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必勝ダンジョン運営方法 相手に合わせる理由がない  作者: 雪だるま
新大陸 エクス王国編

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第387堀:みんなが幸せって素晴らしい

みんなが幸せって素晴らしい





Side:コメット




「ふひゃひゃひゃ……!! ひっー!! お腹痛い!!」


私は馬車の中で笑い転げていた。

凄いねー。

いや、私たちが敵わないはずさ。

何度も思い知ったが、また思い知るとは思わなかったよ。

何がって?

ユキ君たちと、私たちの格の違いだよ。

違い過ぎて滑稽だね。

月と鼈っていうんだっけ? 彼らの故郷の諺で。

ついでに、笑わせてくれるから申し分ない。


「あーもう。馬車の中で暴れないでください!!」


私の行動に文句を言うのは、ヒフィー。

まったく、道中一緒だけど、口から出てくるのは説教だけという堅物。

真面目一辺倒ではだめだという生きた証拠。

人、いや、生き物……、死体にもゆとりがいるという実例だ。

死体はもちろん私だけどね!!


キラキラ……。


不意に馬車の中でそんな音が流れる。


「なんの音かしら? と、コメットがやっていたゲームから?」

「さわんじゃねーーー!!」

「きゃっ!?」


私は咄嗟に叫んでヒフィーの動きを止めて、その間に、足元に落ちてるゲームを拾う。

そして画面を確認すると、色違いが出現していた。


「うっし!! これで4匹目!!」

「な、なんですか、いきなり!!」

「あん? 知らないのかい? ユキ君の故郷で大ブレイク中のゲームだよ。その名もポケ○ン。その色違いが出たんだよ」

「そんなことで、叫ぶ必要があるのですか?」

「とーーーーーっても、出現確率が低いんだよ。そして、ヒフィーは機械音痴じゃん。なんか知らないけど、落ちたショックかなんかで、既に攻撃する寸前だし。倒したら手に入らないからね。ヒフィーが拾った瞬間にボタン押して、さよならだった可能性が非常に高い。というか、かれこれ3度ほど同じようなことやってるだろ?」

「ぐっ」

「あの時の苦しみを私は忘れないね。半日かけた苦労が電源ポチで水の泡。ユキ君が言った苦しみがよくわかる。許されざる行為だよ。人の努力を踏みにじるとは……と、憎しみが湧いて出てきた」


あの時の絶望感、一言では言い表せない。

真っ黒になる画面、一瞬呆然として、すぐ正気に戻って、一縷の望みをかけて電源を入れてみる。

きっと、無意識に記録してるさ。って淡い夢を抱いて。

そして、現実に打ちひしがれるんだ。セーブデータの日付が昨日だったりしてね。

そういう時に限って、いいアイテムが出たりしてるんだよね。

ま、身内に危険生物がいるという認識ができたから、こまめにセーブはするようになったけどね。


「それはそもそも、研究と称して、ゲームしていたからでしょう!!」

「うん。それは悪いと自覚しているから、その時は我慢した。しかし、そういうこともあって、ヒフィーにゲームという、私の血と汗と涙と時間の結晶を触れさせるわけにはいかない。わかるだろう?」

