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第398堀:駄目神が動いた結果

駄目神が動いた結果





Side:ユキ




さーて、ヒフィーたちがこっちに来る前にさっさと設営終わらせてしまおう。


「大将、きゅうりは?」

「いや、いらん。ジョンは回答席の方の最終調整。音が鳴るようにな。番号札もあるか確認しとけよ」

「……了解」


何、悲しそうな感じで去っていくんだよ!?

ここの準備にきゅうりの必要性はないからな?

お前、本当に河童とかにならないよな?


「ういーす。大将、トラップと風呂場の準備はできたぞ」

「了解。トラップは立ち入り禁止にしとけ。風呂場の方は結構汚れる予定だから、清掃要員は準備できてるか?」

「スライムはもともとそう言う立場だからな。大丈夫だ」

「そうか。なら、ジョンの方の手伝いに行ってくれ。なんか知らんがきゅうりの設置場所を聞いてきたから心配だ」

「……了解。あの野郎」


そう言って、スラきちさんは去って行く。

……今更だが、魔物たちは声帯ない奴らも、魔力で空気振動起こして普通に喋ってるよな。

なんつー、魔力と魔力操作の無駄遣い。

いや、テレパシーの如く直接、頭の中にたたき込まれるよりはいいのだが、なんというか予想していなかった成長だ。

ほら、あれだ。一般用自動車で自動ドアが設置されているやつ。

タクシーとかはわかるが、一般車にそんな高機能いらねーだろと思った。

確かに便利ではある。買い物をして両手がふさがっている時に自動で開くのはありがたい。

まあ、老人介護とか、子供の送迎に手を煩わせる必要はなくなるよな。

運転席で、しっかり開け閉めを管理できるから。

でも、老人介護なら側で控える介護者がいるし、子供にそんな楽をさせていいのか?

という疑問も残る。周りの確認をしてドアを開けるという行為を行わないということだから。


しかし、それだけとは言わないが、他の使い道がそうそうないことに金かけるかよ?

