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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 エクス王国編

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第397堀:保身を謀った結果

保身を謀った結果





Side:ヒフィー




目の前では予想通り、勇ましく出てきた軍神の軍勢が、あっさりと倒れていく様が見えます。

その中で軍神本人も倒れてゆくのが見えます。


『ミノちゃんより、ヒフィーさんへ。ノーブルへの狙撃命中。無力化に成功。魔力、スキルの封印展開確認。封印弾の作動も成功。ノーブル捕縛成功。掃討作戦に移行するべ』

「了解です」

『ノーブルは重傷。腹部に銃弾が命中。まあ、流石は神だべ。とりあえず、ヒフィーさんの所に運ぶべな』

「……わかりました」


ちっ、流石に殺しはしないですか。

誤射でどうにかならないかと思っていたのですが、そうはいかないですね。

凄まじい練度です。

最初から、高威力の兵器で消し飛ばすべきだったでしょうか?

いえ、ここからコメットに頼んで、消し飛ばしてもらえばいいのではないでしょうか?

そうすれば、責任は全てコメットに向きます。

これは、名案ではないですか!!

いえ、それともこちらに戻って来た時に、治療するふりをして止めを……。


「へ、陛下!? な、なんてことだ!? あ、ありえない!? い、いや、ヒフィー殿!! なんてことをしてくれたのですか!!」


私がコメットに指示を出す前に、横で呆然としていたビンゾとかいう人が慌ててこっちに文句を言ってきました。

というか、こんな人いましたね。すっかり忘れていました。

最初のコメットへの暴言もあって、存在を無視していたので、視界に入っていても無いような感じでした。

ちっ、これではこっちの口封じは無理ですね。

いっそのこと、この人もまとめて……。

と、いけないいけない。

エクスの民の命運が握られているのです。

私個人の私怨で動くわけにはいきません。

まずは、残りの主要人物を押さえなくてはいけません。

……それからでも、遅くはないはずです。


「何をといわれましても、これは演習ではありますが、お互いの力を測り、知るものというのは話した通りだと思います。ノーブル殿もやれるものならどうぞと言っておりました」

「だからと言って……!!」

「そちらも、こちらの軍勢を材料にしようとしていたのですから、何も問題はありません。というより、この程度で足をつく相手を同等と見れるのですか? そもそも、これは二度目です。一度目で私たちの攻撃手段を判断するどころか、自分たちのミスという観察力。失笑ものです」

「し、仕方ないでしょう!! あ、あんな武器、存在するのがおかしい!!」

「……ビンゾ殿。貴方も技術者の端くれなら現実を見なさい。今、私たちの攻撃で手も足も出ずに敗北しているのは、貴方たちなのです」

「ぐっ……」


ビンゾ殿は顔を伏せて悔しそうに手を震わせています。


「ああ、安心してください。ノーブル殿はご無事ですよ」

「え?」

「流石に、私も久々に再会した同胞を殺すつもりはありません。ただ、これから直面するであろう問題を話すには、私たちの実力も把握したうえで判断してほしいと思ったのです」

「……これほどの力があっても、躊躇う事情があるのですか」

「そういうことです」


そんなことを話している内に、ミノちゃんさんが自らノーブル殿を連れてきました。

床にゆっくりとノーブル殿を下ろしますが……。


「へ、陛下!? 陛下!!」


ビンゾはそのノーブルの姿を見て慌てて駆け寄り呼びかけます。

まあ、お腹を真っ赤にしてますからね。

しかし、ビンゾ殿のあの慌てた様子を見れば、ちゃんとした信頼関係があるのでしょう。

と、いけない。

このままヤルのは駄目ですね。

ミノちゃんさんの目がありますから、話し合いに持って行って口封じする方が安全そうです。


「ビンゾ殿、落ち着いてください。治療をいたしますので、下がっていてもらえますか?」

「あ、はい。 どうか、どうか陛下を!!」

「勿論です」


こんなことでエクスの王が崩御すれば、どう考えてもエクス国内は大混乱に陥ります。

そればかりか、隣国も黙っておらず何かしら動くでしょう。

と、ノーブル殿が死ぬだけでこれだけ問題が起こるのです。細々としたことを考えると民が被る被害は計り知れないでしょう。

ですから、ユキ殿は話し合いができるならと私やポープリの派遣を認めてくれたのです。

……ここでキュッとできれば、どれだけ私は救われるだろうか……。などと考えたりはしていませんとも。


「……う。ぐっ」

「陛下!?」


そんなことを考えつつも、治療は行っていたので、ノーブル殿が意識を取り戻したようです。

しかし、腹部に銃弾を受けて昏倒していたのに、よくその日の内に意識が戻りますね。

タイゾウ殿の銃の場合は治療が成功しても、2日3日は寝たままなのですが。

あ、そう言えば特殊弾丸とか言っていましたっけ? それで殺傷能力も抑えたのでしょうか?