「たかが遊びに……」

「遊びにこそ、発展があるとユキ君から教えてもらったはずだが?」

「ぐぬぬぬ……。って、そもそも、コメットが、笑い転げたのがいけないのですよ!!」

「いやいや、あの資料を見て笑い転げるなっていう方が無理じゃね?」

「貴女がいきなり笑い転げるから半分も読んでいません!!」

「速読も為政者には必要だと思うよー」

「貴女の速読と一緒にしないでください!! 目をひょいってやっただけで文章を把握できるわけないでしょう!!」

「人を化け物みたいに言わないでくれないかな。これでもれっきとした死体美女なんだし」

「何が、死体美女ですか。中身が残念極まりないくせに」

「と、そこはいいんだよ。昔から、特に容姿を気にしたことはないし、とりあえず、私が笑い転げた理由を把握してくれると話が先に進むんだけどね」

「……わかりました。少し待ってください」


何か言いたげだったが、資料を読み進めるヒフィー。

私はその間に、色違いを捕まえて、色違いを集めているボックスに放り込んで、しっかりと記録をした後、アイテムボックスに入れる。

どうせこのあと、ヒフィーへの説明で忙しくなるだろうし、そうなれば、事故でゲームに触れられかねない。

それでデータが飛んだら、泣くに泣けない。

そんなことになれば、ここでヒフィーと雌雄を決する必要があるだろう。

というか、この馬車旅の間に、主力のメンバーは鍛えたかったんだけどなー。

帰ったら、ユキ君や、タイキ君とバトルの約束してるし、あの2人にこのままじゃ勝てる気がしない。

私も最初は、ヒフィーの言う通りお遊び気分だったんだよ。

しかし、あの2人に中途半端な気持ちで勝負して、一勝もできなかった。


『遊びだからこそ、真剣になるのさ』

『半端者に負けることはないですね』


と2人は言っていて、ゲームの奥深さを知った。

ある意味、理想的な平等な条件での勝負だからだ。

時間さえかければ、クリアできるし、人との勝負では、弱点をついて、思考を読んでの戦い。

正直、負けて無茶苦茶悔しかった。

たかがゲームと思っていて、一勝すらできなかったのだから。

だから、強くなる方法を教わって、厳選して、技覚えて……と馬車で頑張っていたわけだ。

研究できないのは、まあ残念だが、こうやってゲームに没頭できる時間が増えるのはありがたいね。


「な、なんですか、こ、これは……」


お、ようやく私が笑い転げた地点まで読んだかな?


「これは、私たちから、ノーブルに喧嘩を売れということになりませんか? これでは、エクスの人々に被害が及ぶではありませんか?」

「はいはい。落ち着いて、よく考えてくれ。私たちの時みたいにルナさんを挟んでいるわけでもないし、ダンジョンを掌握しているわけでもない。この時点で、私たちやポープリの交渉だけでは安全は完全に確保できないってのはわかるよね?」

「……それは、わかります」

「私たちだって、別動隊とか、予備部隊は置いていたし、ノーブルがそうしないわけがない。だから、ユキ君はエリス君の作戦を採用したわけだ」

「私たちから、合同演習を呼び掛けて、魔物同士をぶつける。ですか」

「そう。ノーブルがどれだけ魔物の兵力を用意しているかはわからないけど、お互いの戦力は把握したいだろうし、断るとは思えない。それで大半の魔物は集められるわけだ。そこで僕たちの魔物が圧勝すれば、向こうはこちらの認識を改めるだろうし、魔物の運用についてはこちらに任せてもらえるかもしれない」

「なるほど。そうなれば、私たちが魔物の所在を全部把握できるというわけですね」

「まあ、そこまで上手くは行くとは思えないけど、ノーブルの手持ちを削ることは可能だろうね。下手に説得をしくじるとか、ユキ君たちと勝負して負けそうになったら、エクス王都に魔物を放って混乱中に逃げることも考えられるから、それを阻止するのには役に立つね」

「……私たちでは、ノーブルを止められないと思われたのでしょうか?」


あー、めんどいな。

こういう頭の固いのがいけないんだけどなー。

これも性格かね。

人としては好ましいかもしれないけど、一か十かって極端なのがね。


「そういう方向に考えるのは駄目だよ。ユキ君が提示している作戦は、あくまでも保険だ。万が一があっても、大丈夫なように、策を二重三重にしてるんだよ。信じる信じないの話じゃない。ヒフィーが失敗した場合は血が流れるんだ。それを抑えるための行動は必要だよ。私としてはむしろ好感が持てるけどね。タイゾウさんと同じだよ。いつもヒフィーを気にかけてくれてたろ?」

「……確かに。少し気負いすぎていたようですね。タイゾウ殿も気楽にと言われていました」


ほほう。タイゾウさんの名前を出しただけで止まるかい?

今までなんとなく怪しいなあとは思ってたけど、多少脈はあるかね? いけるか?