という話だ。

あれだ、世界は常に予想の斜め上に進んでいるということだろう。

実際、自動ドアの車も増えてきているし、サイドミラーの自動オープン、クローズも今や当たり前、昔はサイドミラーなんてそのままだったしな。

こっちの世界も同じように、無駄なことに力をかけて需要ができているということか。


「あ、お兄ちゃん」

「兄様―」


そんなことを考えていると、アスリンとフィーリアが駆け寄ってきて、その後ろから、ラビリスとシェーラ、ドレッサがゆっくり歩いてくる。

5人とも、可愛らしいドレスを着ている。


「2人とも、走っちゃだめよ」

「ドレスが乱れますよ」

「というか、なんでこんなドレス着る羽目になってるのよ? 私たちは何か、催し物の手伝いって聞いたんだけど?」


ラビリスとシェーラはアスリンとフィーリアの乱れたドレスを手直して、ドレッサは頭に?を浮かべて、俺に質問してくる。


「そうだ。手伝いで間違いないぞ」

「なら、なんでドレスなのよ? 汚れるわよ?」

「そんなに動き回る役どころじゃないから、それまで待機ってやつだ」

「うーん。キレイどころを見せるって感じかしら?」

「ま、そんなとこだ」

「……それなら、ユキのお嫁さんたちの方がいい気がするんだけれど、まあいいか」


相変わらず複雑なことは考えないタイプか。

説明が楽でありがたいんだが、今後のことを考えるともっと勉強が必要だろうな。

最近ではヴィリアたちと組んでダンジョンに潜っているみたいだけど、いつか大怪我しそうだな。そこら辺、注意しておこう。


「で、ラビリス、シェーラ準備の方はどうだ?」

「ええ、リリーシュ様も待機しているし、私たちも準備はいいわよ」

「はい。いつでも、ユキさんの手足となり動けます。例の人の準備もできています」

「よし。なら、そろそろゲストを……」


と、思ったら、どこかの駄目神がはしゃいで、こっちに走ってきた。


「やっほーーー!!」


テンションがクソ高い。ウザいことこの上ない。

いつものスーツ姿なのだが、動きにメリハリがあり、やる気満々というのが見て取れる。


「あ、ルナお姉ちゃんだ」

「ルナ姉様なのです」

「やほー、2人とも可愛いわね。準備はできてる?」


ルナはそのテンション激高状態を維持しつつ、2人を抱える。


「できているよー」

「いつでもいけるのです」

「頼もしいわね!! 私も準備万端よ!! ユキ、まだなの!?」


ガバッとこっちを振り返るな。怖いわ。


「そろそろ、ゲストを呼ぼうとしてた頃だ。スティーブたちから、もう待機室に入ったって連絡はきたからな」

「そう!! なら、スタッフ全員配置に付きなさい!!」


ルナの一声で、周りの連中がいそいそとスタジオの配置についていく。


「アスリンたちはもうちょっと出番が後だから、待っててね?」

「うん。ルナお姉ちゃんも頑張ってね」

「頑張ってなのです」

「え、ええ!? ちょ、ちょっと、ル、ルナ様がなんで!?」

「はいはい、そう言う催しだからよ」

「邪魔にならないように、待合室へいきますよ」


驚いているドレッサをラビリスとシェーラで連れ出していく。


「……おいこら、駄目神」

「なによ? っと、そこ2カメはもうちょっと右!!」

「うっす!!」

「……ドレッサがルナ様って呼んでたけど、ばらしたのか?」

「ん? ええ、そうよ。あの子って純真でいいわ。私がちょっと後光を射しただけで、拝んできたんだから。誰かさんとは違って心が綺麗よ。どうせ、既にラビリスたちに囲わせているんだし、いずれ話すでしょう?」

「……物事には順序ってモノがあるんだよ」

「別にいいじゃない。減るもんじゃないし、私の信者が増えるだけよ」


それが一番不安なんだよ。


「4カメはちゃんと落ちないように体を固定しておきなさいよ? 撮影中に事故とか洒落にならないわよ!!」

「はい!!」

「……勝手にスタッフに指示だすなよ」

「いいじゃない。ここの主役は私と彼女よ? 裏からコソコソしているあんたは、私たちのフォローに回ればいいのよ。マイクチェック始めるわよ!! あー、あー、声、通ってる?」

「通ってます!!」


駄目だこりゃ、完全にやる気満々だ。


「はぁ、とりあえず進行通りにはやれよ」

「分かってるわよ。こんな面白い事、私からぶっ壊すわけないじゃない!!」


……それで信用できるから、普段信用できないってことに気が付いてほしいもんだがな。


「ほら、さっさとゲストを呼んできなさい。もうこっちの準備はほぼ終わってるわよ」

「……へいへい」


そう言われて、ゲストを呼びに行く。

はぁ、俺の発案とはいえ、ルナを役者として使うのは胃が痛すぎる。

今後はあれを頼らないで終わる方法を死にもの狂いで探そう。

というか、そもそも、今回の原因は……。



「ユ、ユキ殿。今回の件はちゃんとやってみせますから、もう少しだけ時間を」

「……ヒフィー。もう無駄だって」


そう、この2人にある。


「いや、もうルナが動き出したし駄目なのはわかっているだろう?」

「……あう」


本人も手遅れという認識はあったのか、がっくりとうなだれる。


「私からも多少の減刑を求めるよ。そっちだって私の大事な物を人質に取っただろう?」

「まあ、罰ゲームの方はルナにはほどほどにって言ってあるから、問題は無い。というか、そもそも、そっちの2人が、ノーブルと相性がいいだろうって送り出したのに、ノーブルたちが蜂起というか奮起する原因作った本人だったのが問題だ。火に油を注ぐようなことできない」

「だよねー」

「……そう、ですよね」


そう。

霧華とかコメットからの情報を聞くに、この2人が、ノーブルという神が、今日まで頑張ると決めた原因を作ったのだ。

真相を知ったら、協力するどころか、ガチで戦争になりかねない。

だって、多大な被害を出した、魔王戦役の発端なのだから。

まあ、ヒフィー自身は当時はそこまで関わってないけど、監督責任というのを絶対もとめられるし、コメットは処刑相応の罰を求められてもおかしくない。

現状、それを受け入れるわけにはいかないから、結果的に俺ら、ウィードが出張って全面戦争になりかねない。

それはどう考えてもアウトだ。


だから、禁じ手を使ったのだ。

ルナという劇薬を。


幸い、今までの情報から、ノーブルたちは理性的と判断できたし、正直な話、ヒフィーよりマシなんじゃね? と思ったぐらいだ。

情報を集めるまではヒフィーかそれ以下で、下手に俺やルナで呼びかけたとき自分でどうにかするといわれたら危険だったのでやるつもりはなかったが、話し合いの余地はありそうだし、ルナから呼びかけをする前にこちらの手でエクスやダンジョンを押さえたので、逃げ出したり反攻されてもたかがしれている。


