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第393堀:騙し騙され演技合戦

騙し騙され演技合戦





Side:ポープリ



残念なことに、師とヒフィー殿が来るまでに、決定的な主導権を握るようなことはできなかった。

しかし、エリス殿がノーブルの保有戦力の把握をしつつ、削る作戦を思いついた結果、師やヒフィー殿はひとまず、その作戦を進めることを優先させることになったので、師が勝手に暴れるようなことはなさそうだ。

しかも、その作戦に便乗して、再度スティーブたちがダンジョンの方に突入し、情報を収集、あわよくば機能を奪うつもりでいるみたいだ。

ナールジアさんまで投入しているから、かなり本気ということだろう。

上手く行けば、これでエクスの問題はほぼ片付く可能性がある。

機能を奪えなくても、この結果で私達の立場向上というのもできるだろう。

どう転んでも、こちらとしてはありがたい話だから、その作戦に協力を惜しまない。


幸いなことに、ここ2、3日での話し合いで、ノーブルからの反応は上々だ。

魔道具に対しての私達の評価はノーブルにとっては好ましい物だったらしく、初日に比べてこちらにいろいろと話すことが多くなっている。

昨日の夜に、神聖国のヒフィー殿が来られると言っていたので、恐らくは感動的な演出を装って、私達やヒフィー殿と師を取り込みたいのだろう。

大体、予想通りの動きだ。


「霧華から報告が来ました。ヒフィーさん、コメットさん、エクス王都に到着したようです。あと30分もすれば、城に入るそうです」

「こっちもモーブたちから報告が来たな。問題なく城へ向かっているようじゃ」

「そうですか、ありがとうございます。これから本番ですね」


ララがそう言って私を見る。


「そうだね。既に感動の対面を終えている私達が、ちゃんとそれをこなせるかだよね。というかさ、師の方が心配だよ。あの人こんな演技できるタイプじゃないだろう?」

「あ、それは大丈夫みたいです。コメットさんはアンデッドで自我がないって設定で行くみたいですから」

「うわー、師の考えそうなことだ。いっそこっちから変なことして笑わせてやろうか?」

「やめとくんじゃな。そうなれば今までの工作が無駄になるわ」

「わかっているって。冗談だよ、冗談。しかし、感動の再会と言ってもどうしたものかね? 実際演技しろ言われてもピンと来ないよ」

「うーん。確かに学長の言う通り、どうやればそれらしく見えるのでしょうか? というか、ヒフィー殿との面会は何人でいくのですか?」

「ああ、それは私とララだけだね。ほかの皆はノーブルから見ればなにも接点がない。怪しまれる可能性があるから、2人の方が無難だろう」

「確かに、ポープリさんたちの魔道具の評価にはついていかなかったですし、ノーブルたちから見れば私達は部外者ですから、ついていくと警戒されるかもしれませんね」

「そうじゃな。わざわざ注目を集めるようなことはせんでよいじゃろう。まあ、演技の方は任せるしかないのう」

「ま、なるようにしかならないか……」

「そこまで深刻にならなくてもいいのでは? 世の中感動の再会と言っても、全部が全部同じではないのですし、特に泣く必要もないと思いますよ。向こうもこちらが相応に歳を重ねているのは知っているでしょうし」

「だといいね。と、そういえば、ユキ君たちは今回のことに合わせて、ノーブルたちへいろいろやる予定だけど、準備の方とかはどうなんだい?」


準備が整っていないのなら、予定をずらすように動かないといけないだろう。

何せノーブルの総力がわからない状態だから、それに応じていろいろ変わるかもしれない。

そこら辺は私達がフォローする必要があるだろう。


「その心配はいりません。ダンジョンへの潜入部隊、ノーブルの魔物迎撃部隊、王都調査部隊、城調査部隊と既に準備を終えていつでも出撃できる体制を整えていると連絡が来てます」

