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第401堀:処刑執行 祝ってやる

処刑執行 祝ってやる





Side:ユキ




さーて、緊張の一瞬だな。

これで死罪とかを求められてもこっちとしても困るから、何とかしてそれはやめてもらわなくていけない。

かといって、無理に要求を棄却しても、これからの協力は得られないだろうから、色々ダークなことになりそうだよな。

ドッペルでの総入れ替えという、悪辣極まりないやり方か。

ヒフィーとコメットをウィードで隠居させるか。

なんとか、穏便な回答が出ますように。


「ルナ様、私は……ヒフィー殿、コメット殿に対して、処罰は求めません」

「あら? いいのかしら? 流石に死刑は今までの功績からできないけど、他ならいいのよ?」

「功績だけでいうのなら、その功績すらだせてない、私たちこそ処罰されるべきでしょう。ただ、無駄な努力を続けて事態を悪化させていたのですから」

「そこまで自分を卑下しなくていいのよ。私としても、ノーブルたちの頑張りはラビリスやヒフィーたちから聞いているから」

「はっ。そのお言葉、とても嬉しく思います。しかし、私共はヒフィー殿、コメット殿に処罰を求められる立場ではありません。同じようなことをしてしまったのですから」

「同じような事?」

「陛下!? あのことは、私の責任です!! ルナ様、処罰はどうか私めに!!」

「いや、ビンゾだっけ? 何も聞いてないし、処罰とかしないから、まずは話してよ」


同じような事ってどういうことだ?

魔王戦役のようなことがあったか?


「ビンゾ。その作戦の許可を出したのは私だ。なれば、その責任は私が負うべきなのだ」

「あーもう、どっちでもいいから早く話してよ。話が長いってことで正座の罰与えるわよ」


お前はもうちょっと主従の感動的シーンを見守ろうって気持ちはないのか。


「はっ。簡単に申しますと、私も手違いで一国を滅ぼしてしまいました。大小はあれど、目的は魔力枯渇をどうにかするための戦力の確認という名目での出来事でした」

「一国をね。で、その国の名前と細かい理由は?」

「はい。その国の名をナッサ王国といい、飢饉から救い、その関係で軍事行動を容認してもらっていました。そして、極秘裏にダンジョンの魔物を連れて進軍する演習をしていたのです。しかし、予想外のことが起こり、魔物が野生化して暴れだし、その場の担当の者ではどうしようもなく、私に話が来た時には既にナッサの王都が攻め落とされておりました」

「なるほど……ね」


……そういうことか。

わざとではなく、制御できなくなったのを慌てて追ってきたのか。

で、ドレッサに詰め寄られたけど、事実を言うわけにもいかず、とりあえず国民が安心できる手段を取ったわけだ。


「原因としては、魔力の消費量が想定より多く。魔法生物は直ぐに消滅。ゴブリンやオークなどは空腹で理性を無くし、暴れ始めたという次第です」


あー、うちの連中はちゃんと教育しているし、飯は食わせているし、ダンジョンのバックアップが無くても野生化することはない。自分で食料とったりするから。

だけど、ただのダンジョンのモンスターはいうことを聞くだけの猛獣みたいなものだから、餌が無いと暴れるわな。


「結果、ゾンビにした方がリッチに指揮をとらせるだけでよかったので、楽だったのです」


なーるほど。

外で制御するために、リッチをつかってゾンビ化していたわけか。

暴走しても、あの魔力減衰アクセサリーの効果が切れれば自滅するし、管理はしやすいな。


「このように、意味合いだけを見れば、ただ国力をつける実験をしていただけにすぎません。コメット殿のように魔力枯渇の解決策を実行しようとしていたわけではありませんので、自分の小ささに恥は有りますが、それで世界の命運を悩んでいたコメット殿を処罰や非難する気など毛頭ありません」