それとも、流石軍神と、ノーブルの生命力のおかげなのでしょうか?


「よかった。……よかった」

「ビン……ゾ? ……ああ、ヒフィー殿。私、は、負けたのか」

「ええ。演習は勝たせてもらいました。しかし、相変わらず前に出るのがお好きですね。こういうことになれば、軍は瓦解するというのに」

「……性分だ」

「ふむ。思ったよりも元気そうですね。少し休んだら、私の話を聞いてくれますか?」

「……約束は守る。というより、これほどの力があって、問題になることというほうが大問題だ。是非に聞かせてもらおう」


そんなことを言いつつ、既にビンゾ殿の肩を借りて起き上がっています。

……多分、弾がではなく、この人がしぶとかったというのが正しいのでしょう。

私とは違うタイプですね。まさしく戦いの申し子といっていいでしょう。


「と、そう言えば聞きたかったのですが。このダンジョンを動かしているのは、ノーブル殿なのですか? それとも……」

「サクリだ」

「彼も生き残っていたのですね」

「いや、ほぼ死んでいた。こっちは魔術や技術の才能は並だったのでな。そちらのようにアンデッドで復活。……などと都合のいいことはできずに、魔王戦役で我らが壊滅した時に、死にかけていたサクリにコアを埋め込んで、何とか生きながらえせらせた。両足、片腕を無くしてしまったがな」

「……コアを。そんな時から?」

「いや、それはただの偶然だ。元々ダンジョンマスターだったからコアの受け入れができたのだろう。我としても確信があったわけではない、一か八かだったのだ。まあ、成功はしたが、それを他人に試すようなことはできなかった。そちらとは違ってDPはカツカツだったのでな」

「……」

「なに、戦いの中での出来事だ。そう気に病むことはない。サクリも納得している」


ノーブル殿はそう言ってくれますが、どう聞いてもやっぱり私たちが原因でしょう。

いや、厳密にはそっちに攻め寄せた、当時の魔王であるピースが悪いのですが……。

でも、元はコメットの部下ですし……。

やはり、ユキ殿がこの事実に気が付かないわけがない。

ユキ殿は異世界よりルナ様から招かれた人であり、それゆえに、神や人、偉い偉くないで判断を変えることはありません。

それゆえに、今回の件において、騒ぎを起こしたノーブルにも何らかの罰を与えるつもりでしょう。私に与えたように……。

流石にエクスが混乱に陥るような処罰は下さないと思いますが、そうなると、話の過程で私たちが最大の原因と伝えられてしまいます。

そうなれば、あの時の罰ゲームの再来となるのは必然。

あんなことは何としても避けなくてはなりません。

では、どうすれば私たちへ累が及ぶのを避けられるか?

正直言って、あの罰ゲームさえ避けられればいいのですから、ほとぼりが冷めたあと、ノーブルの一件が終わった後ならば、色々忙しいでしょうし、私たちだけの為に罰ゲームを準備する余裕はないはずです。

つまり、この一時だけを凌げればいいのです!!

これならば、説明は簡単です。

遥か過去のことは詳しく話さず、今やってきたことを話してもらえばいいのです。

適当に、昔話は、今は関係ないとか、簡潔に説明するようにといえばいいでしょう。

こちらの事情を説明すれば、そう言ったことは些事と思えるはずです。


よし、イケる!! これは、イケます!! 完璧といっていいでしょう。


問題は、先にユキ殿たちが、ノーブル殿やサクリ殿と話をして、昔話を聞いてしまうことですが、ノーブルは既に私たちが押さえていますし、サクリ殿もノーブル経由で私たちが接触するのが先でしょう。

勝った。最後の最後に大事なところは守り抜いたのです!!


「……ふぅ。とりあえず、ビンゾ、サクリたちと連絡を取ってくれ。我は何やら先ほどのダメージで上手くスキルや魔術が使えぬ。ヒフィー殿から重要な話がある。全員ダンジョンの会議場に集まるようにと」

「はっ」


良し来た!! これで、私の勝ちは揺るぎな……。


「あ、ヒフィーさん。いいわすれてただども、既にダンジョンの掌握、サクリと呼ばれるダンジョンマスター、エクス王城内で宰相、ゾンビの生産工場でシュミットとかいう責任者を捕縛したべ」


そんな声が、ミノちゃんさんから聞こえる。


「え?」


目が点になる。

そう言えば、潜入部隊の進捗報告は来ていませんでしたが……。

え? 冗談?