あっちもクソ真面目ではあるけど、柔軟性はこのヒフィーより遥かにあるし、相手としては申し分ない。

正直にいって、ウィードでしっかり生活はできるし、この口うるさい神様を引き取ってもらえれば私としては非常にありがたいんだけどなー。

あ、決して、私が楽をしたいからとかではなく、ヒフィーの幸せを願ってだ。

女の幸せぐらい掴んでいいと思える働きはしていると思うんだ。

嘘じゃないよ? 本心だよ。

ついでに性格が丸くなって、私の世話だけを甲斐甲斐しくしてくれればなーって思うだけで。

ほら、これでみんな幸せだ。完璧。

これは私にとって、予定が組まれて、先が見えたノーブルとの交渉よりも、優先すべき事項だ。

さて、どう話を切り出すべきか……。

そんなことを考えていると、資料をちゃんと読み終えたヒフィーが落ち着いた様子で内容にたいする評価を口にする。


「ユキさんの作戦で、ノーブルの所有する戦力を一気に減らし、同時に内部の調査を行い中核を押さえる。……なるほど。コメットの言う通り最後まで読んでみると納得ができる内容です。私たちの立場向上も図れますし、説得もやりやすいでしょう。問題は魔物対魔物の合同演習で負けることですが……、用意されるのはユキ殿の方からの魔物ですから、負ける方が難しいですね。ミノちゃんさんが陣頭指揮を執るから、私たちの指示は不要ですか。……正直助かります」


ミノちゃんさんって、いや「ちゃん」まで確かに名前だけどさ、それってアスリンが決めたから間違いとかの方でさ、「さん」付けはしないでいいと思うよ?

というか、本当にフルメンバーだね。

これ、私たちの交渉が上手く行くようにというか、これで勝負決めるつもりじゃね?

書類上は、更なる情報を集めるためとか書いてるけど、私たちと勝負した時より上の戦力だからね。比べるのが馬鹿らしくなるぐらいの戦力差。

ノーブルの配下の魔物がどれだけ強いかしらないけど、ものの数分で肉片になるんじゃね?

だって、ユキ君の所が本気出せば故郷のスーパーミラクル兵器群に、ナールジアのぶっ壊れ武器があるんだし。

それから考えると、私たちよく無事だったよねー。

ジョン君に腕を斬り飛ばされただけで済んでよかったよ。


「しかし、私たちはユキさんたちの後方支援があるから失敗してもいいなどと思わず。なんとしても、ノーブルの真意を聞き、それが間違っているなら諌め、止めなくてはいけません。……血が流れない方が良いに決まっているのですから」


それを君がいうかねー。っていうのは無粋だろうね。

私もそれに乗っていたんだから。

けどね。私としては厳しいと思うよ。

いきなり新しい道を示されても、はいそうですか、って頷けるわけがないんだ。

君や私がそうして、ユキ君たちと対立したように……。

結局、最後は彼頼りなんだよね。


「と、そこは実際会ってからだからいいとして、今は大事なことが別にあるんだよ」

「なんですか? 別の大事なこととは?」

「そりゃー、友人の恋だね」

「恋?」

「ありゃ、自覚がないのかな? それとも自分のことを言われてるって分かってないのかい?」


私がそう言うと、ヒフィーは固まって、みるみるうちに顔を真っ赤にしていく。


「だ、だ、だ、誰が、恋などと、わ、わ、私とタイゾウ殿は、き、清く、ただ……」

「いや、誰も相手がタイゾウさんとは言ってないけどね。分かりやすくてありがとう」


なんだ、こっちは完全に意識してるのか。


「なら、私からタイゾウさんにヒフィーのことを聞いてみるよ」

「ちょ、ちょっと、待ちなさい!! わ、私が、いつ、そんな、こ、ことを……」

「いや、友人としては幸せになってほしいからね」

「し、しかし……わ、わたしは、か、神で……」

「種族の差なんて関係ないさ。君が今まで頑張ってきたのは私が良く知っている。だからさ、自分の幸せを掴んでもいいんじゃないか? それが許される余裕はあるんだ」

「そ、そこまで、私のことを……」

「当然だろ。なんだかんだ言って、今まで一緒だったんだ。幸せになってほしいよ」

「コ、コメット!!」


ま、その後は、大泣きして話すどころじゃなかったけど。

これで、私の野望に一歩近づいたね。

くっくっくっく……。

そして、この忙しい中でも別の野望を持つ死体美女が一人!!

まあ、こっちの話はもっと時間がかかりそうだけどね。

人の恋路ほど眺めていて楽しい物はないよねー?(最低)



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