ほっ。ノーブルが想像以上に理性的で助かったわ。

これを別室で見ているドレッサも多少は納得しただろう。

ノーブルが神様で大きな使命を背負っていると分かってもらえれば、なんとかなるかなーって思ったけど。

ちゃんと、ナッサ王国のことに対してもひどい罪悪感を抱いていることがわかったんだ。

ドレッサがこっちに飛び出してこないし、アスリンとフィーリアが上手く押さえられる程度ってことだ。


「だってよ。よかったわね。ヒフィー、コメット」

「はい。ノーブル殿、申し訳ございませんでした」

「色々苦労かけてごめんねー」

「いや。こうやって我が臣下と出会えたのは、2人のおかげでもある。色々あったが、今の立場も悪くない。取り返しのつかないことをする前に、止められたのだ。これから協力していければと思う」

「はい」

「うん。よろしく頼むよ」


そう言って、ヒフィーとコメットがノーブルたちと握手をしていく。

後始末とか、細かい調整などはあるだろうが、これで大体和解は成立だよな。


「いやー、仲良きことは美しきかなってね」

「ほっ」


ヒフィーは和解がなって、これ以上の罰ゲームはないと安心したのかホッとしているが、そんなに甘いわけがない。

というか、これからの罰ゲームはある意味ご褒美でもあるし、今後の結束力の向上にも必要なので、やらないわけにはいかないのだ。

あと、俺たちからヒフィーへの罰でもある。

そっちの保身の為に大陸が危険に晒されたのだ。

当然、その報いは受けてもらう。


「さて、コメット」

「ラジャー!! 全員、用意はじめ!!」

「用意? なんのですか?」


俺の「次の罰ゲームへ」のカンペを見た、ルナとコメットはにやーっと笑って、指示を出し始める。

ヒフィーは知らされていないので、分かるわけがない。


「大将。マジでやるんすか?」

「当然」


スティーブはやりすぎじゃね? って感じで見てくるけど、これは俺たちが楽しみたいだけではない。


「はぁ。本当に大将を敵に回したくはないっすね」


スティーブは渋々準備に参加し始める。

お前な、俺が血も涙もない悪魔とか思ってないだろうな?