「そちらの魔物は喋るのか!? と、そんなことはどうでもいい、サクリたちを捕まえただと、そんなバカな話があるか。ダンジョンの最奥に強力な魔物とトラップを幾重にも重ねた場所にいるのだぞ!!」

「へ、陛下。サクリ様、宰相、シュミットたちと連絡が、と、とれません……」


うっそー!?


「えーと、ノーブル陛下。おら、先ほどの演習で指揮を執っていました、ミノちゃんと申します。先ほどの指揮は見事でした。あそこまで軍を指揮するのは中々できるものでないと思いますべ」


私たちの驚きは無視して、ミノちゃんさんがそんな挨拶をノーブル殿にする。


「あ、いや。我は負けたのだがな……。だが、称賛の言葉嬉しく思う。ミノちゃん殿の指揮も素晴らしかった」


あ、ちゃんと挨拶返すんですね。


「して、ミノちゃん殿。先ほど我が忠臣を捕らえたという話だが……」

「あー、ちょっと待ってくださいべ。もうすぐ、準備が整うはずだから……」

「準備? 何を言って……」


……準備? まさか……。

私の頭の中に嫌な想像が過ります。



『へいへい!! ノーブルだっけ? やっほー』



いきなり空中に映像が投影されます。

その映像にでかでかと映っているのは……。


「ル、ルナ様!?」

「陛下? あの絵の女性とはお知り合いなのですか?」


そう、ルナ様。

我らより上である上級神。この世界で、至上の女神。


「我々神々の頂点に立たれるお方だ」

「な、なんですと!?」


ノーブル殿はわなわなと震えて、ビンゾは先ほどよりも驚いた様子です。

それはそうでしょう。

本来、神とはそういうモノです。

気軽に呼び出せる存在ではないのですが……。

映像の端に映っているユキ殿は例外で、必要とあらばルナ様を自由に動かせる人物です。

流石に必要な代価は支払っているでしょうが。


『さっきからコメットを通じて話を聞いていたけど。まあ、これで納得できたでしょう。ダンジョンの掌握なんて、私にかかれば、ちょちょいのちょいよ』


ん? 今、誰から通じて話を聞いていたって?


「はっ。それならば疑いようもございません」

『色々、こっちもそっちを探っていたのよ。まあ、詳しい話は会場で説明するから。迎えを寄越すから、待っていなさい。あ、サクリたちは無事よ。怪我1つないから安心しなさい』

「ありがとうございます」


ノーブル殿はすっかり礼を取って萎縮している。

しかし、そんなことはどうでもいい。

コメットを通じて……。つまり、さっきのことだけを聞かれたなんて都合のいいことはなく……。


『あ、ヒフィー。全部ばれてるから』

「あ、あの、悪気は……」

『ん。大丈夫。私に任せなさい!! 今回の罰ゲームは私とコメットが考えた至高の芸術といってもいいわ』


コメットと?


「また裏切ったわね!?」

「仕方なかったんだよ!? 言ったろ!? ゲームを人質に取られたって!! 大丈夫、君にとってもいいことだから、きっと……」


そう言って、目をそらすコメット。


「こっちを見ていいなさいよーーーーーー!!」




Side:スティーブ




なんで、ルナさんがおいらの心の中に絡んできたかと思えば、最初からグルだったわけっすね。

この出番をいまやおそしと待ってたわけっすね。

暇つぶしにおいらたちを監視、覗き見をしながら。


「……隊長」

「なんすか?」

「ヒフィーさん。マジで泣いてません? あれ、本当に連行するんですか?」

「……我々の仕事は、ヒフィー殿を連れてくること。おいらたちが泣かしたわけではないので問題ナッシング。というか、おいらたちが代わりになるっすか?」


おいらがそう言うと、部下たちは一斉に走り出す。


「目標を確保しました!!」

「は、離してください!? まだ、私は……、私は!!」


なんで、身内を捕縛してるんすかね?

ノーブルの方が落ち着いてこっちの案内に従ってくれているというのに。

いや、あれは未来を知らないからっすね。


「ス、スティーブさん!? お願いします!!」


連行されているヒフィーさんがおいらに必死に訴えかける。


「……上位命令には逆らえません」

「コメット!! 覚えていなさいよ!!」

「いや、元はといえば、コソコソやろうとしていた君が悪いんだろう?」


うん。コメット姐さんの言い分は尤も、だけど、おいら的には、合掌。

強く生きてくれっす。




世の中、悪いことはできないんよ。って話やね。

お天道様はいつもみてるんや。(ユキが


さてさて、動き出したるは、本当の悪鬼羅刹。

世の中本当に怖いのは同じ人だったりするかもしれない。

本当の黒幕の正体は!!  デデン!!

次回を待て!!



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