「制圧するだけならもういつでもできるのう。万が一があっても妾たちの退路は確保できるじゃろう。まあ、その場合はエクス王都がどうなるかは知らぬがな」

「……あとは私達次第か」


ありがたいと思うべきなんだろうな。

そうじゃなければ、既にヒフィー殿とその聖剣使いたちの件でもう大陸は大戦乱だったかもしれないからね。

魔力の集積によって魔術学府も無事かもわからない状態だろうから。

これ以上、ユキ殿たちに何かを望むのは虫が良すぎるか。

今まで、なんでも簡単にこなしてきていたから、そういうイメージが強いだけで、やっていることは至極当たり前のことの積み重ねだ。

相手を知り己を知れば百戦して危うからず、だっけ?

それからすれば、私達の方がノーブルを説得するのにはユキ殿たちよりは適任だ。

私やヒフィー殿の方が、同じ大陸で生きてきた身、多少顔も知っているし、向こうもこちらを知っている。

普通に考えれば、私達が話すほうがいいのは当然だ。


「と、ヒフィーさんたちが城に入ったみたいです。直接、ノーブルが迎えている様ですね」

「それはそうだろうね。ヒフィー殿はノーブル殿と同じ神なのだから。私達より圧倒的に重要度が高いはずだよ」

「あとはノーブルがポープリとヒフィーを引き合わせるまでって所じゃな。たぶん、早くて夜か、遅くて明日じゃな。流石に今すぐってことはないじゃろうな」

「ですね。ノーブルとしては会わせていいのか、とかいろいろ探るべきところもあるでしょうし」

「エリス殿の言う通りだろうね。まあ、おかげで私としては緊張がずっと続くんだけどね」

「学長。気休めかもしれませんが、お茶でも飲んで落ち着きませんか?」

「ん。そうだね。ここで緊張していても仕方がない。お茶でも飲んで落ち着こう。と、そういえば、アマンダやエオイドたちはやっぱり当日は別行動かい?」


ララがお茶の準備をしている間に、この場にいない、学生たち2人のことを聞く。

こっちの話を聞かせるわけにもいかないから、別室で待機してもらっている。

2人はタイキ君がついているから特に問題はないだろう。


「そうですね。別行動で、城で待機の予定です。その方が一緒に来るよりは安全ですから」

「だね。となると、エリス君たちもアマンダと一緒か」

「じゃな。作戦開始時は妾たちは城、ポープリたちとヒフィーたちはノーブルと、相手の注意を分散するのにはちょうどよかろう」

「ほかに、ダンジョン潜入と、城潜入と、これに全部対処できる相手がいるとは思えないね。ま、こっちとしては教え子たちの安全が確保されるならいいさ」


自分の都合の良いように使っておいて安全を願うとか、自分の身勝手さに笑いたくなる。

今回の件は師とヒフィー殿より先に私が接触したかっただけのわがままだったから、ユキ殿たちの思惑ではない。

世界の危機、多くの人命が、なんて言っても、何も知らないアマンダとエオイドの幸せを脅かしていいわけがないのにね。


「はい。皆さまお茶の用意ができましたので、よろしければどうぞ」

「ありがとう。ララ」

「いただきます」

「うむ。いただこうかのう」


お茶を飲んで落ち着いたのか、その後は予定の確認をしたりすることなく、アマンダやエオイドも交えて、のんびりとエクスのどこがおもしろかったとか、お土産はどれがいいとか、そう言う話に華を咲かせて時間をつぶして、ついにその時がきた。



「食後のご歓談中申し訳ありません。陛下より、ポープリ様、ララ様にご紹介したい方々がいるので、よろしければご足労願えないでしょうか?」


そう言ってアーネが部屋を訪ねてくる。

夕食後か、まあ予想通りだね。

私たちはお互い顔を見合わせて頷く。


「それは、陛下から聞いていたあの人たちのことかい?」

「いえ、私の方には誰に会わせるとは聞いておりません。ただ、私の私見でよろしければ、本日賓客として来られた、ヒフィー神聖女様だと思われます。それ以外は特に来客などはありませんでしたので」