ちゃんと礼には礼を返すぞ。無礼には遠回しに潰す。それだけ。

歯には歯をみたいに、分かりやすい仕返しするわけないじゃないですかー。

結果的に、仕返しできないようなことをするに決まっている。

それはなにか……。

その答えは照明が落ちて、スタジオのスクリーンに映像が映る。


『と、そこは実際会ってからだからいいとして、いま大事なことが別にあるんだよ』

『なんですか? 別の大事なこととは?』


そんなことをいうコメットとヒフィーが狭い部屋で話しているシーンが映る。

窓から映る風景がゆっくりと動いていることから、この場所が馬車であると窺えるだろう。


「ん? ヒフィー殿とコメット殿が映っているな。 どういう催しだ?」

「さあ?」


ノーブルたちは理解できずに、不思議そうに趣旨がわからない映像を眺めている。

だが、この続きを知っているヒフィー本人の顔は真っ青になってから、真っ白になり、真っ赤になるという百面相をしていた。


「も、もしかして……」


ヒフィーは予想が付いたのか、そう呟くが時は止まらない。

その声を聞いたルナとコメットは満面の笑みでヒフィーを見ている。


「ちなみに、これ放送しているわよ」

「そうそう」

「きゃーーーー!? な、なんてことをしているんですか!? と、止めてくだちゃい!!」


だが現実は無情であり、ヒフィーの言葉に応じる者はおらず、映像は流れ続ける。

見ているというのは、当人たちも含めて、関係者全員のことである。

逃げ道を塞ぐのが基本だ。


『そりゃー、友人の恋だね』

『恋?』

『ありゃ、自覚がないのかな? それとも自分のことを言われているって分かってないのかい?』


既にヒフィーは錯乱して、暴れだそうとしているが、ルナとコメットにより羽交い絞めにされている。

マジ泣きする寸前の顔にみえる。


「ひ、ひどいです!? こんなのあんまりです!!」


いや、お前等は真面目に対応すると、己の志に殉じたって態度とるから、こういう方向の方がかえって罰に相応しいんだよ。

ほれ、ヒフィーの錯乱っぷりをみてノーブルたちも引いているし。


「な、なんだ。ルナ殿、なぜヒフィー殿はそこまで取り乱しているのですか?」

「あー、まあ、見てなさい。これがけじめってやつよ」

「は、はぁ……」


そして、一番大事な言葉が映像から発せられる。


『だ、だ、だ、誰が、恋などと、わ、わ、私とタイゾウ殿は、き、清く、ただ……』

『いや、誰も相手がタイゾウさんとは言っていないけどね。分かりやすくてありがとう』


一瞬の沈黙。

そして、嗚咽。


「ううっーーー……。ぐすっ、ひ、ひどいです。わ、私が、何を、したって……」


いや、この大陸を未曽有の危機に陥れたでしょうに。

しかも、魔王戦役とヒフィー自身の行動とエクスでの隠ぺい工作と三回も。

だが、それを言うわけにはいかない。

俺から言うべきことではないのだ。


「……あー、その。けじめの趣旨は理解しました。しかし、私としてはもうこれ以上は求めませんので、どうかヒフィー殿を許してはくださいませんか?」


ノーブルがそう言うと部下の皆さんも気の毒そうにヒフィーを見て頷く。

よし、言質は取った。

ルナとコメットはヒフィーの束縛を解くと、ヒフィーは暴れだすこともなく、その場で両手で顔を覆って泣き崩れた。


「ひどいです。こ、こんなの、あ、あんまりです……」


さて、このままだと後味は悪い。

だが、ここで終わるわけがない。

既にその内容を知っている俺たちが、当人を連れて来ていない訳がない。


「なーに、泣き崩れてるのよ。臆病なあんたを、後押しするため、コメットが必死に考えたんだから」

「え?」

「ここまでやれば、もう後には引けないだろう? さあ、記録じゃなくて本人にちゃんと思いをぶつけなよ」

「ぐすっ、本人? 本人!?」


ヒフィーはようやくコメットの言っていることが理解できたのか、辺りを見渡すと、1人の人物がヒフィーに近づいていた。


「あー、なんというか、そういうことだったのですね。コメット殿」


俺たち日本人の感覚としては、古めかしい軍服を着た人はタイゾウさん。

彼は料理人や罰ゲーム責任者ということで、ここに来ていたのだが、こっちが本命だったりする。


「そうだよ。けじめとしては、ちゃんと許しはもらえたから、あとは、2人の気持ち次第かな。流石に、私も友人を生贄にささげて不幸になるのを見て喜ぶほど、腐っちゃいない」

「いまさら、種族とかくだらない言い訳は通じないわよ。やればちゃんと子供できるから心配はしないでいいわ!!」

「「……コホン」」


ルナの発言に当人2人は赤面して、わざとらしい咳をする。

まあ、あれは駄目神が悪い。


「ま、ヒフィーには今まで散々恥をかいてもらったし、この先もヒフィーに任せるなんてことは言わないわよね? 大和男?」


ルナはにやにやしながら、そうタイゾウさんを見つめる。

お前は本当に、真面目な顔はできないのか。

しかし、タイゾウさんはそのルナのむかつく顔に文句ひとつ言わず、頷いて、床にへたり込んでいるヒフィーに片膝をついて、手を差し出す。


「……ヒフィー殿。頭の固い朴念仁と自分でも自覚はあります。こうされるまで気が付かなかったのですから言い訳のしようもない。正直な話、私は恋など愛などを抱く前に戦火に包まれ、ヒフィー殿に呼び出されました」