準備は整ったから動き出したということだな。


「ま、幸い準備は整っているから、何とかなるさ」

「……そうですか。しかし、いつの間に、ダンジョンの掌握を? 昨夜の内には把握までしかしていないのでしょう?」

「ああ、それは私も不思議だったよ」

「えーと……なんて言っていいのやら」

「何か問題でも?」


うん。真面目にどう説明した物か困る。

ヒフィーの言う通り、昨夜のダンジョン潜入部隊は把握が目的だった。

ミノちゃんたちの演習に合わせて一気に、把握している主要か所を押さえて優位に事を運ぼうと思ったのだ。

で、その結果がこれ。

つまり……。


「昨夜の内に、ダンジョン内すべての探索が終わり、主要か所、主要人物の場所の把握が終わってしまった」

「「……はい?」」


その反応は普通だと思う。

昨日の内に文字通り全て終わってしまったのだ。

あとは命令1つで全部制圧できる状態に。


「簡単にいうと、パーフェクトゲームだな」


相手とこっちの戦力の格差に。

あえて言うのであれば、初期ストセカンドのガ○ルとザンギ○フみたいな状態だったらしい。

こっちの最良の予定をぶち抜き進んだ結果である。


「もう、夜の内に全部調べていたから、あとやるべきことは、ダンジョンの掌握と主要人物の確保だ。ミノちゃんの演習を囮に、ダンジョン上層部にコアを置いて起点を作って、ガンガンと制圧していった。サクリとかいうダンジョンマスターの部屋にも既にスラきちさんたちが侵入していたし、あっという間にこのダンジョンのコアも制圧できたから、上の起点からの制圧は要らなかったぐらいだな。魔剣、ゾンビ生産工場も、ナールジアさんの細工が面白いほど上手くいって、ネギとドリアンが生産されるようになったしな」

「「……」」


ネギはネタ武器で剣の代わりになるし、ゾンビと匹敵するかほりの果物の王様なら代替りにぴったりだろうと、仕掛けた本人は言っていた。

魔剣工場の方はともかく、ゾンビ工場の方は、ガスマスク装備でいかないときっと死ねると思うぞ。

シュミットとかいう傭兵団の団長もそこで痙攣していたのをスティーブたちがつまみ出したって話だし。


「これで、今までの経緯はわかったな。これからルナを司会にして、クイズ式で今までの復習と状況説明をする」

「ク、クイズ!?」

「ちょっと待ってくれ。私は今回、ユキ君の協力者だよね?」

「コメット!! なんて卑怯なことを!!」

「心配するな。コメットはルナの司会補助。ヒフィーは回答者で参加するけど、そこまでひどいことにはならない。と、思う」


俺は、ヒフィーの顔を見て断言できなかった。

だって、あのやる気満々の駄目神が相手だぜ?

俺の予想を裏切るのはお手の物だろ?


「ご、後生です!! どうにかして私の参加を取り下げていただけないでしょうか!!」

「あー、そうしてあげたいのも山々だが、今回のクイズでノーブルたちにヒフィーたちのやったことも話すことになってるんだ。ひどい罰ゲームを受けているのを見れば、そんな気は起きにくいだろう? 自分たちで実感してるだろう?」

「……そ、そんな」

「鬼か、君は。人として大事な物が無くなる気がするよ」

「で、では、せめて撮影だけは……」


……俺はもう何も言ってやれない。

だって、後ろに……。



「何を言ってるのよ。こんな面白いことは記録を撮るに限るのよ!!」

「ル、ルナ様!?」

「いつまでも来ないと思ったら、駄々をこねるなんてね子供じゃあるまいし、さっさと来なさい!! 始められないでしょ!!」



そう言って引っ張られていくヒフィー。


「えーと、私は急にお腹が……」

「流石に、自分だけ逃げ出そうとするのはいただけない」


逃げようとするコメットの首根っこを捕まえて、引きずっていく。


「ちょ、ちょっと!? 生贄はヒフィーだけでいいだろう!?」

「この人でなし!! こうなったらコメットも一緒よ!! 死なば諸共!!」



友情って素晴らしい。

さ、あとは地獄の開幕を待つだけだな。



※現在の物語は間違いなく、エクス王都での死闘の続きです。

 放送事故ではありません。引き続き、物語をお楽しみください。


ヒフィーの地獄はこれからさ!!


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