「そうか。ありがとう。まあ、特に断る理由もないから。案内お願いできるかな?」

「はっ。お任せください。こちらになります。あ、竜騎士様や護衛の方々は長話になる可能性もありますので、遅くなっても心配なさらぬよう。こちらでしっかりとお守りいたします」

「あ、はい。学長と副学長のことよろしくお願いします!!」


慌てて頭を下げるアマンダ。

……やっぱりまだまだだね。

護衛が付いてこれないっていうのはアウトなんだけどねー。

まあ、こっちとしてもそれで助かるからいいのだけれど、今後の教育方針で悩むところだね。

これ以上鋭く教育すれば、いずれ私たちのやっていることに気付く可能性が高い。

かといって、このままの一般人思考だと、他国の貴族に良いように口約束とか契約書にサインとかして振り回されそうだ……。

……うん。思ったより難しい内容だね。正直、こちら側に引き込んだ方が安全な気がする。ユキ殿たちに相談してみるか。私の頭一つ下げるだけで彼女たちの幸せが守られるなら安いもんさ。

まあ、いままで下げまくった私の頭にユキ殿たちがどれだけ価値を見出すかはしらないけど、……他に説得材料を探しておくべきだね。


「こちらです。既に話は通してありますので、どうぞ中へ」


そんなことを考えている内に目的地に着いたらしい。

わざわざ、私たちで扉を開けろというのも演出なんだろうね。

……今更だが、本当にどうしたものか。

いっそのこと、警戒してみるかな? 死んだと思ってた人がいるんだし、そっちの方が自然だろう。ついでに師に攻撃できるチャンスがあればいいなー。

そして、扉を開けて中に入ると、ノーブルが立っている横に、ヒフィー殿と師が並んで立っている。


「夜分遅くに呼び出してすまない。私としては、一刻も早く引き合わせたい人物がいたのでね」


ノーブルは満面の笑みでこちらとヒフィー殿たちを見ているが……。


「失礼、ノーブル陛下。こちらのお2人が本当に、ヒフィー殿と師、コメットであると?」

「そ、そうだが? 何か問題でも?」

「……いえ、確かに容姿はそっくりといえましょう。しかし、今や陛下の神という立場を知っている以上、ただ容姿が似ているだけという理由だけで、お2人を本物と認めるわけにはいきません。失礼ですが……」


そう言って、すぐさまファイアアローの魔術を無詠唱で展開して撃ち込む。


「ま、まて!?」


流石にこの行動に驚いたのか、止めようとするが時既に遅し。

もう2人に直撃……するわけもなく、師の防御魔術で散らされた。

ちっ、大人しく喰らう理由はないか。


「ノーブル。ポープリの懸念も当然。私が自ら懸念を晴らして見せましょう」

「そうか? だが、魔術戦はやめてくれ。城が無くなる」

「分かっています。ポープリもいいですね?」

「……私としても、陛下の客人にこんなことがしたいわけではありませんので、納得できるご説明をしていただけるのであればお願いします。……特に、我が師、コメットがそんな無感情な人形のようになっていることについて」


こんな感じで、最初の掴みは十分だったようだ。

仲介役のノーブルと宰相は最初の魔術戦で、引き合わせ方まちがってんじゃね? みたいな話をこそこそしていて、こっちの演技を見破る余裕はなくなったみたいで。

私たちの会話を聞いてはビクビクしていた。

ノーブルとしてはどっちとも協力してほしいから、無理に押さえつけるというのは最終手段というのを分かっているらしい。

ということで、一応、ヒフィー殿から今までの経緯を聞いているふりをする。

……既に知っていることを真剣に聞くというのは結構こたえる。

しかも演技の内なのだから。……師とか私たちを警戒させないために窓際まで、ヒフィー殿の指示で下がっているが、目を閉じて動かないでいる。

……一見、目を閉じてしっかり護衛をしているように見えるが、あれは寝ている。

退屈だから寝ているのだ。日々の研究漬けの中で編み出した、いつでもどんな状態でも寝れる特技。

こっちだって眠いのに!!