「……」


ヒフィーは何も言わずにその言葉をじっと聞いている。

いや、俺がはっきり聞こえるぐらいに、皆静かで、タイゾウさんがはっきりと大きな声で言っているのだ。


「……この気持ちが恋なのか、愛なのかは、それともただの忠誠心かはわかりませんが、私は貴女の為に死ぬつもりです。その気持ちはいまでもしっかりあります。私にそんな思いを抱かせた女性は貴女だけです」

「……タイゾウ殿」

「こんな言い訳がましい答えしかだせませんが、一緒に生きてもらえるのであれば、手を取っていただきたい」


いや、俺からすれば直球ドストレートな告白と思うけどな。

俺とタイキ君で探ってはいたけど、ここまではっきり言うとはな。

ダメな時も予想はしていた。その時はヒフィーへの同情は更に集まるし、当分は再起不能だから養生って感じだったんだが、杞憂だったか。

さて、あとはヒフィーがタイゾウさんの手を取るだけなのだが……。

その時間は全員が長く感じたという。

手をただ伸ばして、相手の手を握るだけ。

それだけなのに、とても長く感じた。

周りがこれなのだから、当の2人はもっと長くきつく感じたんだろうな。

ま、その体感時間が永遠にも引き延ばされたかと思ったが、結局……。



「……よろこんで。こちらこそ不器用な女ですが、よろしくお願いいたします」



そのヒフィーの声が聞こえて、ゆっくりと拍手が広がっていく。

ルナやコメットは当然、俺たちも、そしてノーブルたちもいいものを見たという感じで拍手を送っている。

さーて、これでうまくまとまったかな?

あー、疲れた。

だけど、これからがある意味、本番である。



「よーし!! みんな、結婚式の準備よ!! 用意はしてあるんだから、すぐに配置をしなさい!! 新郎新婦は着替えよ!! ラビリス、ヒフィーをお願い!! タイキ、ユキは、タイゾウを!! 恥かかせてきたんだから、それが気にならなくなるぐらいの幸せで盛大な結婚式にするわよ!!」


ルナの今回一番気合いの入った声に全員が返事をする!!


「「「おう!!」」」



なぜか、ノーブルたちも返事して、慌ててエクス王城に着替えに行って、祝いの品も持ってくるという事態になった。

いや、指定保護あっさり受け入れてくれたからいいんだけどさ。

ま、こっちの完全勝利でめでたいってことでいいとしよう。

細かい話は後日。

今は……。



「ケーキ崩すなよ!! 上にシャンデリア飾れ!! 教会は10m後方に出す!! 蝋燭の準備しておけよ!!」



くそ、結婚式の準備が大変だわ。

これに後片付けだろ? 冗談じゃねーわ。

俺個人の仕事量は増えてるんじゃねーかと思うぐらい。

これに友人代表スピーチにタイキ君は親戚代表だからな。

日本人の知り合いがいないから、こういうことは全部回ってくるよなー。

あー、だりい。



あ、御祝儀ってどうすればいいんだ? 

いくら包むのが正解なんだ? 俺のいまの立場からして?

だれか教えてくれ!?



はい。ということで、エクス編および新大陸編はこれにていったん終了となります。

後日談を次上げまして、無駄に備えていたモーブたちとか、ほかの話していない内容を報告するよていです。


いまはともかく、祝えよ。


そんな感じで、ヒフィーに恥をかかせつつ、ノーブルたちの同情を集めて、さらに結婚式に参加させることにより、連帯感を抱かせ、ノーブルを新大陸の盟主に据えて、ヒフィーたちをサポートという罰を与えることにして、なるべく不満がないような差配にしています。


とりあえずさ、俺、11月に友達の結婚式に行くけど、いくら包むか悩むよな。

まあ常識的な感じでいいんだろうけど、会社の上司とかの場合、どれぐらいとかわからんわー。

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[一言] 「大将、ウエディングケーキにきゅうりは何本刺すんだ?」
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