ」

「ちょ、ちょっと!?」


うん。

私たちもまだまだ若いよね。

ただ、ウィードではなく、ユキさんを支えるってことに移行するだけ。




こうして、ドレッサがこの問題に本格的に首を突っ込むことになりました。

さあ、相手の国々は何を狙い、こんなことをしているのか?

黒幕はどこなのか!!

そして、ユキはこの相手たちにどのような戦いを挑むのか!!


まあ、その前に、落とさな連続です。

定番の心霊系。

水着回は去年やったし、みたい人いる?

それなら心霊系が終わったあと書くか考える。

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