そして、地獄のような眠たくなる演技説明の後、私が口を開く。


「……話は分かりました。私たちだけが知っていることもご存知ですので。本物なのでしょう」

「そうか!! それはよかった!! なら、これから一緒に協力して……」

「陛下、まだです。私を試したように、ヒフィー殿や師も試すべきでしょう。聞けば師の自我は既になく、ただの人形同然。ヒフィー殿はその師を通じてダンジョンを維持している。これだけでは、どれほど力があるかわかりません」

「……むう。確かにな。宰相、なにか案はないか?」

「ふむ。正直、ヒフィー神聖国の力を借りられるのでそれだけでもいいのですが、ポープリ殿の言うとおり、力量を測ることは必要でしょう。無理なことを把握しておかねば失敗に繋がりかねませんから」

「しかし、何を持って力量を測るのかだ。技術力は既に聖剣、魔剣という現物がある、他の比べる物といえば……」

「それならば、ダンジョンの勝負でどうでしょう?」

「ダンジョンの勝負?」

「ええ。私たちもあきらめたとはいえ、今まで準備をしていました。ダンジョン内の魔物の総兵力とはいきませんが、ある程度集めて勝負してみてはどうでしょう」

「……なるほどな。いままで蓄えていた力もお互い把握できるな。しかし、魔物を身内の戦いで戦死させるのはDPの無駄にならないか? ダンジョンの行き来は確かゲートがあるから簡単にできるだろうが、あれを設置するだけでもかなりの費用が掛かる。私もあるのを知っているだけで一度も設置したことが無い。その無駄になるかもしれない費用はどちらが出す?」

「それなら私が出しましょう。コメットが生きていた時は数多のダンジョンを行き来しておりましたから」

「……そうだったな。では、設置の問題はいいとして魔物の……」

「お待ちください陛下。ちょっとお耳を」

「なんだ? ……ふむふむ。なるほどな。よし、こちらとしても兵力は減るのは痛いが、それは今後の能力向上につながるだろうし、断る理由にはならんな。その話、受けよう」


よし、乗ってくれた。

しかし、何の話をしてたのかね?

あ、魔石の回収かな?

魔剣を生産するのに、魔物の魔石を集める方が、効率が良かったんだよね。

それをこっちに話すのはまだ早いね。納得納得。



さて、あとは本番を待つのみ。



はい、ついに合同演習の約束を取り付けました。

もう、崩壊まで秒読み段階。

そして、三者三様でいろいろな思惑があり、引き込みたい、口封じをしたい、演技がばれないか。

まあ、なんというか、どんどん志が低くなってるのは気にしないでくれ。

世の中、目の前の目標が近くてわかりやすいほうが、やる気でるだろ?

今日の晩御飯焼肉だから、さっさと仕事終わらせようとかさ?

帰りに新作のゲーム買うとかさ?


こう、ほんの少しのうるおいが、人生生きるに必要なんだよ。


だからさ、明日でる「ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団」を楽しみにしている俺は間違いではないんだ。

WIZ系でやりこみゲームを作り出した日本一ソフトウェアが作ったんだ。

こりゃーネタも十分、レベルもぶっ飛びだぜ? 面白い事請け合いだ!! ディスガイアは9999は基本。

あと「牧場物語 3つの里の大切な友達」うん、安定して楽しみだね。OP歌が好き。

ああ、でも「大切な友達」はきっと俺にとっては「金」だね。

だって、牧場物語は金を稼ぐ物語だぜ? 結婚? ああ、おまけね。




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